新型コロナウイルスの影響を最も強く受けた業界の一つが、航空業界です。2021年の春闘では、ANAとJALの労働組合が経営側に対して一時金の要求を行いましたが、雇用を維持するだけでも精一杯な現状を踏まえると、厳しい交渉になるのは間違いありません。
航空大手2社、2021年春闘の要求内容
時事通信によると、ANA労働組合は年間一時金として「1カ月を下回らない水準」を、JAL労働組合は「年間2カ月を基本」とする一時金の要求を予定しています。
業績が大きく悪化したなかでも、労働者の生活を守ろうとする姿勢は理解できます。しかし、コロナ禍での一時金要求は、世論の反発も予想される難しい舵取りです。
労働基本権とその限界
憲法で保障された労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)は、労働者の正当な権利です。ただし、実際の現場ではその行使に限界があるのも事実です。
例えば、ストライキ(団体行動権の行使)を実施すれば、特に航空業界のような生活インフラに近い業種では、利用者からの批判が集中するでしょう。コロナ禍のような非常時にストを決行すれば、世間からの支持を得るのは非常に困難です。
組合の恩恵はすでに“既得権”?
近年は労働組合の存在しない企業も増えており、特に中小企業ではその傾向が顕著です。労働組合が存在するだけで、すでにある程度“恵まれた労働環境”と捉えられることもあります。
そのような中で、「一時金の要求」などを行っても、「雇用があるだけマシ」という世論の声が強まっているのも事実です。
組合活動への冷めた目線
組合費は毎月天引きされますが、支払った対価に見合った恩恵を感じていない人も多いのではないでしょうか。昭和から続く組合の慣習や行事(例:メーデー)も時代にそぐわないと感じられつつあります。
さらに、労働組合は任意加入の形を取りつつも、実態は“強制加入”に近いこともあり、自主的な参加意識は薄れがちです。
政治との距離感と違和感
多くの労働組合は立憲民主党などを支持政党にしていますが、近年は与党(自民党)側の方が実質的に労働者寄りの政策を打ち出しているケースも目立ちます。
たとえば、安倍元首相は連続して経団連に対して賃上げを要請しており、労働者の実利を確保する姿勢が見られました。皮肉にも、組合を支持する政党よりも実効性のあるアプローチを示した形です。
今後の労働組合に必要なこと
令和の時代に入り、旧態依然とした組合活動だけでは、もはや労働者の支持は得られません。既得権にしがみつくのではなく、組織のあり方や方針を見直す必要があります。
とくに、業種ごと・企業規模ごとに異なる課題を吸い上げ、柔軟に対応する“現場目線”が求められます。そうでなければ、組合自体が「形骸化した団体」と見なされてしまうでしょう。
まとめ:変革が求められる時代
航空業界の春闘をきっかけに、労働組合の存在意義を見直す時期に来ているのかもしれません。組合は本来、労働者のための存在です。しかし、時代が変われば役割も変わるはずです。
令和の時代にふさわしい、新しい労働組合の姿を模索する必要があるのではないでしょうか。
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