雑記

2020年に4月1日より実施される「同一労働同一賃金」について思うこと。

4月の1日より「同一労働同一賃金」が実施されるので、メリットとデメリットを整理してみた。

4月の1日より「同一労働同一賃金」が実施されます。事前にいろいろと話題になっているのでご存知の方も多いかと思おいます。

「同一労働同一賃金」とは

 ・同じ仕事に就いている限り、正社員であるか、非正社員であるかを問わず、同一の賃金を支給しなくては行けないこと

を言います。

これは、すごくまっとうなことです。

正社員の給料と非正規雇用の人との賃金格差が社会的にも問題になっています。また、労働者人口の非正規雇用の割合は4割近くになり格差社会とも言われています。政府もこの問題を放置することが出来なくなり「同一労働同一賃金」を実施するに至ったのだと思います。

「同一労働同一賃金」のメリット、デメリッをはいろいろと言われてます。しかし、まだ実施されていないので、現時点で言われていることについてまとめて見ます。

メリット

 ・非正規雇用者の生産性向上

・優秀な人材の確保

・非正規雇用者の賃金上昇

・非正規雇用者でもキャリアップの機会が増える

デメリット

 ・人件費の高騰

・評価の説明責任の工数が必要

・正社員の賃金が引き下げられる可能性がある

・非正規雇用者の雇用機会が減る

などのことが言われています。

正規雇用の待遇は下がってくると予測する

しかし、メリットもデメリットも、まだ、実施されていないので、どのような効果をもたらすか不明です。ただ、サラリーマンをしている私から言えるのは正社員の待遇は少しづつ引き下げられるようになると思います。特に福利厚生面での引き下げは進むのではないでしょうか。

地方自治体の役所などでも非正規雇用に頼っている。問題は民間企業だけではない。

「同一労働同一賃金」の実施にともない地方公務員の非常勤職員にはボーナスを支給できるようにする法律が施行されています。2020年からはこれが適用される職員が増えることになります。

役所自体の対応も迷走しているように感じる。

また、それにより地方自治体の財政も厳しくなるようなことも報道されています。また、現場の方ではボーナス支給に向けて月給を減らす動きもあり、年収ベースでみるとあまり変わらないとの声も聞こえてきたりします。

これは地方自治体も限られた財政で自治運営を行って行かないといけないので、限界があるのではないでしょうか。特に地方公務員の正規職員の給料を減らすのは難しいので、自治体がどのように実現していくのか興味があります。

政府はやたらと福祉的な内容を企業に求めているように思う。

政府は格差の是正や雇用維持(定年延長など)を企業側に求めています。これは少し違うのではないかとは思っています。というのは本来、企業は利潤を追求する団体であり福祉的機能は国や政府の役割なのです。政府が企業に向けて賃金上昇を訴えかけたり、政策として無理に賃金上昇をさせようとするのは感心できません。

まず、役所ですら非正規雇用の人の労働に頼っています。また、直接でなくても下請けなどに任せて労働コストの削減を実施したりしています。一部の既得権益層には便宜等を図っていたりするのかも知れませんが、多くの自治体は財政難でコスト削減には苦慮しているかと思います。

労働格差もそうですが官民格差も酷いです。

企業も役所もそうですが給料を多く払うためにはお金が必要です。財源がなくてはどうすることも出来ません。「民間企業では給料が安いので、役所で雇用して下さい。」と言ったら役所が雇ってくれるかと言えば、そんなことはないです。また、「同一労働同一賃金」で不合理な差別をしては行けないと言いながら、同一業種での官民格差は大きいです。医療や介護、保育などの業務に従事されている方なら分かると思います。

これを官側に給料を合わせろと民間に言っても出来ないのが現状なのです。結局はお金があれば払えるがなくてはどうすることも出来ません。

企業の内部留保を従業員にまわせばよいという人がいますが、そもそも内部留保のお金は誰のものなのか。

企業の内部留保を財源にして賃金にまわせばよいという議論もあります。確かに、企業の内部留保の額は増え続けています。報道では2018年度の内部留保の額は463兆1308億円(金融業・保険業を除く全産業ベース)となっており過去最高で7年連続の増加のようです。しかし、これを賃金にしろと言うのは、そもそもおかしな話なのです。企業の内部留保というのは企業の貯蓄みたいなものです。なので、これは誰のお金かということです。

内部留保のお金は誰のものなのか。

企業は売上の中から人件費などの費用や固定費を支払ます。また、利益が出たら、そこから法人税を支払います。その後に残った利益を溜め込んでいるのが内部留保です。この内部留保は将来の設備投資や事業拡大などの目的があれば、そのために使われたりします。

まず、株式会社は営利法人と言われてます。

営利法人とは、

 ・営利を目的とした法人

・事業によって得た利益を構成員に分配することを目的とする会社

のことです。

さて、ここでの構成員は出資者。いわゆる株主のことです。なので、この内部留保のお金は株主のものなのです。本来であれば配当として分配されるお金です。それを将来や事業継続性のために内部留保とし残しているだけです。

もし、これを労働者にまわせという議論がまかり通るなら日本株に投資する魅力はいっそう低下するでしょう。それどころか株式会社の根本的な原則から外れてしまいます。人件費については法人税を支払う前に支払っているのです。やっと株主が得られるお金が出来たと思ったら、それを人件費にまわせというのは変な話です。

最後に

ただ、私は労働者に対しては適正な報酬は払われるべきだと思っています。また、「同一労働同一賃金」が実現されるのは賛成です。ただ、これにより正社員の待遇が低下したり、非正規雇用者の雇用機会が減ることの副作用は大きいのではないかと危惧しています。労働者全体の待遇が下がり資本家と労働者の貧富の格差が、ますます広がる危険があるのではないかと考えています。

官民格差を直すのか先決

賃金については市場から判断されるべきであり、企業は営利を追求することに集中する方がいいのです。しかし、格差が広がったり社会福祉がないがしろになってはいけません。それは本来、国や政府の役目であり、その一部を企業に求めるのは違うと思っています。まず、国や政府は同一業種の官民格差を是正してもらいたいものです。