はじめに:「逃げ切り」が見えてきた頃にこそ気をつけたい
節約と投資を続け、ある程度の資産が見えてきた——
それは間違いなく、誇るべき成果です。私自身、50代で資産が7,000万円を超えたとき、「これでもう老後は安心かな」と思った瞬間がありました。
ですが、実はその“安心感”こそが落とし穴の入口でした。
逃げ切り戦略が本当に成功するかどうかは、「最後の10年」をどう過ごすかで決まります。
この記事では、私自身の経験や実感をもとに、「逃げ切り型サラリーマン」が避けたい5つの落とし穴とその対策を解説します。
落とし穴①:「もう大丈夫だろう」と生活費が膨張する
資産が積み上がってくると、ふと気が緩みがちです。
私も一時期、「ここまで頑張ってきたんだから、たまには贅沢してもいいよね」と思い、外食や旅行が増えたり、大型家電をポンと買ってしまったりしました。
よくある支出の膨張パターン
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自動車を買い替える(しかもローン)
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旅行のグレードアップや回数の増加
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サブスクの数が知らぬ間に倍増
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子どもや親族への援助が“常態化”する
こうした支出は、一つひとつは「小さな贅沢」でも、積み重なると年間で数十万円〜100万円単位の生活費増になります。
対策:老後は「現役時代の7〜8割」で暮らせるようシミュレーションを
贅沢は悪いことではありませんが、“恒常化”すると家計を壊します。
私が意識しているのは、「見かけは中流、実態は堅実富裕層」という姿勢。
無理なく続けられる支出水準をあらかじめ想定し、その範囲内で楽しむことが、逃げ切り成功のカギです。
落とし穴②:高配当・高利回り投資への誘惑
SNSでは「配当生活」「毎月〇万円の不労所得」といった投稿が人気を集めています。
その影響で、私も一時期、個別株の高配当銘柄や外国債券に気持ちが揺れたことがありました。
しかし、それらは表面上の魅力が強い一方で、リスクも大きいのが現実です。
リスクの高い例
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配当利回り5%以上のエネルギー株、不動産株
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トルコリラ債券・高金利通貨建て商品
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レバレッジ型ETF(ブル・ベア商品)
これらの商品は値動きが激しく、「逃げ切りを目指す資産形成の終盤」には不向きです。
対策:「守りのポートフォリオ」を徹底する
私は新NISAを活用し、S&P500やオールカントリーなどの王道インデックスファンドを中心に据えています。
「逃げ切るフェーズ」は“増やす”より“守る”が大事。
少なくとも資産の7割以上は、低コストで分散の効いた商品に絞るのが鉄則です。
落とし穴③:家族の無理解で投資計画が崩れる
これは意外に見落とされがちですが、「家庭内の合意形成」は逃げ切り戦略の成否を左右します。
私の家庭でも一度、妻から「これ以上投資を続けて大丈夫なの?」と言われたことがありました。
子どもの教育費や親の介護など、支出が増えてくる時期は特に不安が強まります。
よくある“家族プレッシャー”
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配偶者が「投資は危ないからやめて」と言う
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子どもが「うちは貯金あるんでしょ?」と援助を要求
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親族から「家を建て替えて一緒に住もう」などの話が来る
資産が見えてくると、周囲からの期待や圧力も自然と大きくなります。
対策:「家族会議」で“逃げ切り計画”を共有する
我が家では、年に1〜2回「家計と資産の棚卸し会議」を開いています。
現状の資産・今後の支出・退職後の生活像を共有することで、“一緒に逃げ切る”という共通認識ができました。
家族の協力が得られれば、無駄な支出も減り、精神的にも大きな支えになります。
落とし穴④:医療・介護・事故など“突発リスク”の軽視
「今まで順調だったから、このままいけるはず」という油断。
これが、もっとも恐ろしいパターンかもしれません。
私の親は現在、介護施設に入所しており、毎月の費用がかかっています。
さらに、私自身も年齢的に健康診断の結果が気になるようになってきました。
よくある突発リスク
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病気やけがでの入院、高額医療費
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配偶者のうつ病・退職
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自宅の老朽化、家賃の急変
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介護費用(施設入居で月10万円〜)
対策:最低でも「現金300万円」のバッファを確保
新NISAを活用しながらも、現金比率は常に5〜10%をキープしています。
現金があれば、
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株価暴落時に資産を売らずに済む
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突発支出に即応できる
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気持ちに余裕ができる
という“保険”になります。
落とし穴⑤:「辞め時」の誤りで台無しに
逃げ切りに成功する人でも、会社の辞めどきを誤ると後悔が残ります。
私自身、「60歳で早期退職したら楽になるかな…」と一度真剣に考えたことがあります。
しかし、年金受給までの生活資金、再雇用での働き方、社会保険の扱いなどを考えると、辞めるリスクも大きいと判断しました。
よくある“辞め時”の落とし穴
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60歳前に退職 → 年金までの資金が足りず生活が不安定に
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逆に、資産が十分なのにズルズル働き続けてしまう
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モチベーション低下で心身を壊す
対策:「65歳まで働く」を前提に、柔軟な選択肢を持つ
以下のように、“完全リタイア”ではなく段階的な働き方のシフトを意識しましょう:
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年金の繰り下げ(65〜70歳)で受給額を増やす
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60歳で一部退職 → 週3日の再雇用勤務
逃げ切り戦略とは、「働かない」ことではなく、「働き方を選べる状態になる」ことです。
まとめ:逃げ切り成功は「資産の額」より「判断力と継続力」
50代から資産形成を続けている人にとって、最も重要なのは“最後の10年”です。
資産が5,000万円を超えても、
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方針をコロコロ変える
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生活レベルを急激に上げる
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周囲に流されてしまう
といった行動をとってしまうと、逃げ切りは一気に遠のいてしまいます。
もう一度整理|逃げ切り型サラリーマンが避けたい5つの落とし穴
落とし穴 | 内容 |
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① 気の緩み | 生活費の膨張・贅沢化 |
② 欲に負ける | 高配当・高リスク投資への傾倒 |
③ 家族の圧力 | 投資計画の崩壊リスク |
④ 突発リスク軽視 | 医療・介護・災害への備え不足 |
⑤ 退職タイミング誤認 | 早すぎ or 遅すぎによる損失 |
最後に:逃げ切りのゴールは「安心して普通に暮らすこと」
逃げ切り戦略は、派手なFIREとは違います。
資産1億円も、豪華なリタイアも必要ありません。
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無理せず暮らす
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投資を続ける
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突発リスクに備える
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家族と共有する
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冷静に判断する
これだけで、誰でも“自分なりの安心”にたどり着けます。