株高の裏で広がる“資産格差”
日経平均株価が5万円を突破し、株式市場はかつてない盛り上がりを見せています。
メディアでは「株を持つ人が増えた」「個人投資家が活発」といった報道も目立ちますが、その実態を慎重に見る必要があります。
実際には、株式を直接保有している人はまだ限られており、投資信託や企業年金など“間接保有”を含めた数字が多くの統計に使われています。
つまり、「半数が株を持っている=日本人の半分が投資で豊かになった」というわけではないのです。
実際には、証券を保有している人の中でも、半数以上は金融資産1,000万円未満というデータが公的に確認されています。
これは、日本証券業協会(JSDA)が実施している「個人投資家の証券投資に関する意識調査(2024年度)」に基づく数字です。
対象は株式・投資信託・公社債などを保有する全国の18歳以上の個人5,000人。
その結果、56%が「金融資産1,000万円未満」と回答しました。
つまり「株を持っている=資産家」とは言えないのです。
「証券保有者=投資している人たち」の実像
JSDAの調査によると、2024年度の有価証券保有者の平均金融資産額は約1,716万円。
一見すると高額に見えますが、平均値は“ごく一部の富裕層”によって引き上げられています。
中央値で見ると1,000万円を大きく下回る可能性が高く、資産分布の実態はむしろ「偏り」が大きいのです。
さらに年齢別に見ると、
-
20〜30代:8割近くが1,000万円未満
-
40〜50代:半数前後が1,000万円未満
-
60代以上:1,000万円以上が過半数
という結果が示されています。
つまり、株式投資をしていても若い世代では少額投資が主流であり、いわゆる「資産家」層とは大きく異なります。
「1,000万円未満」という数字の意味
1,000万円というラインは、日本の資産形成を考えるうえで象徴的な目安です。
しかし、現実にはこれを超えている人は決して多数派ではありません。
総務省や金融広報中央委員会の調査を見ても、2人以上世帯の金融資産の中央値は約330万円。
単身世帯では100万円前後にとどまります。
つまり「証券保有者でも半数が1,000万円未満」というのは、むしろ日本全体の資産分布をそのまま反映しているとも言えます。
株を持っていても、その多くは少額投資・NISA口座での積立など、まだ資産形成の途上段階にある人たちなのです。
富裕層はごく一部に集中している
野村総合研究所(NRI)の「富裕層・超富裕層の推計」によれば、純金融資産1億円以上の世帯は約165万世帯。
これは日本の全世帯数のわずか約3%に過ぎません。
つまり、株式市場の恩恵を最も受けているのは一部の上位層に限られているという現実です。
株価が上がるほど、すでに多くの資産を保有していた人がさらに資産を増やします。このように「資産インフレ構造」が生まれているのです。
日本人の多くは“投資していても保守的”
日本の家計資産構成を見ると、依然として「現金・預貯金」が5割以上を占めています。
株式や投資信託といったリスク性資産の比率は、2024年3月時点で約20%程度。
欧米諸国では50%前後が投資資産であることを考えると、日本は依然として“超保守的”です。
つまり、株式投資をしている人でも「投資額が少ない」「長期積立中心」「売却益を狙わない」といったスタイルが一般的で、
株価上昇による含み益がそのまま“生活の豊かさ”につながっているわけではありません。
株高=全員が潤うわけではない
「日経平均が上がれば国民が豊かになる」という考え方は、経済ニュースでよく聞かれるものです。
しかし、実際の資産構成を見れば、それがごく一部の層に偏っていることは明白です。
株を保有していない人はその恩恵を受けませんし、保有していてもごく少額では家計全体に影響を与えるほどのインパクトはありません。
また、株価が上がっても「含み益」であり、売却して現金化しない限り、生活資金として自由に使えるわけではありません。
加えて、税金・インフレ・社会保険料などが上昇しており、名目の資産増=実質的な豊かさの向上とは言い切れません。
これからの資産形成に必要な視点
では、個人はどう資産形成を考えるべきでしょうか。
まず重要なのは、「株を持っているかどうか」ではなく、どのくらいの比率で投資に回しているかという点です。
さらに、以下の3つを意識すると現実的です。
-
現金と投資のバランスを可視化する
家計の中で、投資資産がどのくらいを占めているかを把握。
投資比率が低すぎるとリターンが得られず、高すぎるとリスク過多になります。 -
少額でも「続ける」ことを重視する
1,000万円未満であっても、積立投資を継続すれば20年後には資産構造が変わります。
資産額よりも「継続率」が将来の格差を左右します。 -
“平均”ではなく“中央値”を見て判断する
ニュースで出る「平均資産額」は上位層に引っ張られた数字です。
自分の立ち位置を知るには、中央値(真ん中の値)を見るのが現実的です。
まとめ:株保有者の56%が1,000万円未満というリアル
2025年の日本は、株価が史上最高値を更新する一方で、資産分布の偏りはむしろ拡大しています。
証券を保有している人の過半数が1,000万円未満という事実は、「投資していても裕福とは限らない」ことを示す象徴的なデータです。
本当に豊かになるには、単なる株価上昇ではなく、長期的・持続的な投資行動と支出管理が不可欠です。
そして、他人と比較するのではなく、「自分がどう資産を積み上げるか」を見つめることが、真の“経済的自由”への近道です。
にほんブログ村に参加してます。クリックして頂くと有り難いです。

