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首都圏の平均貯蓄額3,000万円の裏側。データで見る“高コスト家計”の現実

最近、「首都圏の平均貯蓄額が全国を大きく上回っている」という記事を目にしました。
2025年5月に総務省が発表した家計調査によると、東京都区部の平均貯蓄額は3,019万円で全国1位。埼玉県は2,601万円、神奈川県2,575万円、千葉県2,551万円と続き、いずれも全国平均1,984万円を上回っています。

数字だけ見れば、首都圏に住む家庭は「豊かそう」に思えます。
しかし、その一方で、実際に首都圏で暮らす私のような50代サラリーマンからすると、この“統計上の余裕”はあくまで数字の上の話。現実の生活は物価や家賃の高さに直撃され、「可処分所得の少なさ」を日々痛感します。
今回は、総務省や横内美保子氏の記事データをもとに、首都圏家計の現実を数字で読み解きつつ、私自身の体験を交えて考察してみたいと思います。

首都圏の貯蓄額が高いのは、住宅負債も大きいから

家計調査のデータをよく見ると、首都圏の貯蓄額が高い背景には「住宅負債の大きさ」も関係しています。
住宅・土地のための平均負債額は全国平均612万円に対して、東京都区部は881万円(全国2位)、さいたま市868万円、横浜市861万円、千葉市823万円といずれも上位。
つまり、「貯蓄が多い=余裕がある」ではなく、「収入も支出も大きい構造的な家計」が実態です。

私の周りにも、都内でマンションを購入した同年代が何人かいますが、ローン残高は2,000万円を超えるケースが珍しくありません。
一方で、私は賃貸派。ローンはありませんが、月10万円近い家賃が毎月確実に出ていきます。
どちらを選んでも“固定費の重さ”という現実は変わらない――これが首都圏家計の本質かもしれません。

物価・家賃が全国トップクラスの首都圏

総務省の「消費者物価地域差指数(2024年)」によると、全国の物価を100としたとき、東京都は104.0で全国1位、神奈川県103.3で2位、千葉県101.2で5位、埼玉県100.3で8位にランクイン。
この「総合指数」には食料や光熱費も含まれますが、特に首都圏では「住居費」が突出して高いのが特徴です。

同調査の詳細を見ると、東京都区部の住居関連指数は104.9、横浜市104.0、川崎市104.2と、全国でも群を抜いています。
全国賃貸管理ビジネス協会の家賃動向調査では、2025年6月時点で3部屋タイプの家賃は東京都98,345円、神奈川県86,721円、埼玉県75,984円、千葉県72,456円。全国平均(67,515円)と比べると、月に2〜3万円高い水準です。
年間で換算すれば、家賃だけで30万円以上の支出差になります。

私自身、十数年前に東京近郊で暮らし始めた頃は7万円台で借りられた部屋が、今では同条件で9万円を超えています。
食費や光熱費も上がり、子どもの学費も重なると、可処分所得は確実に減少。
「数字上の貯蓄額が多くても、体感的な“ゆとり”はむしろ減っている」と感じるのは、私だけではないはずです。

データに見る「固定費の壁」──人生三大資金にどう影響するか

金融庁の定義する「人生三大資金」は、住宅・教育・老後。首都圏で暮らす場合、この三つすべてが地方より高くつく傾向があります。住宅は前述の通り、家賃も購入費も高い。教育面では私立高校や大学進学率が高く、子ども1人あたりの教育費は地方より数百万円上振れします。さらに老後も物価が高いため、生活費の“基準ライン”が下がりにくい――総務省の統計データからも、首都圏の住居費が物価全体を押し上げていることが分かります。

私は老後を見据えて生活費を試算したとき、「地方なら月25万円で生活できる」計算が、首都圏だと35万円近く必要になることに気づきました。
この“10万円の差”が、退職後30年続けば3,600万円。
つまり、首都圏に住み続けるという選択は、それだけで老後資金に数千万円のインパクトを与えるということです。

データから見える「首都圏で生き残る条件」

ここまで見てきたように、首都圏では貯蓄額が多くても、それ以上に支出構造が重い。
では、どう対策すればよいのでしょうか。
私が考える現実的な方法は、以下の3つです。

  1. 固定費の最適化を継続する
     通信費、保険、光熱費は定期的に見直す。私は格安SIM化と保険整理で年間10万円以上削減できました。

  2. 新NISAを中心に“淡々と積み立てる”
     インフレ環境では現金価値が目減りするため、余剰資金は分散投資で時間を味方につける。

  3. “持たないリスク回避”という発想を持つ
     持ち家神話にとらわれず、賃貸の柔軟性を活かす。修繕・災害リスクの低減も重要な要素です。

これらはいずれも特別な節約術ではありません。
ただし、「首都圏で生き残る家計戦略」としては極めて実践的です。
資産7,000万円あっても油断できない環境だからこそ、“支出構造の軽量化”が長期安定につながります。

終わりに──数字の裏側を見る力を持つ

統計データは事実を示しますが、その数字が意味する「暮らしの現実」は人によって異なります。
首都圏の平均貯蓄3,000万円という数字の裏には、住宅ローン、家賃、教育費といった重い現実が存在します。
だからこそ、これからの家計管理では「貯蓄額」よりも「支出構造」を重視すべきです。
そして、数字を“安心材料”ではなく、“点検材料”として見る視点が必要です。

私はこれからも、賃貸という選択を維持しながら、固定費を抑え、無理のない範囲で新NISAを積み立てていくつもりです。
首都圏で生活する限り、数字上の豊かさよりも、現実のキャッシュフローが何よりの安心材料になる──そう感じています。

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