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日本銀行の異次元の金融緩和は市場を歪めている。株主としての役割を担えない大株主。

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今の日本は好景気と言われるが、一般国民には実感がない

日本銀行は物価目標2%を実現させるため、マイナス金利政策を実施しています。通常は金融緩和などを行うと企業などの設備投資が増え景気が回復していきます。すると人々の雇用が増えて賃金も上昇していき物価も上がっていくのです。しかし、景気の指標的には上昇して、株価も上がりましたが、賃金の上昇までは繋がっていません。逆に、働き方改革や消費税増税を行った影響で人々の可処分所得の減少が起こっています。なので、実感の伴わない景気回復となってしまい物価も上昇しません。

日本銀行の金融政策は手詰まりの状態

通常ならば景気が回復すると伴に長期金利や物流が上昇していきます。しかし、そうはなっていかないので日本銀行は金融緩和をし続けるしかないので政策金利を下げ続けているのです。とうとう今では、マイナス金利まで突き進んでしまいました。ある意味、金利調整での政策は手詰まりになっていると言えます。

また、日本銀行は金融緩和のために指数連動型上場投資信託(ETF)も大量に購入しています。2020年3月2日にも新型コロナウイルスの影響による株価の下落に対して大量の購入を実施しました。これは、政策金利での対応は手詰まりのため、ETFでの購入で景気刺激をしていくしかないのです。しかし、この政策も長く続けているので弊害も出てきています。

日本銀行が市場を歪めている

日本銀行は2015年からETF買い付け額を増やしています。現在は、年間6兆円ものETFを買いを行なっています。年間6兆円での買い取りは2016年8月からやっており、2015年からの倍の額での買い取りに進んだのです。日経新聞の記事によれば、日銀の保有残高(時価ベース)は2019年3月末時点で28兆円強となるそうです。日銀が同じペースで買い続けると仮定した場合、2020年11月末には約40兆円まで行くことになるようです。

さて、これが何をもたらしたかと言うと日本銀行が上場企業の約50%で大株主になってしまったのです。しかも、すでに日本銀行が筆頭株主になってしまっている企業も複数あります。大株主という明確な定義はありませんが、通常は議決権のある発行済み株式の1割以上を保有することで大株主と言われたりします。そう考えると日本銀行の株式市場への影響は大きいです。

日本銀行は株主としての役割を担えない

もっとも影響があると考えるのは、経営者たちの緊張感です。本来の株主としての立場が歪められてしまっています。会社を経営する取締役は株主総会によって選任されます。端的に言えば株主は取締役をクビにすることも出来るのです。株主はお金という資本を出して取締役(経営者)に会社経営を任せているのです。その目的は会社を経営して利益を上げてもらい、上げた利益の分配を受けることにあります。

日本銀行が株主だと経営者はありがたい

しかし、日本銀行が会社経営に対しては口を出すこともないですし、取締役を解任することもないです。経営者からしたらこれほど有難い株主はいません。本来なら、怠慢な経営をしていると株主からクビにされてしまいます。なので、そうならないように少しでも利益を上げるように頑張るのです。しかし、日本銀行が大株主だったら、一般の大株主に比べて取締役は緊張感を持って経営できるか疑問です。

会社は国と一緒で三権分立で営まれるのが健全な姿。

本来、会社というのは株主、取締役、監査役の3者が抑制と均衡を保って営まれるのが好ましいのです。会社法からしても、そのような関係に読み解けます。ちょうど国家の関係と同じです。国会、行政、司法という三権分立です。国会、行政、司法がそれぞれの役割をまっとうすることによって国会運営が上手くいくのです。これは会社も同じです。国会が株主、行政が取締役、監査役が司法です。この三者がしっかりと自分の役割をまっとうすることによって会社が上手くいくのです。

民主主義の国で一番偉いのは国民です。

国で行ったら国会が国権の最高機関です。日本は民主主義を取っているので国会が一番偉いのです。なぜなら国民主権だからです。その国民から直接に選ばれた人で構成される国会が国民から一番近いところにあるので最高機関なのです。

会社で一番偉いのは株主です。

会社でいう最高機関は株主総会です。株主で構成される株主総会が一番偉いのです。なので、株主と言うのは会社の中で重要な役割を担っているのです。ただ単にお金をもらうだけの役割ではありません。取締役の経営には目を光らせないといけないのです。不正や不祥事を起こされたら企業価値が一気に損なわれます。企業価値が損なわれることで一番被害を受けるのは株主なのです。

日本銀行の目標は物価目標を2%にすることです。

そう考えると日本銀行のETF買いは感心できません。株主としての役割をきっちりまっとうできるわけがないのです。ただ単に金融政策の一環としてETF買いに走っているだけです。日本銀行の目標は景気を回復させて物価目標2%の達成です。景気回復には国内消費は重要な要素です。なので、国は労働者たちの賃金を上げたいと思っているのです。

日本銀行は従業員の給与を上げろと言う。

もし、今の日本銀行が経営者にものを言うとしたら株主の利益のことより従業員の給与を上げろと言うでしょう。それは、本来の株主としての役割とは違います。