「格差が拡大している」と強調する記事に違和感
最近、「焦点:コロナで溢れるマネー、『低成長バブル』で際立つ日本の二極化」というネット記事を読みました。記事では、コロナ禍以降に富裕層の資産が急増し、格差が拡大していると主張しています。
内容を少し抜粋させていただきます。
[東京 30日 ロイター] – 新型コロナウイルス渦中に各国が競うように供給した「緩和マネー」が、株や暗号資産(仮想通貨)などの高騰を通じ、世界的に富裕層の懐を膨らませている。日本では1億円以上の別荘が短期間で完売し、高級ブランド時計が市場から姿を消す異常な事象が起きている。日本中が沸いた1980年代のバブル景気と異なり、低成長時代に溢れるマネーは通貨価値の下落と資産の膨張を同時に引き起こし、「持てる者」と「持たざる者」の格差を一層際立たせている。
中略
日銀の資金循環統計を見ると、昨年12月末の家計の金融資産残高は1948兆円と過去最高を大きく更新。野村総合研究所によると、資産1億円以上の富裕層の純金融資産(金融資産から負債を差し引いたもの)は19年に333兆円と全体の2割を占め、17年から11%増加した。一方、全体の8割を占める3000万円未満は17年より世帯数が増える一方で、純金融資産は減少した。リーマン危機後から続く過剰流動性で、コロナ前から格差は拡大していた。
出典:Reuters (中川泉 杉山健太郎 編集:久保信博)
記事によると富裕層が増えて格差が拡大していると謳っています。
具体的には、高級時計や仮想通貨の値上がりを例に、富裕層がさらに豊かになっている状況を紹介。一方で、資産3,000万円未満の層は世帯数が増加したにも関わらず、純金融資産が減少していると述べています。
根拠とされているのは、日本銀行が公表した「家計の金融資産残高(2023年10~12月期)」です。
一部の事実だけを切り取る「報道の偏り」
確かに、そのデータを見れば富裕層の資産が大きく増えているのは事実です。しかし、私が以前同じデータを使って記事を書いたときは、むしろ中間層の資産も増加しているという内容でした。
問題は、都合のよい部分だけを取り上げて「格差拡大」を強調し、読者に印象を植え付けてしまっている点です。確かに「庶民が苦しんでいる」という内容の方が注目されやすいですし、アクセス数も稼げるでしょう。
ですが、事実は正確に伝えなければなりません。センセーショナルな見出しだけで注目を集めることは、読者への誠実さを欠く行為だと私は考えています。


実は資産全体が増加しているという事実
日本銀行のデータと同時期に、金融広報中央委員会から「家計の金融行動に関する世論調査(令和2年版)」も発表されています。この調査では、2019年と比較して世帯の平均金融資産が297万円増加、さらに中央値でも219万円の増加が確認されています。
これは富裕層だけではなく、一般の人々の資産も増えていることを示しています。つまり、日本全体としてお金持ちになっている側面もあるのです。
まとめ:一方の事実だけでは「真実」は見えない
・富裕層の資産が増えているのは事実
・しかし、一般の世帯の資産も増加傾向にある
・センセーショナルな記事が目立つが、事実は冷静に確認すべき
・印象操作ではなく、正確な情報発信が大切
もちろん、コロナ禍で経済的に苦しい状況に置かれた人も多くいると思います。私自身、その具体的なデータはまだ十分に把握できていませんが、今後信頼できる情報が出てきたら、改めてご紹介したいと思います。
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