日本の経営者は本当に保守的なのか?
日本の経営者は「保守的」「内部留保ばかりして投資しない」「株主還元が少ない」と批判されることがあります。
特にアメリカ株に投資している方の中には「アメリカ企業のように株主重視で成長戦略を取るべきだ」といった主張をする人も多いようです。
この背景には、「アメリカの経営者=株主のために働く」「日本の経営者=サラリーマン的で守りに入っている」というイメージがあります。
確かに一部は事実ですが、単純な比較で「日本がダメ」「アメリカが優れている」とするのは早計です。
日本とアメリカでは、雇用や法制度、経営リスクの取り方など、土台となる経営環境がまったく異なるのです。
経営スタイルの違いは制度の違いから生まれる
日本企業が内部留保を重視するのには理由があります。
日本では解雇規制が強く、経営が苦しくなっても簡単に人員削減ができません。そのため、不測の事態に備えて現金を手元に残しておく必要があるのです。
一方で、アメリカでは業績が悪化すれば即座にリストラが可能であり、経営判断が迅速です。
そのため、現金を過剰に持たず、社債を発行して自社株買いを行うなど、株主価値向上に資金を振り向けやすい環境にあります。
また、アメリカの経営者報酬にはストックオプションが多く含まれ、株価を上げることが自分の報酬アップに直結します。
これが「アメリカの経営者は株主を重視する」というイメージにつながっていますが、言い換えれば「自分のために株価を上げる」強いインセンティブがあるのです。
日本企業にも変化の兆しがある
最近では日本企業にも変化が見られます。特にIT企業やベンチャー企業を中心に、ストックオプション制度を導入する企業が増加しています。
これは、株主還元や株価上昇を意識した経営へのシフトと言えるでしょう。
内部留保に向けていた資金が、将来的には株主還元や成長投資に使われる可能性も高まっています。
ただし、積極的な経営が進む一方で、倒産リスクが高まる側面もあるため、投資家としては注意も必要です。
日本の経営者は、これまで「安定的な雇用を守り、会社を存続させること」を重視してきました。
この「しぶとさ」「堅実さ」は一朝一夕に真似できるものではありません。
まとめ:日本型経営も捨てたものではない
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日本の経営者は保守的と見られがちだが、それは制度的背景によるもの
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アメリカの経営者が株主を意識するのは、自らの報酬インセンティブのため
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日本企業も変化しており、ストックオプション導入や株主還元の意識が高まっている
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経営スタイルの良し悪しは時代とともに評価が変わるもの
今後、日本の雇用制度や経済環境が変化する中で、日本企業も欧米型の成長戦略を採用していく可能性があります。
だからこそ、「日本株はダメ」と決めつけるのではなく、中長期的な視点で変化を見守る姿勢が重要です。
資本主義経済の中では、「労働者」としてだけでなく、「株主」としての視点を持つことが、将来に備える有力な手段になります。
日本の良さを認識しつつ、変化を柔軟に取り入れる姿勢こそが、これからの投資には必要なのではないでしょうか。
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