50代で資産が8,000万円台に乗っても、「もう大丈夫」とはなりません。むしろ資産が増えるほど、失う怖さや、先が見えない不安が強くなることすらあります。
私は50代の平社員で、妻はパート、子どもは2人。家は賃貸です。投資は「長期・分散・低コスト」を基本に、新NISAを中心に続けています。それでも、資産額だけでは心が落ち着かない。今回は、その“不安の正体”を言語化して、私なりの整え方までまとめます。
8,000万円はゴールじゃない:数字が安心に直結しない理由
まず前提として、8,000万円は「大きい金額」ですが「確定した安心」ではありません。野村総合研究所(NRI)の定義では、純金融資産が5,000万円以上1億円未満は「準富裕層」です。つまり8,000万円は“準富裕層ど真ん中”の数字。世間的には十分すごい。けれど、この層は“安心しやすい層”というより、“不安が具体化してくる層”だと感じています。
理由はシンプルで、資産が増えるほど「守るもの」が増えるからです。しかも、その資産の多くが投資信託や株式なら、評価額は毎日ゆれます。増えた月は気分が良い。でも、下がった月は「自分の老後が削られた」気がして、精神が揺れる。
さらに厄介なのが、資産の“中身”です。
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生活費に使える現金と、投資に回している資産は性格が違う
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iDeCoなど、今すぐ触れないお金もある
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相場が良いときの資産増は「自分の実力」ではなく「追い風」も大きい
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いざ使う段階では、税金・手数料・受け取り方で手取りが変わる
数字だけ見て安心しようとすると、逆に裏切られます。安心を作るには、資産を「使える」「使えない」「使いたくない」に分けて考える必要があります。
“安心できない”は普通:データでも老後不安は多数派
「資産があるのに不安」と聞くと、贅沢に見えるかもしれません。でも、老後不安はかなり広く存在します。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」では、生活設計を立てている世帯の中でも、老後を「多少心配」「非常に心配」とする割合が高い結果が示されています。
だから私は、「不安がある=失敗」ではなく、「不安が出てくる年齢に入った」と捉えるようにしました。ここからが、老後の設計図づくりの本番です。
不安の正体は“お金”より“時間”:50代が抱える3つの怖さ
私が感じる不安は、じつは「8,000万円あるかないか」より、時間の問題が大きいです。50代は、働く時間が減っていく入口であり、同時に支出イベントが増えやすい時期でもあります。
1)取り崩しの入口に立つ怖さ(順番リスク)
資産形成期は「下がっても買い続ければいい」と割り切れます。でも、取り崩し期は逆です。下落局面で取り崩すと、資産の減り方が加速する。いわゆる“順番リスク”が現実味を帯びます。
「まだ取り崩さないから大丈夫」と思っても、50代は会社の環境が変わりやすい。体調や家族都合で働き方が変われば、想定より早く取り崩しが始まる可能性があります。
2)インフレで“生活のベース”が上がる怖さ
資産が8,000万円あっても、生活費が上がれば不安は消えません。数年前と同じ感覚でスーパーに行くと、体感で「結構上がったな」と思うことが増えました。
インフレは投資である程度ヘッジできますが、「家計の固定費・教育費・保険・通信費」など、日々の支出側を整えていないと、増えた資産が“漏れていく”感覚になります。
3)長生き・介護の怖さ(寿命は伸びる)
長寿化はありがたい一方で、「何年分の生活費が必要か」を難しくします。厚生労働省の簡易生命表では、平均寿命は男性81.09年、女性87.14年(令和5年)とされています。平均がこれなら、長生きを見込むのが自然です。
医療・介護は、どれも“いつ・いくら”が読みにくい出費です。2019年の金融審議会報告書が話題にした「老後2,000万円問題」も、要するに“長く生きると家計が赤字になる可能性がある”という指摘でした。夫65歳以上・妻60歳以上の無職世帯で、毎月の不足額平均は約5万円、20〜30年で1,300万〜2,000万円という試算が示されています。
この3つが重なると、資産が増えても不安が消えないのは当然だと、最近は思うようになりました。
私が8,000万円でも落ち着かない瞬間
ここからは実体験です。
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相場が良い月ほど「もう少しリスクを取ってもいいかも」と思ってしまう
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逆に下がると、「今売ったら楽になるのに」と考えがよぎる
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子どもの進学や部活、家電の買い替えなど、まとまった出費が続くと焦る
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会社の人事や業務変更があると、「このまま定年まで行ける?」と不安になる
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SNSで“爆益”を見ると、自分の運用が遅く感じて落ち着かなくなる
要は、資産が増えても“生活の揺れ”はなくならないんですよね。むしろ、資産が大きくなるほど、下落幅も大きく見える。1%下がるだけで数十万円単位です。数字が大きいほど、心が揺れるのは自然です。
不安を小さくするコツは「資産を分解」すること
私がやって効果があったのは、資産を“ひとまとめ”で見ないことです。分解すると、対策が見えてきます。
1)まず「家計の毎月」を押さえる(賃貸前提でOK)
最初にやるのは、投資の話ではなく家計です。賃貸なら住居費は固定費として把握しやすい。家計の赤字・黒字が分かれば、「取り崩しが必要な年齢」と「必要額」が現実になります。
私は、生活費を「最低ライン」と「普通ライン」の2段階で書き出しました。最低ラインが分かると、相場が荒れても“心の下支え”になります。さらに「教育費・車・家電」のような“数年に一度の支出”を別枠で積み立てると、資産運用に手を付けずに済む場面が増えました。
2)生活防衛資金を「年単位」で持つ
投資をしていると、現金比率が下がりがちです。でも、取り崩しの入口に立つ50代は、現金の意味が変わります。
目安は家庭状況で違いますが、私は「最低ラインの生活費×1〜2年分」を現金・預金で確保するようにしています。これがあると、暴落時に“売らない選択”ができる。安心は利回りより、選択肢の数で決まります。
3)投資はシンプルに:長期・分散・低コスト+新NISA中心
不安を減らすには、投資のルールを増やしすぎないことも大事です。私はレバレッジや信用取引は使いません。勝っているときほど、失敗の芽が育つからです。
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コアはインデックス中心(オルカン/S&P500など)
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新NISA枠を優先して積み上げる
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下がったときに慌てない仕組みを先に作る(現金・家計・ルール)
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リバランスは年1回など、回数を決めて淡々とやる
この順番にすると、投資が“生活を脅かすもの”になりにくいです。
4)取り崩しは「4%ルールを鵜呑みにしない」
よく知られる4%ルールは便利ですが、前提条件(長期・分散・市場環境)や、取り崩し開始直後の下落に弱い点もあります。私は「目安として知る」程度にして、実際は「年ごとに調整する」方針です。
例えば、相場が良い年は取り崩し率を下げて“余白”を作る。逆に、相場が悪い年は「生活費の最低ライン」に寄せて支出を落とす。こうやって“家計側”で調整できると、相場の上下に振り回されにくくなります。
5)“もしも”を先に書く(不安をイベント化する)
不安は正体不明だと増殖します。逆に、紙に書くと弱くなります。
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収入が減ったら、何を削るか(固定費の順番)
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大きな出費が来たら、どの資産から出すか
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体調を崩したら、働き方をどうするか
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親の介護が始まったら、家族でどう分担するか
「起きるか分からない」を、「起きたらこうする」に変えるだけで、安心感が増えました。
まとめ:安心は“資産額”ではなく“コントロール感”で決まる
資産8,000万円でも安心できない理由は、私にとっては「お金が足りない」より、「未来が読めない」ことでした。取り崩し・インフレ・長寿。どれも答えが一つではありません。
だからこそ、私が意識しているのは、資産を増やすこと以上に「不安を分解して、手を打てる状態にする」ことです。
資産額は、人生の安心を保証してくれません。けれど、家計を整え、現金を持ち、投資をシンプルにして、取り崩しのルールを作っておけば、不安は“扱えるサイズ”になります。
同じように「8,000万円あるのに落ち着かない」と感じている人がいたら、まずは数字を眺めるのではなく、今日から“分解”してみてください。
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