投資

個人投資家はなぜ売り越しているのか?日経平均最高値更新の裏側

はじめに

2025年9月、日経平均株価は 4万5,000円台を突破し史上最高値を更新 しました。株式市場はまさにバブル期以来の熱気を帯びています。しかし、この華やかな相場の裏側では、意外な動きが確認されています。
それは―― 日本の個人投資家が「売り越し」に回っている という事実です。

「株価はどんどん上がっているのに、なぜ売るのか?」と思う方も多いでしょう。本記事では、最新データを踏まえてその実態を解説します。

個人投資家の売り越しデータ

投資主体別の売買動向を確認すると、個人投資家は2025年夏以降、継続して売り越し傾向にあります。最新の週次データでは以下のような結果となっています。

  • 2025年9月第2週:▲4,688億円(売り越し)

  • 2025年8月第2週:▲11,253億円(大幅売り越し)

  • 2025年8月トータル:▲11,447億円(月間売り越し)

  • 2025年7月トータル:▲14,083億円(月間売り越し)

つまり、海外投資家が大量に買い越して日経平均を押し上げている一方で、個人はむしろ利益確定や資金整理で売りに回っている のです。

なぜ個人は売るのか?

個人投資家が売り越す背景には、いくつかの心理や事情があります。

1. 利益確定の誘惑

株価が最高値を更新しているということは、多くの銘柄が大幅に上昇して含み益を抱えています。
「ここで売っておけば利益は確実」という心理が働きやすく、利確売り が出やすい局面です。

2. 生活資金・別用途の確保

個人投資家は機関投資家とは異なり、投資資金を生活と切り離せないケースが多いです。教育費や老後資金、住宅関連の出費などで「今のうちに利益を確定して現金化したい」というニーズが存在します。

3. 高値警戒感

「史上最高値」というフレーズは魅力的ですが、同時に「いつ反落してもおかしくない水準」とも言えます。特に過去のバブル崩壊を経験している世代にとっては、高値不安 → 手仕舞い売り の動機になりやすいのです。

4. 税制・制度面

日本の個人投資家は 新NISA などの非課税枠を意識して投資を行っています。課税口座の含み益を確定させ、NISA口座での再投資に資金を回す戦略を取っている人も少なくありません。

海外投資家と個人投資家のコントラスト

ここで面白いのは、海外投資家は買い越し、個人は売り越し という構図が続いている点です。

  • 海外投資家:日本株の割安感、円安効果、世界的な資金の流れを背景に強気で買い進める。

  • 個人投資家:高値警戒・資金需要から利確に動く。

つまり、今の相場は「海外マネーが個人の売りを吸収しながら上昇している」状態だと言えます。もし海外勢が買いを弱めれば、個人の売りが重しとなり、相場の勢いが鈍化する可能性もあります。

過去の局面との比較

個人投資家が高値圏で売り越す現象は、今回が初めてではありません。

  • 1989年末のバブル期:日経平均が3万9,000円を超えた当時も、個人投資家の一部は利益確定に走りました。その後のバブル崩壊を考えると、結果的に「早めに逃げた」投資家が助かったケースもあります。

  • 2013年アベノミクス初期:株価が急騰する中、個人は短期的な利確に動き、海外勢が上昇をけん引しました。その後も株価は上がり続け、売ってしまった個人が「乗り遅れた」と悔やむ展開も多くありました。

つまり、「個人が売る → 相場が崩れる」とは限らない のです。むしろ個人が慎重に利確している間に、海外マネーがさらに上昇を演出することもあるのです。

相場への影響

個人投資家の売りは相場全体にどのような影響を与えるのでしょうか?

  1. 短期的な上値の重し
     大量の売りが出れば、株価は一時的に頭打ちになります。特に出来高が急増する場面では、売りが優勢になる時間帯が増えます。

  2. ショートスクイーズとの対比
     空売り勢が追い詰められて買い戻す動き(ショートスクイーズ)が相場を押し上げるのに対し、個人の利確売りは上昇を和らげる力として作用します。

  3. 海外勢が買い支えている間は影響限定的
     個人が売り越しても、海外投資家の買いが強ければ相場は下がりにくい。現状はまさにこのパターンです。

個人と海外のスタンスの違い

個人と海外投資家の投資スタンスは、根本的に異なります。

  • 個人投資家:生活資金と投資資金が重なることが多く、短期的な安全確保を優先しやすい。値動きに敏感で、「今の利益を守りたい」という心理が強い。

  • 海外投資家:運用資産の規模が圧倒的に大きく、為替や世界的な資金配分を背景に日本株を「資産クラスの一部」として組み入れる。目線が中長期で、多少の調整は吸収できる。

この違いが、高値圏で「売る個人」と「買う海外」 という構図を生み出しているのです。

投資家としてどう考えるべきか?

「個人が売っている=間違い」ではありません。むしろ、利確する勇気 も投資の大事なスキルです。
一方で、長期で資産形成を考えるなら「一部利確+残りはホールド」といった柔軟な対応が求められます。

私自身も50代の投資家として、老後資金を守ることと資産の成長を両立させる 視点を重視しています。

  • 一括売却ではなく「部分的な利確」

  • NISA口座での非課税メリットを意識した再投資

  • 生活費に必要なキャッシュと投資資金のバランス調整

これらが現実的な戦略だと感じています。

まとめ

  • 日経平均が史上最高値を更新する一方で、日本の個人投資家は売り越し に回っている。

  • 背景には「利確欲求」「生活資金の必要」「高値警戒感」がある。

  • 相場を押し上げているのは主に 海外投資家と事業法人(自社株買い)

  • 個人が売ることは必ずしも相場下落のシグナルではない。過去にはその後さらに株価が上がった局面もある。

  • 投資家にとって重要なのは、「売る勇気」と「残す勇気」をどうバランスさせるか。

相場が強いときほど「売る人は本当にいるのか?」と疑問に思いがちですが、実際には 多くの日本人投資家が静かに利確を進めている のです。

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