「家計の金融行動に関する世論調査」(令和2年版)が発表
金融広報中央委員会が毎年実施している「家計の金融行動に関する世論調査」の令和2年(2020年)版が発表されました。この調査は、日本全国の世帯における金融資産の保有状況や金融行動の傾向を明らかにするもので、例年注目されています。
2020年は、新型コロナウイルスの影響で実施方法に変更がありました。例年6〜7月に行われる調査は8〜9月に延期され、また「二人以上世帯」に対しては訪問調査を中止し、郵送によるアンケートのみとなっています。
コロナ禍という異例の状況下での調査結果には、多くの人にとって意外な傾向が見られました。今回はその調査結果をもとに、日本の家計がどのように変化したのかを見ていきます。

二人以上世帯の金融資産は大幅に増加
まず注目したいのが、二人以上世帯における金融資産の保有状況です。2020年の結果は次のとおりです。
指標 | 2019年 | 2020年 |
---|---|---|
平均値 | 1,139万円 | 1,436万円 |
中央値 | 419万円 | 650万円 |
金融資産ゼロ世帯 | 2.5% | 1.5% |
平均値で297万円、中央値で219万円の増加となっており、家計の金融資産が大きく伸びていることがわかります。「金融商品をまったく保有していない」と回答した世帯の割合も1.5%と、前年から1%減少しました。
一方で、単身世帯の変化は比較的穏やかです。
指標 | 2019年 | 2020年 |
---|---|---|
平均値 | 645万円 | 653万円 |
中央値 | 45万円 | 50万円 |
金融資産ゼロ世帯 | 5.4% | 5.1% |
単身世帯では、中央値がわずか5万円上昇した程度であり、大きな変化は見られませんでした。これにより、特に「二人以上世帯」において家計が堅調であったことがうかがえます。
なぜ金融資産が増えたのか?その理由とは
調査では、金融資産が「増加した」と回答した世帯の割合が、2019年の17.1%から2020年は23.4%へと大きく増加しています。では、なぜこれほどまでに資産が増えたのでしょうか?
金融資産が増加した理由(複数回答)
順位 | 理由 | 割合 |
---|---|---|
1 | 定例的な収入が増加した | 39.9% |
2 | 収入からの貯蓄割合を増やした | 29.9% |
3 | その他 | 23.1% |
4 | 株式や債券の評価額が上昇した | 11.4% |
5 | 配当・金利収入があった | 8.3% |
6 | 相続や退職金等による臨時収入があった | 7.1% |
7 | 扶養家族が減った | 5.2% |
8 | 土地や住宅など実物資産の売却収入があった | 1.2% |
注目すべきは「定例的な収入が増えた」という回答が40%近くに上った点です。コロナ禍による経済的ダメージが多く報じられる一方で、実際には収入が増加した世帯も少なくなかったという事実が浮き彫りになりました。
特に在宅勤務や外出自粛により支出が抑えられたことで、その分を貯蓄に回したという傾向も見て取れます。
金融資産が減少した世帯の実態
一方で、金融資産が「減少した」と回答した世帯も26.5%ありました。2019年の27.8%からはやや減少していますが、依然として4世帯に1世帯以上が金融資産を取り崩していることになります。
金融資産が減少した理由(複数回答)
順位 | 理由 | 割合 |
---|---|---|
1 | 定例的な収入が減り、金融資産を取り崩した | 40.6% |
2 | 自動車・家電など耐久消費財の購入 | 30.5% |
3 | 株式や債券の評価額が下落した | 26.5% |
4 | 教育費や結婚費用など家族関連支出 | 19.7% |
5 | その他 | 15.5% |
6 | 土地・住宅購入費 | 7.4% |
7 | 旅行やレジャーなど非日常支出 | 5.6% |
8 | 扶養家族が増えた | 3.6% |
こちらも「定例的な収入が減った」ことを理由に挙げた割合が40%を超えており、収入の変化が資産状況に直結していることがわかります。
また、投資商品の評価額の下落(26.5%)を理由に挙げた世帯が、「上昇による評価額増加」(11.4%)よりもはるかに多いのが印象的です。SNSなどでは「投資で利益を出した」という声が目立ちますが、実際には損失を出した世帯の方が多かったという実態が浮かび上がります。損失はあまり語られないという、人間心理の表れかもしれません。
まとめ:コロナ禍でも家計は意外と堅調だった
2020年は新型コロナウイルスによって多くの家庭が収入減や雇用不安に直面した年でした。しかし今回の調査結果を見ると、二人以上世帯においては金融資産が大幅に増加していることが明らかになりました。
支出を控え、貯蓄や投資に回す行動を取った世帯が多かったことが、その背景にあるようです。中には収入が増加した世帯も一定数存在しており、「コロナ=家計悪化」とは一概には言えない結果となりました。
さらに、日本全体の家計貯蓄残高も2020年9月末時点で1,034兆円に達し、過去最高を記録。表向きには「お金がない」と言っている人も、実はしっかりと貯蓄をしていることがうかがえます。
今後もこのようなデータをもとに、冷静に家計を見直し、正しい資産形成を進めていくことが大切です。

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