なぜ「みんな投資で儲かってる」に見えるのか?
SNS(とくにX/旧Twitter)を眺めていると、「今年+30%!」「含み益200万円突破」「FIRE達成しました!」といった投稿があふれています。
タイムラインを見れば、「投資で儲かった人ばかり」のように感じるのも無理はありません。
しかし、これは情報発信の“構造的バイアス”です。
人は得をしたことは言いたくなり、損をしたことは黙っていたくなる。つまり、発信される情報=成功談に偏りやすいのです。
また、SNSの特性上「いいね」を集めやすいのは明るいニュースです。
地味な積立報告より、「倍になった!」「暴騰した!」という投稿の方が拡散されやすく、結果として「みんな儲かってる世界線」が可視化されます。
でも、その裏には、黙って淡々と積み立てている人、あるいは含み損を抱えている人がたくさんいます。見えていないだけです。
2025年の“追い風相場”が錯覚を増幅する
2025年は、世界的に株高が進んだ年でした。
米国株は利下げ期待で買われ、日経平均も34年ぶりに史上最高値を更新。
「インデックスさえ買っておけば儲かる」と言われるほど、上昇相場の空気が広がっています。
例えば、S&P500は2024年末から2025年にかけて年初来+20%超の上昇。
日本株も年初来+15%前後の上昇を記録(2025年10月時点)。
こうした“上がるしかない”局面では、リスクを取った人ほどリターンが出やすく、「儲かって当然」に見えるのです。
ただし、これは“相場の風向き”であって、“投資家の腕前”ではありません。
追い風が吹いているときに帆を広げれば誰でも進みます。問題は、風が止んだあとにどうするかです。
「見えている成功」と「見えないリスク」のギャップ
SNSでは、成功体験だけが切り取られ、失敗・停滞・迷いといった“投資のリアル”は省かれます。
たとえば、
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高値掴みで含み損を抱えたまま放置している人
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レバナスやハイリスク投資で一時的に利益を出した人
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含み益を抱えつつも売り時を逃している人
こうした姿は投稿されません。
表に出ているのは、「たまたま勝っている一瞬」だけ。
そしてそれを見た人が「自分もやらなきゃ」と焦り、相場の天井付近で買ってしまう——。
これが“SNSバブルの連鎖”です。
また、投資の世界には「再現性」が重要です。
一度の勝利は運でも得られますが、10年・20年続けて増やすには、戦略と一貫性が必要。
一時的に当たった人の方法を真似ても、自分のリスク許容度や資金規模が違えば、同じ結果にはなりません。
冷静な投資家が取るべき3つの行動
① 長期・分散を軸にする
SNSの“勝者の声”は、短期的な結果が多いもの。
一方、現実に資産を大きく増やした人の多くは、地味な積立を長期間続けた人です。
例えば、S&P500に20年間積み立てた場合、途中で何度も暴落はありましたが、最終的な平均年利は約7%。
短期で一喜一憂するより、「長期・分散・低コスト」を守る方が結果的に安定します。
② 自分の“時間軸”と“許容度”を決める
「他人の利益」と「自分の生活設計」は別物です。
若い人なら多少の損失も取り返せますが、50代以降は“守りながら増やす”バランスが必要です。
自分が許せる下落幅、待てる期間、生活費との兼ね合いを考え、
「ここまで下がっても大丈夫」と思える範囲で投資すること。
そうすればSNSの投稿を見ても、心がブレにくくなります。
③ SNS投稿は“材料”として距離を取る
SNSの情報は刺激的ですが、冷静に見ると“確定申告前の利益自慢”や“一時的な報告”が多いです。
それを真に受けず、「情報の一つ」として距離を取る姿勢が大切です。
SNSを見て焦ったときこそ、「自分は何を目的に投資しているのか?」を思い出しましょう。
目的が“安心して暮らすため”なら、短期的な他人の成果に動揺する必要はありません。
実体験:私も「SNSの波」にのまれかけた
私自身も2021年頃、SNSで「爆益報告」が増えた時期に刺激を受け、
つい投資額を一時的に増やした経験があります。
そのときは相場が上がっていたので利益が出ましたが、
翌年の下落局面であっという間に含み損。
「SNSで見た“あの人”は今どうしているんだろう?」と思ったら、
そのアカウントは更新が止まっていました。
その経験から学んだのは、「見せたい結果」と「続ける現実」は違うということ。
今では、他人の運用報告よりも「自分のキャッシュフロー」「将来の支出予測」を見る方がずっと意味があると感じています。
そして何より、「投稿は見ても、焦らない」。
これが一番の防御策です。
SNS時代の投資との付き合い方
2025年のように市場が活況を呈すると、「誰でも勝てる」ような空気になります。
でもその裏では、ハイリスクなレバレッジ投資やテーマ株に全力投球している人も多く、
「勝者の裏に無数の敗者がいる」という現実を忘れがちです。
SNSは、投資仲間を見つけたり、知識を得る上では非常に有用です。
しかし、「参考」と「依存」の線引きを明確にしておかないと、
他人の成功に感情を揺さぶられ、冷静な判断を失います。
まとめ:焦らず、地に足をつけて
SNSで見る「儲かった人たち」は、全体のごく一部。
しかも、その多くは“たまたま上昇相場に乗れた人たち”です。
真に資産を増やす人は、SNSで騒がず、静かに積み立て続けている。
2025年のような好調相場のときこそ、油断せず、
「この状況が永遠に続く」と思わないことが大切です。
市場の波は必ず上下します。
そして長い目で見れば、地味でもコツコツ続ける人こそ最後に報われます。
SNSの華やかな報告に心を奪われるより、
自分のペースと目的を見失わず、
「着実に増やす」「守りながら攻める」投資を続けていきましょう。
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