テレビやネットで「日本人の金融資産は平均○○万円」みたいな数字を見るたびに、正直しんどくなることがあります。私は50代の平社員で、妻はパート、子どもは2人。家は賃貸です。家計を回しながら投資も続けていますが、平均と自分を比べると「うちは全然足りないのか?」と不安が増えるだけでした。
でも結論から言うと、金融資産データは“読み方”を間違えるとメンタルを削られます。平均を1回捨てて、中央値・分布・定義をセットで見る。これだけで、数字はちゃんと味方になります。
そもそも「平均」が危ない理由
金融資産は、持っている人と持っていない人の差が大きいので、少数の高額保有世帯が平均をぐいっと押し上げます。たとえばJ-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査」では、二人以上世帯(2024年)の金融資産保有額は平均1,374万円なのに、中央値は350万円です。平均と中央値の差が約1,000万円もある。
単身世帯(2025年)も同じ構図で、平均919万円に対して中央値130万円。こちらも“真ん中の世帯”は平均よりずっと下です。
この差が大きいと、平均を見た人の多くが「平均以下=自分は遅れている」と感じます。でも実際は、平均より下の人が“多数派”になり得る。ここを知らないと、数字が不安装置になります。
「平均以下=ダメ」ではない
平均は“総額を人数で割った値”なので、分布が偏るほど現実感が薄くなります。金融資産みたいに偏りが大きいデータは、むしろ中央値(真ん中)を先に見るのが自然です。私はここを理解してから、他人の数字で焦る回数が減りました。
さらに言うと、所得でも同じ現象が起きます。J-FLEC調査では、二人以上世帯の年間手取り収入(税引後)は平均555万円、中央値500万円。単身世帯も平均274万円、中央値220万円と、平均の方が上に出ています。
「平均」という言葉が出た瞬間に、“上振れしやすい指標かも”と身構えるクセをつけるだけで、読み間違いが激減します。
同じ「資産」でも、統計で定義が違う
もう一つの落とし穴が、統計ごとに「金融資産」の中身が違うことです。ここを無視すると、数字の比較がグチャグチャになります。
私は昔、「Aという統計の平均」と「Bという統計の中央値」を並べて見て、勝手に落ち込んでいた時期があります。今思うと、定義が違うものを比べていたので当たり前です。
J-FLEC調査の「金融資産」は“将来に備えたお金”
J-FLECの二人以上世帯調査では、金融資産を「運用の為または将来に備えて蓄えている部分」とし、日常の出し入れに備えた預貯金や現金などは除く、と明記されています。
つまり“生活口座の残高”を足さない前提の数字です。生活費の口座を厚めに置いている家庭ほど、見かけ上は少なく見えやすい点に注意です。
総務省・家計調査の「貯蓄」は、もう少し広い
一方、総務省の家計調査(貯蓄・負債編)は「貯蓄現在高」という指標で、二人以上の世帯のうち勤労者世帯(2024年)の貯蓄現在高(平均値)は1,579万円、貯蓄保有世帯の中央値は947万円と公表されています。
ここで大事なのは脚注です。平均値は「貯蓄現在高が0の世帯を含めた平均」、中央値は「0を除いた世帯の中央値」という整理になっています。
平均と中央値を比べる前に、「0を含む/含まない」「日常口座を含む/含まない」を必ずチェック。これだけで“数字の違和感”がだいぶ解消します。
日銀の「資金循環」は“日本全体の残高”
さらに日銀の資金循環統計(2025年9月末)では、家計部門(自営業者を含む)の金融資産残高が2,286兆円と示されています。
この数字は日本全体の“残高の合計”なので、世帯の平均を語るための数字ではありません。「2,286兆円÷世帯数」みたいな割り算をすると、現実からズレます。政策や景気の議論では役立つけれど、家計の現在地チェックには向きません。
2026年版:金融資産データの読み方チェックリスト
ここからは、私が実際にやっている「数字の使い方」をまとめます。ニュースに振り回されないための手順です。
1)まず中央値、次に分布を見る
平均と中央値が並んでいる統計なら、先に中央値を見ます。さらに可能なら「どの資産帯が何世帯いるか」という分布まで確認します。J-FLECは分布表を出しているので便利です。
分布を見ると、「真ん中」と「上位」がどれくらい離れているかが一発で分かります。平均が高く見えるのは“上位の厚み”であって、“ふつうの家計が急に増えた”とは限りません。
2)“自分の属性”に合わせた数字に寄せる
単身か、二人以上か。現役か、リタイアか。ここが違うと、見える数字も違います。私は二人以上世帯の数字を中心に見ますが、子どもの教育費が重い時期は“貯蓄できないのが普通”とも割り切っています。
「平均に届かない=失敗」ではなく、「自分のイベント(教育費・車・親のこと)を織り込んでいるか」が大事です。
3)「定義」を読んでから、自分の家計に当てはめる
統計は、言葉が似ていても中身が違います。J-FLECの金融資産は生活費の口座を除く前提。家計調査の貯蓄はもう少し広い。どれを使うかで、家計の“現在地”は変わります。
私は、①生活防衛資金(現金・普通預金)、②将来用の運用資産(新NISA・iDeCo等)に分けて管理し、統計の定義に近い方へ寄せて比較します。「生活防衛資金が厚い=悪」ではないので、そこも含めて家計設計を優先します。
4)平均を“使う場面”も決めておく
平均がダメという話ではありません。平均が効くのは、たとえば「市場規模」「世の中全体がどちらに向かっているか」をざっくり掴むときです。
逆に、家計の意思決定(積立額、現金比率、リスクの取り方)には中央値や分布の方が向いています。私は「ニュース=平均」「家計=中央値」と役割分担しています。
5)目的は「ランキング」ではなく「意思決定」
統計は、他人と競うためじゃなくて、意思決定の材料にするためにあります。たとえば「中央値より上だからOK」ではなく、
・生活防衛資金は何か月分あるか
・長期投資を続けられる積立額か(無理なく続く額か)
・下落局面でも売らない設計か
を点検する方が、老後の安心に直結します。
私自身、新NISAは「長期・分散・低コスト」で淡々と積み上げる方針です。数字を見て焦って売買を増やすより、家計が崩れない形で続ける方が、最終的に強いと感じています。
6)中央値にも弱点がある(ゼロ世帯・無回答を確認)
中央値は「真ん中」ですが、ゼロ世帯が多いと数字が一気に下がります。J-FLECの単身世帯調査(2025年)は、分布表に「0万円」や「金額無回答」も別枠で載せています。
ここを見ると、「中央値が低い=みんな貧しい」ではなく、「ゼロが一定数いる」「上位が平均を引き上げている」といった構造が読み取れます。中央値だけで安心・絶望するのではなく、分布で背景を確認するのがコツです。
7)最後は“自分の物差し”に落とす
私は、他人の平均と競争するのをやめてから、管理指標を3つに絞りました。①生活費の数か月分の現金、②新NISAの積立を止めずに回る家計、③暴落時でも売らずに済む設計。この3つが守れていれば、統計の数字がどう動いても大きくブレません。
8)「真ん中」だけでなく、上と下の幅も見る
中央値は便利ですが、「同じ真ん中でも散らばり方」が分かりません。可能なら25%点・75%点(四分位)や、少なくとも資産帯の“どこが厚いか”を見て、自分が上振れ・下振れのどちら側にいるのかを確認します。これをやると、目標設定が「平均に届くか」から「生活に必要な水準に近づくか」に変わります。
私の結論:平均を捨てると、投資が続く
平均を見るのをやめたら、投資がラクになりました。平均は“景色”として眺める程度にして、行動は中央値と自分の家計で決める。これが一番ブレません。
もし「自分は平均以下で焦る」という状態なら、まずは中央値に置き換えてください。数字は怖いものではなく、冷静になるための道具です。次に読むなら、当ブログの「世代別の金融資産の中央値」や「資産があっても不安が消えない理由」も合わせてどうぞ。
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