節約・家計管理

1億円は本当に必要?50代から考える“現実的な老後ライン”の作り方

50代に入ってからというもの、職場でもネットでも「老後は1億円必要」「富裕層にならないと不安」——そんな言葉をよく見かけるようになりました。私自身、賃貸暮らしのサラリーマンで、役職もなく、子どもは高校3年と中学2年。教育費がピークに向かうなかで、正直なところ「本当に1億円も必要なのか?」と自問自答することが増えました。

実際、私の総資産は7,000万円台。いわゆる野村総研の定義する「準富裕層」のゾーンです。「なら1億円を目指せばいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、50代になると入金力は20代のように上がりません。給料は横ばい、役職もない。家族の支出はむしろ増える。この現実の中で、残り数千万円を積み上げるのは相当ハードルが高いのです。

そこでこの記事では、私と同じような50代サラリーマンの視点から、

  • 1億円は本当に必要なのか?

  • むしろ “現実的な老後ライン” はいくらなのか?

  • 賃貸暮らしでも破綻しない老後は作れるのか?

  • 準富裕層で“逃げ切り”できるのか?

これらを具体的な数字と実体験を交えて整理していきます。

「1億円必要論」はどこまで本当なのか?

SNSや書籍でよく見る「老後1億円必要論」ですが、その根拠を見ていくと、多くは以下の前提で語られています。

  • 夫婦で月30〜35万円の生活費

  • 持ち家前提だが修繕積立を厚めに想定

  • 趣味・旅行・交際費を十分に確保

  • 85〜90歳まで長生きする想定

これらは「老後を悠々自適に暮らす」ためのラインであり、いわば“ゆとり老後”を前提とした試算です。

しかし実際の50代サラリーマン家庭の暮らしを考えると、この前提がそのまま当てはまるとは限りません。特に私のように賃貸暮らし+子ども2人が高校・中学という状況では、老後に入る前の支出が重いため、そこまで贅沢な老後像を描く余裕が正直ありません。

そのため、まず冷静に「自分の家庭に合った老後ライン」を考える必要があります。

50代・役職なしのリアルな前提条件

私と同じような50代サラリーマンを仮にモデル化すると、以下のようになると思います。

  • 収入:横ばい〜微減

  • 教育費の負担がピーク

  • 住宅ローンはなし(賃貸前提)

  • 夫婦とも健康だが、体力は落ちてくる

  • 資産は徐々に増えにくくなる

この「入金力の低下」は、老後資金づくりの最も大きな壁になります。

20〜40代の頃は、投資額を増やせば資産は雪だるま式に増えていきます。しかし50代に入ると、積立額そのものを削らざるを得ない時期がやってきます。私自身も新NISAの月額を少し減らし、オルカン1万円+S&P500に3,000円という最低限の積立を継続している状況です。

こうした現実を踏まえると、「1億円を目指す」という目標はもはや“精神論”になりがちです。本当に大切なのは、もっと別のところにあります。

老後に本当に必要なのは「生活費の月額」を知ること

1億円という大きな数字ばかりに意識が向いてしまうと、老後資金の本質が見えにくくなります。重要なのは、

老後の生活費は毎月いくらなのか?

ここが定まらない限り、必要資産など計算しようがありません。

たとえば夫婦2人で賃貸の場合、最低限の生活を想定すると以下のようになります。

  • 家賃:9〜11万円

  • 食費:5〜6万円

  • 光熱費:2万円前後

  • 通信費:1〜1.5万円

  • 医療費・日用品:1〜2万円

  • 交際費・雑費:2〜3万円

合計 約22〜25万円 が目安になります。

国の平均モデルと比べるとやや高いですが、賃貸暮らしならこのくらいが現実的な金額だと思います。

では、年金はどのくらい期待できるのか?

50代夫婦の年金見込み額の「現実」

私のケースでは、会社員生活が長いので、夫婦で年金を合わせると月20万円前後が見込まれています(もちろん確定ではありません)。

つまり、老後の支出25万円に対し、年金20万円が入るとすると、差額の 5万円を資産取り崩しで補う という構造になります。

もし老後30年間取り崩すと仮定すれば、

5万円 × 12ヶ月 × 30年 = 約1,800万円

これが老後の不足額。

そう考えると、

  • 「老後1億円」は明らかに過剰
  •  現実的には 2,000〜3,000万円 の備えがあれば十分

というラインが見えてきます。

実際、総務省の家計調査を見ても、老後に必要な金融資産は平均で2,000〜3,000万円ほど。数字だけ見れば「準富裕層である7,000万円台」という現状は、むしろ“十分すぎる” と言っていいレベルです。

ここで整理:7,000万円台は「上位の少数派」

総務省「家計調査」では、50代の金融資産は:

  • 平均:1,731万円

  • 中央値:650万円

さらに野村総研の階層分布では、

  • 準富裕層(5,000万〜1億):12.4%

  • 富裕層(1億以上):2.8%

つまり、
7,000万円台というのは確実に“上位5〜10%の少数派”に入る資産規模です。

私自身、特別に高収入ではなく、賃貸暮らし・役職なし・教育費ピークという厳しい条件の中で積み上げてきましたが、

この水準は一般的ではなく、むしろ例外的。

なのに、老後破綻を過度に恐れていた時期がありました。

しかし実際には、7,000万円台なら老後に必要な資金は十分に確保できます。

準富裕層の強さ:逃げ切りやすい

7,000万円台であれば、

  • 老後の不足額(2,000〜3,000万円)を十分カバー

  • 投資の複利で大きく減りにくい

  • 生活の不安が小さくなる

  • 1億円のような極端な数値を追わなくて済む

これらの理由から、

準富裕層は“逃げ切りやすい層”と言える

と今でははっきり感じます。

なぜ多くの人が「まだ足りない」と不安になるのか?

理由は明確です。

  • SNSで高所得者の話を見すぎる

  • 他人と比較してしまう

  • 老後のイメージが漠然としている

  • “1億円必要”という刺激的な言葉が広がりすぎた

でも、50代の私たちに必要なのは、

派手なお金ではなく、堅実なキャッシュフロー設計。
“破綻しない仕組み”の方が重要。

50代から作るべき“現実的な老後ライン”

私はこの3つを軸にしています。

  1.  老後生活費の把握
  2.  年金額を現実的に把握
  3.  不足分が賄える資産を確保する

この3つが揃えば、1億円など必要ありません。

賃貸暮らしでも老後破綻は避けられますし、過度な節約や無理なリスクも不要です。

結論:1億円より「逃げ切れる設計」

50代で1億円に到達する人はわずか数%。
しかし、老後に必要なのは“1億円”ではなく“破綻しない設計”です。

あなたが準富裕層(7,000万円台)にいるなら、
それはすでに“逃げ切れるライン”に立っているということ。

今の資産を守りながら、

年金+適度な取り崩しで、無理なく暮らせる状態を作ること。

これこそが、50代からの“現実的な老後ライン”だと思います。

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