投資

投資をやめる勇気、続ける覚悟|50代からの現実的な選択

「もう投資なんて疲れた」「どうせ増えない」「下がるのを見ているのがつらい」──。
50代になってから、そんな言葉をよく耳にするようになりました。
バブル崩壊、リーマンショック、コロナ暴落。私たちの世代は“暴落慣れ”しているはずなのに、なぜか耐えられなくなる瞬間がある。
投資を「やめる勇気」と「続ける覚悟」。この二つの選択を、私は何度も考え直すことになりました。

■ 50代、投資をやめた人・続けた人の差

私の同僚Aさん(55歳)は、2022年の米株下落で全て売却しました。
「もうこれ以上、心臓に悪い」と。
その後、相場は2023年から回復に転じ、彼は「やめなきゃよかった」とこぼしていました。
一方、私は含み損を抱えながらも毎月の積立を続けました。
金額は以前より減らし、精神的に無理のない範囲に調整した上で。

この「やめる・続ける」の差は、単なる投資判断ではなく心の余裕と時間の使い方の違いだと感じています。
50代になると、住宅・教育・親の介護など“出費イベント”が重なり、リスク許容度が確実に下がる。
だからこそ、やめる勇気も必要です。ただし「完全撤退」は別のリスクも伴います。
特にインフレが続く今の時代、現金だけで守り切るのは難しい。投資をやめることが、逆に“ゆるやかなリスク”になる場合もあります。

■ やめる勇気=「リスクをコントロールする力」

私は以前、相場が下がると「いまこそ買い増しだ」と息巻いていました。
ところが2022年の株価急落時、気づけば評価額が数百万円単位で減少。
その時に初めて、“やめる勇気”の意味を理解しました。
それはリスクを正しくコントロールする勇気のこと。

たとえば積立額を減らす、一部を現金化して生活防衛資金に回す。
「投資を減らす=敗北」ではなく、「自分のペースを守るための戦略的撤退」だと考えるべきです。
実際、私も新NISAの積立を月33,333円から13,000円に減らしました。
オルカンに1万円、S&P500に3,000円。それでも続けている。
これは“やめない工夫”でもあり、“やめる勇気”の延長線でもあります。

50代は、収入がピークを過ぎ、支出が膨らむ時期。
そのなかで投資を続けるには、「走り続ける」よりも「息を整える」発想が必要です。
やめる勇気とは、立ち止まり、自分の歩幅を見直すこと。
そして、再び歩き出すための休息期間を取ることでもあります。

■ 続ける覚悟=「信じる仕組みを持つこと」

一方で、やめるだけでは資産形成は止まります。
継続こそが最大の武器。
ただし「感情で続ける」と、下落相場で心が折れます。
続けるために必要なのは、信じられる仕組みを作ることです。

私の場合、それが「長期・分散・低コスト」のインデックス投資。
どんな暴落でも「10年後には報われる」と信じられる仕組みがあるから、積立設定をいじらずに済む。
もし個別株中心だったら、ここまで続けられなかったと思います。
S&P500やオルカンを毎月見守るのは、もはや生活の一部。
買う・売るの判断ではなく、「時間を味方につける行動」を習慣化することが大切です。

■ 続けた人だけが見える“複利の風景”

20年近く投資を続けてきて、ようやく実感するのは「複利の力」の本当の意味です。
最初の10年は増えたり減ったりの繰り返し。
しかし15年を過ぎたあたりから、増加スピードが明らかに変わってきました。
まるで登山で言えば、やっと“山の肩”に出たような感覚。
途中でやめてしまえば、せっかくの複利効果は止まる。
続ける覚悟とは、時間の味方を裏切らない決意でもあります。

暴落のたびに「今やめれば後悔する」と自分に言い聞かせ、口座を見ない日を増やしました。
情報を遮断し、淡々と積み立てる。それでも残高は少しずつ回復していく。
やがて「焦らなくてもいい」と思えるようになった頃、複利は静かに効き始めます。
投資のゴールは短期の利益ではなく、心の安定にあるのかもしれません。

■ 投資は「戦い」ではなく「呼吸」

50代になると、投資を“勝負”のように考えるのは危険です。
体力も気力も20代とは違う。
だからこそ、投資を呼吸のように自然なものにしていく必要があります。

たとえば毎月決まった日に積み立てるだけで、自動的にリスク分散される。
市場の上げ下げに一喜一憂しない仕組みを作れば、投資は「我慢」ではなく「習慣」になります。
無理をせず、でも止めない。
それが50代からの現実的な投資スタイルです。

そして“呼吸”にはリズムがあります。
やめる=息を吐く、続ける=息を吸う。
どちらか一方だけでは長く続かない。
このリズムを保つことこそ、老後まで投資を続ける秘訣です。

■ 「やめる勇気」と「続ける覚悟」は矛盾しない

投資を完全にやめるのも、がむしゃらに続けるのも、どちらも極端です。
大切なのは“適切な距離感”。
やめる勇気は、身の丈を知ること。
続ける覚悟は、時間を信じること。
この二つが共存してこそ、老後の安心は形になります。

もし今、相場に疲れているなら、一度「やめる勇気」を持って積立額を見直してください。
そして、少額でもいいから「続ける覚悟」でつみたてを残す。
私たち50代にとっての投資は、“戦うこと”ではなく“生き抜くための習慣”なのです。
少しでも投資を続けたいと思えたなら、それがもう“勝ち”です。

■ まとめ:投資を「やめないために」やめる

投資を続けるには、無理をしない仕組みと余裕が必要です。
そして、それを守るために一時的に“やめる勇気”を持つのは、むしろ前向きな行動。
私はそう考えるようになってから、心が軽くなりました。

積立額を減らしても、習慣を途切れさせないこと。
投資を生活の呼吸に組み込むこと。
それが「50代から逃げ切る」ための一番の秘訣だと、今では確信しています。
投資は競争ではなく、人生のペースメーカー。
自分の呼吸を整えながら、ゆっくりと続けていきましょう。

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