私が本格的に新NISAを意識し始めたのは、2024年の制度改正が話題になった頃でした。生涯非課税枠は1,800万円、年間投資枠は最大360万円まで拡大。非課税期間も無期限化され、「これさえフル活用できれば老後は安泰では?」と、50代・平社員の私でさえ一瞬夢を見てしまいました。新NISA
ニュースやSNSでは「新NISAで老後2,000万円問題は解決」「年間360万円をフルで積み立てよう」といった発信も多く、つい焦らされる空気もあります。真面目な性格ほど、「自分も全部やらないと取り残されるのでは」と不安になってしまうのではないでしょうか。
ただ現実に立ち返ると、私には賃貸暮らしで高校生と中学生の子どもが2人。教育費のピークと老後資金づくりがちょうど重なっているタイミングです。給料も20代の頃ほど伸びず、役職もない。そんな状況で「新NISAだけで逃げ切る」のは、どう考えても危ういと感じました。
そこから私は、「新NISAを使い倒す」よりも、「新NISAを含めた守りの投資戦略」で逃げ切りを目指す方向に考え方を変えました。
新NISAは強力だが“万能薬”ではない理由
新NISAのメリットは、制度だけ見れば本当に魅力的です。
・生涯非課税枠は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)
・年間投資枠はつみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円で最大360万円
・非課税保有期間は無期限で、売却すると枠が復活
これだけ聞くと、「とにかく新NISAに突っ込めばOK」と思いたくなります。しかし、50代の私たちにとっては、いくつか冷静に見ておくべきポイントがあります。SBI証券
一つは、「制度の上限=自分が使うべき金額」ではないということです。年収や家族構成、貯金額によって、適切な投資額はまったく違います。私は総資産7,000万円台とはいえ、教育費の見通しや老後の生活費を考えると、「年間360万円フル投資」は明らかにやりすぎだと判断しました。
時間が短い=入金力とリスク許容度が下がっている
20代・30代の人なら、暴落しても「あと20年・30年あるから耐えよう」と考えられますが、50代になるとそうもいきません。私自身、定年まで10年前後という現実を考えると、株価が半分になった局面で「余裕で買い増し」とはなかなか言えません。
また、子どもの進学や親の介護など、いつ大きな出費が来るか分からない年代でもあります。本来なら投資に回したいお金でも、「いざというときの現金」として残しておかないと不安です。
取り崩し時期が相場次第でブレるリスク
新NISAは非課税期間が無期限とはいえ、私たちはいずれ生活費として取り崩すタイミングが来ます。問題は、そのタイミングで相場がどうなっているかは誰にも読めないということです。
もし60代前半で大きな暴落に巻き込まれた場合、「株価が戻るまで取り崩しを我慢する」のか、「含み損を抱えたまま売る」のかという苦しい選択を迫られます。
だからこそ私は、「新NISAで逃げ切る」のではなく、「新NISAを含めたポートフォリオ全体で逃げ切る」視点が大事だと考えています。
私が実践している“守りの投資戦略”3つの柱
ここからは、50代・平社員の私が実際にやっている守りの投資戦略を3つに整理してお伝えします。
① まずは生活費と“逃げ切りライン”を把握する
新NISAの話の前に、やったほうがいいのは「毎月いくらあれば生活できるのか」「年金見込み額はいくらか」をざっくりでも把握することです。
我が家の場合、賃貸暮らしで住宅ローンはありませんが、教育費と生活費で毎月の出費はそれなりにあります。そこで、家計簿アプリを使いながら、
・現役時代に必要な生活費
・子どもが独立した後に必要な生活費
・年金見込み額との差額
をざっくり計算し、「老後に必要な金融資産の目安(逃げ切りライン)」を出しました。
このラインが見えてくると、「新NISAの枠を全部埋めること」よりも、「老後に足りない分をどう埋めるか」という現実的な視点に変わります。
② 新NISAはインデックス中心+無理のない積立額
投資商品については、私はこれまで通り「長期・分散・低コスト」のインデックスファンド中心です。新NISAの成長投資枠だからといって、個別株や高リスク商品に手を広げるつもりはありません。
・つみたて投資枠:全世界株式やS&P500などの低コストインデックス
・成長投資枠:同じくインデックスを中心に、一部ETFを検討する程度
そして最も大事なのが「無理のない積立額」にとどめることです。
理論上は年間360万円まで投資できますが、50代のサラリーマンがそこまで入金しようとすると、ほぼ間違いなく生活が苦しくなります。私は「教育費を払いながら、赤字にならず、それでも少しは投資に回せるギリギリのライン」を意識して積立額を決めています。
「周りがフル活用しているから」といって自分も同じペースで走ろうとすると、途中で息切れします。マラソンと同じで、自分の心拍数で走り続けられるスピードを守ることが、50代の新NISA活用では一番のポイントだと感じています。
③ 現金・年金・就労を組み合わせてリスク分散
資産の内訳も、新NISA一辺倒にはしていません。
・生活費3か月程度の現金
・新NISA口座のインデックスファンド
・iDeCoなどの年金枠
・可能な範囲での65歳以降の就労(再雇用やアルバイトも含む)
このように、「金融資産+公的年金+働く」という3本立てをベースに考えています。新NISAはあくまでその一部であり、すべてを背負わせるつもりはありません。
新NISAだけに頼らないために、50代から見直したこと
新NISAの枠をどう使うかと同じくらい、50代からの「支出の見直し」は重要だと痛感しています。
教育費ピーク時の家計バランス調整
高校生と中学生がいると、塾代・受験費用・部活関連費用など、目に見えないところでお金が出ていきます。本音を言えば、もっと投資に回したい気持ちもありますが、「ここで無理をして教育費が払えなくなるくらいなら、新NISA枠は余してもいい」と割り切りました。
その代わり、ボーナスの一部を新NISAに回す、臨時収入が入ったら優先的に投資に回す、といった形で「入金力の波」を使うようにしています。
保険・通信費・その他の固定費のスリム化
また、守りの投資戦略として欠かせないのが固定費の見直しです。
・過剰な生命保険や医療保険を見直す
・格安スマホへの乗り換え
・サブスクサービスの整理
こうした地味な見直しで毎月数千円〜1万円程度浮かせることができれば、それをそのまま新NISAのつみたて枠に回せます。リスクを上げて利回りを狙う前に、「確実に支出を減らす」ほうが、50代の守りの戦略としては合理的だと感じています。
それでも新NISAは心強い味方|50代からの付き合い方
ここまで「新NISAだけで逃げ切るのは危険」という話を書いてきましたが、それでも私は新NISAをかなり高く評価しています。
理由はシンプルで、非課税のメリットは長期になるほど大きく、インデックス投資との相性が非常に良いからです。課税口座で同じ運用をするより、20年以上のスパンで見れば手取りの差は確実に広がります。
さらに、制度が恒久化され、非課税期間が無期限になったことで、「途中でルールが変わって非課税期間が終わるのでは」という不安もかなり小さくなりました。制度面の安心感があるからこそ、私たちは腰を据えてコツコツ積み立てに集中できます。日本証券デリバティブ協会
だからこそ、
・生活防衛資金を確保したうえで
・老後の逃げ切りラインを意識しながら
・焦らず、淡々とインデックスを積み上げる
この3点を守れば、新NISAは50代の私たちにとって強力な味方になってくれます。
まとめ|新NISAは“逃げ切りの主役”ではなく“頼れるレギュラー”
50代になってから新NISAの制度説明を聞くと、「もっと若い頃からあれば…」と正直うらやましくなります。それでも、今このタイミングで制度が整ったこと自体は大きなチャンスです。
ただし、私たち50代・平社員が目指すべきは、「新NISAで一発逆転」ではなく、「新NISAを活用しながら、現実的に逃げ切る」こと。
・新NISAはあくまでポートフォリオの一部
・現金・年金・就労を組み合わせてリスク分散
・固定費を削って無理のない範囲でインデックスを積み立てる
このくらいの距離感で新NISAと付き合っていけば、「逃げ切り戦略」の強力なレギュラーとして、老後資金づくりを静かに支えてくれるはずです。
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