日銀の最新統計によると、2025年6月末時点で日本の家計金融資産残高は約2,239兆円に達し、過去最高圏を維持しています(出典:日本銀行「資金循環統計 2025年6月末速報」)。
一見すると「日本全体が豊かになった」と思える数字ですが、その裏側には“偏り”があります。
実は、上位20%の富裕層が家計金融資産の半分以上を保有しており、残りの8割の世帯で残りを分け合う構造になっているのです。
今回はこの数字をもとに、「なぜ豊かさを感じにくいのか」「どう行動すべきか」を整理してみます。
1. 「上位20%が金融資産の半分以上を保有」とはどういう意味か
このデータは、主に 内閣府の『国民経済計算年報』 および 日本銀行『資金循環統計』 の分析に基づいています。
また、野村総合研究所(NRI)の「日本の富裕層に関する調査(2023年版)」でも、上位20%の世帯が家計金融資産の約60%を保有していると報告されています。
出典1:日本銀行『資金循環統計(2025年6月末速報)』
出典2:野村総合研究所「NRI富裕層調査2023」
出典3:内閣府「国民経済計算年報 2024年度版」
具体的に言えば、日本の家計金融資産総額が約2,200兆円とすると、
上位20%(富裕層・準富裕層)がそのうち 1,100兆円超 を保有している構図です。
これはOECD諸国の中でも格差が拡大している国の一つとされ、特に「資産の集中度」が高い国に分類されます。
2. なぜ資産が一部に集中しているのか
(1) 投資資産を保有している世帯が限られる
日銀の資金循環統計(2025年6月末速報)によれば、日本の家計金融資産のうち現金・預金は約52.1%を占め、
株式・投資信託などの「リスク性資産」はわずか約20%前後にとどまります。
一方、米国ではリスク資産比率が約55%に達しており、長期的な資産形成の差が広がっています。
つまり、「投資をしている層」と「していない層」で、資産増加のスピードに大きな差が生まれているのです。
出典:日本銀行『資金循環統計(2025年6月末速報)』、米連邦準備制度理事会(FRB)『Flow of Funds Accounts of the United States』
(2) 世代間格差と相続構造
総務省の『家計調査(貯蓄・負債編)2024年版』によると、
60代以上の世帯の平均貯蓄額は1,947万円、一方で30代世帯は710万円。
世代間で約3倍の差があります。
この差は、長年の蓄積だけでなく「相続・贈与による資産移転の偏り」も影響しています。
富裕層では金融教育や資産承継が早期に行われ、資産の“固定化”が進みやすい傾向にあります。
出典:総務省『家計調査(貯蓄・負債編)2024年』
(3) 所得の格差がそのまま資産格差に
年収が高い世帯ほど可処分所得が多く、投資余力があります。
たとえば、年収1,000万円世帯の純貯蓄額は平均834万円、
年収600万円世帯では253万円というデータがあります。
このような「貯められる力の差」が、長期的に資産格差を拡大させています。
出典:金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2024年)』
3. 「資産が増えているのに、豊かさを感じにくい」理由
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平均値と中央値の乖離
平均金融資産1,368万円(総務省2024年)に対し、中央値は約330万円。
ごく一部の富裕層が平均を押し上げており、多くの世帯は実感のない状況です。 -
株高・円安による見かけの増加
株価や為替による評価益で全体額は膨らんでも、実際の購買力や生活余裕は変わりません。 -
物価上昇が実質的な豊かさを削っている
消費者物価指数(CPI)は前年比+3%前後で推移(総務省 2025年7月速報)。
名目資産が増えても、物価上昇がそれを相殺しています。
4. 私たちができること
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まず「自分の立ち位置」を知る
年齢・年収・家族構成ごとの資産中央値を知ることは、最初の一歩です。 -
NISA・iDeCoなどを活用して「資産を持つ側」に回る
税制優遇を生かし、長期・分散・積立でコツコツ形成することが重要。 -
“実感なき豊かさ”を社会全体の課題として捉える
格差は個人の責任だけでなく、構造的問題でもあります。教育・制度・再分配の議論も必要です。
まとめ
日本全体では「家計金融資産が過去最高」と報じられる一方で、
実際には上位20%がその半分以上を保有し、残りの世帯は実感なきまま取り残されています。
しかし、悲観だけでなく、個人として「どう資産形成を始めるか」を考えることが今後の分かれ道です。
“お金持ちの国”ではなく、“一部がお金を持つ国”である現実を理解し、自分の資産を守り・育てる戦略を立てていきましょう。
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