経済・ニュース解説

日本人の金融資産2,000兆円はどこにある?“眠るお金”の実態

ニュースなどで「日本人の金融資産が2,000兆円を突破した」と耳にします。しかし、そのお金はいったいどこにあるのか。多くの人が豊かになった実感を持てないのはなぜなのか。今回は、総務省や日銀の最新統計をもとに、“眠るお金”の実態と私たち50代サラリーマンの家計に何を示唆しているのかを考えてみたいと思います。

1. 2,000兆円の内訳──6割が「預貯金」

まず全体像を確認してみましょう。
日銀の「資金循環統計」(2025年3月末時点)によると、日本の家計金融資産は約2,093兆円。そのうち現金・預金が約1,150兆円(全体の55%)を占めています。つまり、2,000兆円のうち半分以上は“使われていないお金”ということになります。

次いで多いのが保険・年金・定型保証(約20%)、投資信託(7%)、株式などの有価証券(10%)です。
株式や投信の割合は少しずつ増えているとはいえ、依然として「預金大国」であることに変わりありません。

私自身もそうでした。若いころは「投資=危険」と思い込み、定期預金ばかり。利息がつかない時代でも「減らない安心」を優先していました。多くの50代サラリーマンが同じような感覚を持っているのではないでしょうか。

2. 欧米との比較で見える“日本的お金の眠り方”

アメリカでは、家計金融資産の半分以上が株式・投資信託などの「運用資産」です。
一方、日本では6割が現金・預金。長年のデフレで「お金を動かさない」習慣が染みつき、結果的にお金が社会を回らず、経済全体の成長を抑えてきました。

たとえば、米国の退職世代は401(k)などで運用しながら老後を迎えますが、日本では退職金をそのまま定期預金に入れる人が多数。これは安心感を得る代わりに、「複利で増える力」を自ら止めてしまっているとも言えます。

金利0.001%の預金に1,000万円を置いても、1年で増えるのはわずか100円。これではインフレに勝てるはずもありません。
2024年以降は物価上昇が続き、実質的には「預金しているだけでお金が目減りする」時代になっています。

3. 「眠るお金」が生まれる3つの理由

では、なぜ多くの人がいまだに資産を動かさないのでしょうか。
私は次の3点に整理できると考えています。

  1. 投資への心理的ハードル
     「損をしたくない」という気持ちが強く、少しでもマイナスになると怖くなる。
     特にバブル崩壊やリーマンショックを経験した世代は、「投資=危険」というイメージを根強く持っています。

  2. 金融リテラシーの不足
     新NISAなど制度は整ってきましたが、仕組みを理解できず「自分には難しい」と感じてしまう。
     実際、金融庁の調査でも「資産形成に関する知識に自信がある」と答えた人は全体の約2割にとどまります。

  3. 将来不安と流動性志向
     年金制度への不安や医療・介護費の心配から、「すぐ使えるお金」を多めに持ちたがる。
     結果として、使われないまま銀行口座に“眠る”のです。

4. 動かない資産がもたらす「損失」

お金を動かさないことは、一見「安全」でも、長期的にはインフレによる実質的な損失を生みます。
たとえば、物価が毎年2%上昇し続けると、10年後にはお金の価値が約8割に目減りします。
一方で、S&P500のような世界株式インデックスに長期分散投資すれば、平均年利4〜6%のリターンが期待できる。
つまり「投資しないリスク」こそが、今の時代の最大のリスクなのです。

私も50代になってようやく気づきました。
「減らないこと」ばかりを気にして、実は静かに減っていた。預金のままでは、老後資金を守れないと。

5. “眠るお金”を動かすための現実的ステップ

では、私たちはどうすれば良いのか。
派手な投資術ではなく、あくまで現実的なステップで動かしていくことが大切です。

  1. 生活防衛資金(3か月分)を確保した上で、残りを投資に回す
     全額を投資する必要はありません。まず「安心できる現金」を確保し、それ以外は積立投資へ。

  2. 新NISAを最大限活用する
     つみたて枠でインデックスファンドを毎月自動で買い続ける。特に「オルカン」や「S&P500」など、低コストで分散されたファンドが主流です。

  3. “使う”ことも視野に入れる
     お金を「貯める」だけでなく、学びや健康、家族との時間に使うことも、広い意味での投資です。
     金融資産が動くことで、経済も個人の人生も活性化します。

6. 老後に備えるための「お金の働かせ方」

50代の今こそ、お金に“働いてもらう”意識が必要です。
退職後は収入が減るため、資産そのものが「第2の働き手」になります。
新NISA・iDeCo・高配当株などを組み合わせて、長期・分散・低コストで運用することが、老後の安心につながります。

私は実際に、つみたてNISAを月1.3万円に減額しながらも、オルカンとS&P500を続けています。少額でも継続することで、相場の波に左右されにくくなるからです。
お金は「置いておく」ものではなく、「使いながら育てる」ものだと、今では強く感じています。

7. まとめ──“眠るお金”を未来に動かすために

日本の2,000兆円という莫大な資産は、私たち一人ひとりの“預金の積み重ね”です。
それを動かす力もまた、私たちにしかありません。
金融教育や制度は整いつつありますが、最後に必要なのは「一歩踏み出す勇気」です。
お金を働かせることは、決して投機ではなく、未来への準備です。
預金だけでは守れない時代だからこそ、「貯める・増やす・使う」をバランスよく意識し、家計全体でお金を循環させていく。
それが、これからの日本経済を変える第一歩になると私は思います。

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