投資

物価高で1億円は金持ちじゃない?2025年のリアル

2025年の日本では、物価上昇が長期化し、「1億円は金持ち」を当然とする価値観が大きく揺らいでいます。SNSでも「1億円あっても普通の生活しかできない」「都心では中流レベル」といった声が増え、資産形成や老後の安心ラインについて、これまでとはまったく違う感覚を持つ人が増えています。

では実際のところ、1億円で“金持ち”と言える時代は本当に終わったのか?
そして、普通のサラリーマンが目指すべきラインはどこなのか?

この記事では、最新の物価状況、老後資金の現実、野村総研の階層データなどをもとに、2025年における「実質的な富裕ライン」を分かりやすく解説します。

1億円が“金持ちではない”と言われ始めた理由

 1)物価上昇で1億円の価値が目減りした

まず一番の理由は、2022年以降の物価上昇です。
日本は長らくデフレで、お金の価値がほぼ変わらない国でした。しかし2022〜2025年は違います。

  • 食料品 → 10〜20%以上の値上げが当たり前

  • 光熱費 → 電気代・ガス代が継続的に上昇

  • 外食 → 1食あたり+100〜300円が標準化

  • 保険料・サービス料金 → 横並びで値上げ

総務省の消費者物価指数では、2025年時点で 2020年比で約10〜15%の上昇
感覚値としては、1億円の購買力が実質7000万〜8000万円くらいに縮んだとも言われています。

つまり、「1億円」という数字は変わらなくても、その中身(購買力)が減っているわけです。

2)老後に必要なお金が想定以上に増えている

もう1つ大きいのは、老後の生活費の上昇。
2020年頃までの老後シミュレーションは「月26〜28万円」が一般的でした。

しかし2025年は違います。

  • 食費:+1〜2万円

  • 光熱費:+5,000〜1万円

  • 通信費:モデルが多様化し上昇

  • 介護・医療費:将来の不安が大きく、備えを厚くしたい

  • 賃貸生活:更新料・家賃上昇圧力

結果、夫婦で月35〜40万円が“ゆとりある生活”のラインになりつつあります。

仮に月35万円なら、
35万円 × 12ヶ月 × 30年=1億2,600万円
生活費だけでこの規模です。

1億円では“ゆとりの老後をフルカバーできない”のが現実です。

 3)所得が伸びず、富裕の実感が湧きにくい

物価は上がっているのに、給与水準はそこまで上がっていません。
さらに社会保険料の負担増が重く、可処分所得(手取り)はむしろ減少傾向。

1億円あっても、

  • 年4%取り崩し:年間400万円

  • 生活費:年間420〜480万円

このように、資産所得が生活費に飲み込まれてしまい、贅沢とは程遠い状態になります。

結果、「1億円=富裕層」というイメージが弱まっています。

 ヒアリングして分かるリアル:「1億円では“余裕がある普通の家庭”」

私自身、同年代(40代後半〜50代)の友人・読者から話を聞くと、こんな声が増えています。

  • 「1億円あっても働いたほうが安心」

  • 「配当だけでは生活は難しい」

  • 「富裕層というより“堅実な準富裕層”の感覚」

  • 「子ども・介護・老後を考えるとぜんぜん十分じゃない」

結局、1億円は“贅沢に暮らせるお金”ではなく、“不安を減らせるお金”になったということです。

とはいえ、1億円が“価値がない”わけでは全くない

ここで重要なポイントがあります。
1億円は金持ちではないが、“安心の基盤”としては依然として非常に強力ということ。

 年4%運用+取り崩しで、年350〜400万円の生活費を賄える

今の時代、株式インデックスの期待リターンは年3〜5%程度。
1億円なら年間300〜500万円の資金を得られます。

これに年金(夫婦合計 月14〜22万円)を加えれば、
働かなくても生活の7〜9割をカバーできる域に入ります。

これはもう、「普通の家庭」とは全然違う安心感。

 野村総研の階層で見ると“1億円は準富裕層の上限”

野村総合研究所(NRI)の金融資産階層は以下の通りです。

  • アッパーマス層:3,000〜5,000万円

  • 準富裕層:5,000万〜1億円

  • 富裕層:1億〜5億円

  • 超富裕層:5億円以上

ここから分かるのは、
1億円は「富裕層の入口」ではなく、「準富裕層の上限」に過ぎないということ。

だからこそ、
「1億円だけで富裕層です」
というのは、もう2025年にはそぐわないのです。

 じゃあ“金持ち”と呼べるのはどこから?

結論から言えば、
1.5〜2億円あたりから生活の自由度・選択肢が大きく変わります。

富裕層と感じられやすい状態

  • 投資収入だけで年間350〜500万円以上

  • 何年も働かなくても生活水準が落ちない

  • 住む場所・働き方・時間の使い方が選べる

  • 将来の不安(医療・介護)が小さくなる

つまり、単にお金があるだけでなく、
「選択肢が増える」状態に入って初めて“本物の富裕層”です。

それでも一般家庭にとって「1億円」は最強レベルの到達ライン

ここまで読むと、「1億円では金持ちじゃないのか…」とガッカリするかもしれません。

しかし、日本全体の中央値を見ると話は変わります。

 金融資産(中央値)

  • 40代:300万円

  • 50代:400万円

  • 60代:710万円

つまり、庶民の世界では1億円は普通ではなく、圧倒的に少数派
“金持ちじゃない”というより、「自力でここまで到達した時点で、すでに上位数%の実力者」なのです。

これは胸を張っていい。

 現実的な結論:「1億円は“金持ち”の象徴ではなく、“逃げ切りのための必要ライン”」

2025年の生活実感に基づいてまとめると:

  • 1億円 → 金持ちではない

  • 1億円 → しかし老後破綻しにくい“安心ライン”

  • 金持ちの実感ライン → 1.5〜2億円

  • サラリーマンが自力で目指せる最大値 → 1億円前後が現実的

つまり、
1億円は「夢のような金額」ではなく、「人生の不安を消す現実的なゴール」になった
ということです。

物価高の時代、現役世代にとって最も価値があるのは“贅沢”ではなく“安心”。
1億円は、その安心を買うための強力な武器であることに変わりありません。

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