はじめに:「4%ルール」って結局何なの?
「FIREを目指すなら4%ルールを覚えよう」
「老後に必要な資産は生活費の25倍」
こんな言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
でも、なんとなく聞き流している人が大半かもしれません。
「4%って何の数字?」
「25倍ってどういう根拠?」
「本当にそんな簡単な話で老後は安泰なの?」
この記事では、投資初心者やFIRE初心者の方でも理解できるように、「4%ルール」の仕組み・背景・メリットと注意点をわかりやすく解説します。数字に強くなくても大丈夫。生活感のある例を交えながら、1つずつひもといていきましょう。
1. 「4%ルール」とは何か?基本のキ
まず、4%ルールとは…
「リタイア後、資産の4%ずつを毎年取り崩していけば、約30年間は資産が尽きにくい」
という考え方です。
言いかえると、生活費の25倍の資産があれば、老後を安定的に暮らしていける可能性が高いという意味です。
◆ なぜ25倍?
年4%というのは「1 ÷ 25」=0.04 から来ています。
つまり、もし年間生活費が300万円なら、
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300万円 ÷ 0.04(4%) = 7,500万円
この7,500万円が必要資産ということになります。
◆ 毎年取り崩すイメージはこう
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初年度:7,500万円 × 4% = 300万円
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翌年以降も300万円を取り崩していく
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資産は残りの96%が投資されているので、運用益である程度補える
この取り崩しと運用のバランスで、資産が長持ちする仕組みです。
2. どんな根拠があるの?──トリニティ・スタディとは
この4%ルールの元になっているのは、1998年に発表された「トリニティ・スタディ(Trinity Study)」という研究です。
アメリカのトリニティ大学の研究者たちが、
「資産を◯%ずつ取り崩したら、何年持つのか?」
というシミュレーションを、米国の過去データ(株と債券)をもとに分析しました。
結果として、「年4%の取り崩しで、30年間資産が尽きない確率が95%以上」という結論が導かれたのです。
3. なんで資産が減らないの?──“運用しながら取り崩す”という仕組み
ここで1つ勘違いされやすいのが、「毎年4%ずつ使ったら、25年でなくなるのでは?」という疑問。
実はこのルール、投資による運用益を前提にしています。
◆ たとえば年5〜7%のリターンがあると…
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運用益が7,500万円 × 5% = 375万円
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そのうち300万円を取り崩し、残りの75万円を再投資
つまり、取り崩し分(4%)を運用益でまかなえる年もあるということ。
資産の減少を抑えられるので、30年以上持つ可能性もあります。
◆ 実際には毎年の成績はバラバラ
当然ですが、投資は年ごとにプラス・マイナスの変動があります。
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好景気の年:資産はむしろ増える
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暴落の年:取り崩しが資産に大きなダメージを与える
これが、次に説明する「リスク」にもつながっていきます。
4. 前提条件を知らずに使うのは危険!
4%ルールは「シンプルで便利」な反面、大事な前提があることを見落としてはいけません。
前提条件 | 内容 |
---|---|
投資配分 | 株式60%・債券40%の分散型ポートフォリオ |
運用リターン | 年5〜7%を想定(インフレ調整後で約4%) |
期間 | 取り崩しは30年間を想定 |
通貨・市場 | 米国の長期データに基づいている |
税制・手数料 | 非考慮(米国基準) |
◆ 日本人にとってはどうか?
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日本市場はリターンが不安定
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為替リスクやインフレの影響が大きい
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日本の年金水準はそれほど高くない
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NISAやiDeCoなど税制面は別設計
→ つまり、そのまま鵜呑みにするとリスクが高い可能性があるのです。
5. 最大の落とし穴「シーケンスリスク」に注意!
資産取り崩し戦略でもっとも警戒すべきなのが、取り崩し開始直後に暴落がくることです。これを「シーケンス・オブ・リターン・リスク」といいます。
◆ どういうこと?
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資産が減った状態で取り崩しを続けると、回復しても間に合わない
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結果として、想定より早く資産が尽きることに
◆ 実例:7,500万円 → 株価▲30% → 5,250万円
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そこから300万円を取り崩すと残りは4,950万円
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運用益では回復しにくく、資産寿命が短縮される
特に退職直後に暴落がくると、このリスクは深刻です。
6. 現実的にどうすればいい?──3つの対策
対策1:3%ルールで設計する
保守的に考えるなら、「年3%までの取り崩し」が現実的。
生活費が300万円なら、必要資産は 1億円(300 ÷ 0.03)
これなら資産寿命が延び、暴落にもやや強くなります。
対策2:フレキシブル支出型にする
相場の状況に応じて取り崩し額を調整する方法です。
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株高の年:取り崩しを少し多めに
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株安の年:支出を抑える or 副収入で補う
「4%にこだわらない」柔軟さがリスク軽減につながります。
対策3:生活費を年金や副収入と組み合わせる
公的年金(平均14.6万円/月)、パート・副業収入などを活用して、
投資資産に依存しすぎない構造を作る
ことで、シーケンスリスクを緩和できます。
7. まとめ:「4%ルール」は出発点であって、答えではない
「4%ルール」は、シンプルでわかりやすく、資産計画を立てる出発点としてはとても優れた考え方です。
しかし、実際の生活はもっと複雑です。
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市場は予想通りに動かない
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ライフイベントも支出も流動的
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自分の健康、働き方、住まいも関係してくる
最後にひとこと
「4%ルール」は“魔法の数字”ではありません。
でも、“老後のためにいくら貯めればいいか?”という問いに対して、方向性を示してくれる指針にはなります。
実際に使うときは、前提条件を確認しつつ、自分の状況にあわせて調整する柔軟性を持つことが大切です。
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