資産が増えても、なぜか老後の不安が消えない。50代になると、そんな感覚を持つ人は多いと思います。私も総資産が8,000万円台になってから「もう大丈夫でしょ」と言われることがありますが、正直、数字だけでは安心できませんでした。むしろ資産が増えた分だけ、「減らしたくない」「失敗できない」というプレッシャーが増えた気もします。
不安の正体は、資産額そのものではなく「これから先の見通し」がぼんやりしていること。ゴールと道順が曖昧なまま走っている状態です。今回は、賃貸暮らしの50代平社員の私がやってきた“見通しの作り方”を、できるだけ再現しやすい形でまとめます。難しい計算は抜きで、紙とスマホのメモだけでもできます。
老後不安の正体は「見通しの欠如」
老後不安は、だいたい次の3つが見えないことで膨らみます。
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これから入ってくるお金(年金・働く収入・その他)
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これから出ていくお金(生活費・家賃・医療・教育の残りなど)
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足りない分をどう埋めるか(取り崩し・働き方・支出調整)
資産は“燃料”ですが、地図(見通し)がなければ不安は残ります。逆に言うと、燃料が少なめでも、地図とペース配分ができている人は落ち着いています。ここで大事なのは「未来を当てる」ことではなく、「ブレたときに修正できる形」にしておくことです。
私は昔、資産額ばかり見ていました。投資信託の評価額が増えると安心、減ると不安。完全に相場に気分を預けていたんですね。でもそれだと、相場が不安定な年ほどメンタルが削られます。老後に欲しいのは、相場の波をならす“心の設計図”だと気づきました。
50代が作るべき「3つの見通し」
見通しと言うと難しそうですが、私は次の3点をそろえれば、かなり不安が減ると感じました。
① 家計の見通し:固定費を「小さく固定」する
老後は収入が読みづらいので、まず支出のほうを読める形にします。私が効いたのは「固定費を小さく固定する」ことです。
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通信費、保険、サブスクは一度全部棚卸し
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“毎月の当たり前”を疑う(自動更新が敵)
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生活水準を上げるときは「一回止まれる仕組み」をセットにする
教育費がピークの時期は、節約しても焼け石に水に感じます。でも、固定費の削減は“未来の固定給アップ”と同じで、効果が長く続きます。逆に、固定費が大きいままだと「働き続けないと詰む」という焦りが増えて、投資判断もブレやすくなります。
② 収入の見通し:年金+働き方を「ざっくり線」で引く
年金の受給額は、正確な数字より「いつから・どれくらいのレンジ」で把握するのが大事です。私は、年金の目安を確認したうえで、次のように“線”を引きました。
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65歳以降は年金を“ベース収入”とみなす
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60〜65歳は「働く前提」で穴埋めする(無理のない範囲)
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収入が減る時期を先に決めて、支出側を合わせにいく
ポイントは、完璧な予測よりも「線を引いておく」こと。線があると、相場が荒れても生活の判断が早くなります。たとえば、60代前半は“働く”、70代以降は“支出を絞る”、みたいに段階を決めるだけで、「今この投資を続けていいか?」の判断がシンプルになります。
③ 資産の見通し:取り崩しルールを先に決める
投資で一番怖いのは、暴落そのものより「怖くて売ってしまうこと」です。私はレバレッジや信用取引に否定的ですが、それ以上に“出口で迷う”のが危険だと感じています。
そこで、取り崩しのルールを先に作りました。
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年1回だけ見直す(毎月は見ない)
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取り崩しは「生活費の不足分だけ」を基本にする
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相場が悪い年は、取り崩しを少し減らす/働く量を少し増やす
ルールがあると、「今日は売るべき?待つべき?」の悩みが減ります。悩む回数を減らすのが、長期投資の勝ち方だと思っています。投資の世界では“正解”より“継続”が強い。だから私は、継続できる仕組みを最優先にしています。
賃貸50代が作る「住居費の見通し」
老後の不安で、意外と大きいのが住居費です。持ち家だと修繕費や固定資産税、賃貸だと家賃。私は賃貸なので、家賃が一生ついて回ります。ここを曖昧にすると、見通しが一気に崩れます。
私がやったのは、家賃を「一段下げる選択肢」を事前に用意することです。
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更新のタイミングで住み替え候補を2つ持つ(家賃帯を変えてもOK)
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70代以降は“部屋を広げない”をルールにする(管理コストを増やさない)
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いざとなれば家賃を下げる=取り崩し率を下げられる、と理解する
賃貸は「払い続ける不安」がある反面、“ダウンサイジングで調整できる”という強みもあります。私はこの調整幅があることで、老後の変化に対応できる気がしています。見通しとは、こういう“逃げ道”の数でもあるんですよね。
ざっくりでいい「簡易シミュレーション」の作り方
ここで一度、数字を使って不安を言語化します。ただし細かい表を作る必要はありません。見るべきは1つ、「不足額」です。
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月の生活費(老後の普通ライン)を決める
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そこから、年金などの月収入見込みを引く
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余った分が「毎月の不足額」=取り崩し候補
例として、生活費が月30万円、年金などが月22万円なら、不足は月8万円。年96万円です。これを、運用資産(現金を除いた投資部分)で割ると「取り崩し率」が出ます。もし運用資産が6,000万円なら、96万円÷6,000万円=年1.6%。このくらいの低い取り崩し率なら、暴落が来ても修正しやすい。逆に、年4〜5%を超えるようなら、支出・働き方・資産配分のどこかを見直すサインになります。
ここでのコツは、数字を“断定”しないことです。インフレで生活費は上がるかもしれないし、医療費も増えるかもしれない。だから私は、不足額に「予備の上乗せ」を最初から入れます。たとえば不足が月8万円なら、月9万円で見積もる。これだけで、見通しの耐久性が上がります。
私がやった“見える化”の5ステップ
ここからは、私が実際に紙とメモアプリでやった手順です。5つの箱を埋めるだけで、頭の中がかなり整理されます。
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生活費を「最低ライン」と「普通ライン」に分ける
最低ラインは“これ以下だとしんどい”、普通ラインは“無理なく続く”。2本線にします。 -
現金は生活費3か月分以上を確保(私はここを最優先)
現金が薄いと、暴落のたびに投資を崩しがちです。現金はメンタルの防波堤。 -
60〜65歳の働き方を仮決め(フル→短時間など段階を想定)
体力も気力も落ちる前提で、働き方は「一段ずつ減らす」設計にしておく。 -
65歳以降の不足分を「資産取り崩し」で埋める設計にする
不足をゼロにするのではなく、“不足をコントロールできる形”にするのが目的です。 -
年1回、家計と資産配分を点検して微調整する
私は誕生月など、固定の月に点検日を決めています。頻度を上げると不安が増えます。
この5ステップをやってから、「資産が増えたから安心」ではなく「状況が変わっても修正できるから大丈夫」という感覚に近づきました。見通しは“完成品”ではなく“更新できる道具”だと思います。
見通しを壊す落とし穴
最後に、見通しづくりを邪魔する“よくある罠”も書いておきます。
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生活費を過小評価する(特に固定費と医療)
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“一発逆転”の商品に惹かれる(高コスト・高リスク)
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SNSの資産額と比較して焦る(比較対象が違う)
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相場が良いときに生活水準を上げて固定化する
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不安だからと情報を浴び続ける(結局、行動がブレる)
老後の安心は、派手な利回りより「続けられる仕組み」で決まります。新NISAも結局は、長期・分散・低コストを続けるための箱だと私は理解しています。相場を当てにいくより、ルールで自分を守るほうが再現性が高いです。
まとめ:不安をゼロにするより、修正できる形にする
老後不安の原因は、資産額だけではありません。むしろ「見通しがないこと」が不安を増幅させます。
家計(支出)・収入(年金+働き方)・資産(取り崩し)の3つに線を引き、年1回だけ修正する。これだけで、数字以上に心が安定します。
私自身、教育費が重い時期もありますし、相場はこれからも上下します。それでも“見通しがある”だけで、判断の軸がブレにくくなりました。焦って動く前に、まずは自分の地図を一枚描いてみてください。
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