経済

日本銀行がETF購入の損益分岐点について説明。日銀のバランスシートは大丈夫?

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日本銀行が購入している株価指数連動型上場投資信託(ETF)の損益分岐点について説明。

日本銀行の黒田東彦総裁は2020年3月10日の参議院財政金融委員会で、日本銀行による株価指数連動型上場投資信託(ETF)購入について説明を行いました。日本銀行が買い続けた株価指数連動型上場投資信託(ETF)の損益分岐点が日経平均株価で19,500円ぐらいであることを説明しました。これは2019年9月末時点に比べ500円程度上がっているようです。この数値は、あくまで正式に計算した数値でなく可能性として言及したようです。

含み損を抱えるリスクが高まっている

2020年3月10日の日経平均株価の終値は19,867.12円となり取引期間中は19,000円を割り込む場面もありました。そうすると日本銀行の保有している株価指数連動型上場投資信託(ETF)が含み損を抱えることに現実味を帯びてきています。また、このまま日経平均株価が暴落し続けると日本銀行のバランスシートが悪化する可能性も出てきます。今の株価でとどまって反発すれば、それほど大きな問題にならないと思います。しかし、暴落が始まるとこの問題は大きくなるかと思います。

そもそも、日本銀行は、なぜ株価指数連動型上場投資信託(ETF)買いを行っているのでしょうか。

日本銀行の役割として「通貨及び金融の調節を行うこと」があります。その目的を担っているので「物価の安定」を図る必要があるのです。日本は長い間、デフレ経済に苦しんでいます。デフレというのはデフレーションの略で物やサービスの価値が下がることを言います。逆に言えば通貨の価値が上がっていくことを言います。そのデフレ経済を抑制するために世の中に出回るお金を増やして上げる必要があります。世の中にお金が出回ると必然的にお金の価値が下がるので物価が上昇してインフレ側に経済が回るようになります。

物価上昇が目的で株価指数連動型上場投資信託(ETF)を始めた

なので、日本銀行は世の中にお金を回したいと思っているので株価指数連動型上場投資信託(ETF)を買い入れているのです。世の中にお金を回して経済が回っていけば物価も上昇して好景気の流れが作れます。そのため、日本銀行は2010年にETFの買い入れを決定を行い2010年の12月よりETFの買い入れを行っています。

日本銀行の株価指数連動型上場投資信託(ETF)購入は一定の効果はあった

これは一定の効果があったと思います。それから約9年が経過しましたが日本銀行のETFの買い入れもあり日本株は顕著に上昇していきました。しかし、問題も大きくなってきています。日本銀行は始め1兆円規模での買い入れを開始してきましたが、買い入れ額をどんどん増やして行き2018年には6兆円を超えています。株価が右肩上がりしている中で買い続けてきたので購入平均単価も上がっており、それが19,500円まで来たということになります。

日本銀行の株価指数連動型上場投資信託(ETF)購入は問題の多い政策。

日本銀行のETF買いにはいろいろと問題があるのですが、その中で今回は含み損を抱える恐れがあることが報道されたことになります。このETF買いは日本の株式市場の歪みを生んでいますし、日本銀行が保有している株式の議決権行使が実質的に無意味になっており日本企業の企業運営にも歪みが出ています。このことについては過去にも記事にしていますので読んでいただけたら分かると思います。
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出口戦略を考えないといけない

そして、もう一つ大きな問題点として出口戦略をどうするのかという問題があります。購入した株をいつ手放すのかという問題です。日本銀行は購入したETFを売却しないと言っています。しかし、永遠に保有しているわけにも行かないと思います。株価が右肩上がりに上がり続けていれば大きな問題にはなりませんが、暴落した場合には含み損を抱えることになります。そうすると日本銀行のバランスシートが悪化してしまいます。そうすると、どこかで調整しないといけない場面が出てくると想像します。また、今まで日本銀行のETF買いで日本の株価は下支えされて来ました。この購入をストップするだけでも市場に影響は出てきます。購入をやめたら株価が下がり、日本銀行の含み損も増えるという難しい局面が出てくる可能性もあります。

日本銀行は株価指数連動型上場投資信託(ETF)の購入だけでなく国債も大量に購入している。

日本銀行は国債も大量に保有しています。日本銀行の国債の買い入れ状況はホームページに公開されています。
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国債にもいろいろと種類があり2年債、5年債、10年債、20年債、30年債、40年債、変動債権とあります。日本銀行はこれら全てを購入しており、一番保有額が大きいのが10年債の国債になります。これが2020年2月末時点で約194兆円となっています。また、国債購入額の総額が約466兆円以上となっており、相当な額の購入を行ってしまっていることにないります。これが何を意味するかと言うと将来、金利が上昇することにより国債の価格は下落します。そうすると日本銀行のバランスシートが悪化することが考えられます。これを見ると日本は結構危うい状況での金融緩和を実践しているのが分かると思います、