経済・ニュース解説

日銀「資金循環」で見る家計金融資産|前回(6月末)から何が変わった?

年末に向けて「家計の金融資産は過去最高」というニュースを見かけました。私も投資ブログを書いているので、こういう数字はつい気になります。ただ、数字だけを眺めても、生活感が伴わないんですよね。

そこで今回は、日本銀行の資金循環統計(速報)を使って、最新の家計金融資産(2025年9月末)を、前回発表(2025年6月末)と“差分”で確認します。ポイントは「増えたのはどの資産か」「現預金の比率はどうなったか」。この2つが分かると、新NISAの積立を続ける気持ちも落ち着きます。

最新:家計の金融資産は2,286兆円(2025年9月末)

日銀の参考図表(2025年第3四半期・速報)によると、2025年9月末の家計金融資産は2,286兆円です。時系列の表でも、2024年末2,233兆円→2025年3月末2,200兆円→6月末2,240兆円→9月末2,286兆円と確認できます。

内訳(9月末)は、ざっくり次の通りです。

  • 現金・預金:1,122兆円(構成比49.1%)

  • 投資信託:153兆円(6.7%)

  • 株式等:317兆円(13.9%)

  • 保険・年金・定型保証:575兆円(25.1%)

  • 債務証券:33兆円(1.5%)

  • その他:86兆円(3.8%)

「現金・預金が約半分」という日本らしい構図は残っていますが、9月末は49.1%と5割を割り込みました。

そもそも「資金循環」の家計金融資産とは

資金循環統計の「家計」は、いわゆる家庭だけでなく自営業者(個人事業主)も含む区分です。なので、私たちがニュースで見る“家計の金融資産”は、かなり広い意味の「家庭部門の資産残高」と思っておくとズレが減ります。

また資金循環は、増減を「取引(フロー)」と「調整額(価格変化などの影響)」に分けて考えるのが基本です。株高・円安の局面で残高が増えやすいのは、この“評価額の上昇”が効きやすいからです。

さらに注意点として、資金循環は遡及改定が入り得ます。ブログで扱うなら「将来、数字が少し動く可能性がある」前提で読むのが安全です。

前回(6月末)との比較:合計は約+46~47兆円

では本題の“前回との比較”です。前回発表にあたる2025年6月末は、日銀の時系列表では2,240兆円。報道では2,239兆円(四捨五入の関係)となっています。

つまり、6月末→9月末で家計金融資産は約+46~47兆円増えた計算です(2,286-2,240=46)。増え方としてはかなり大きい部類だと思います。

ここで大事なのは、「家計が急に節約して入金した」というより、株高・円安などの時価変動が効きやすい点です。だから、増えたから安心、減ったから失敗…と短絡しないのがコツです。

増えた理由を分解:「資金の純流入」より「時価変動」が大きい

7-9月期(今回の対象期間)は賞与月を含まないため、例年、資金の純流入が進みにくい傾向があるとされています。それでも今回は、前期末比46兆円増。内訳を見ると、資金の純流入は小さめで、株価上昇と円安による時価変動が残高増の主役、という整理になります。

この見方をすると、9月末の数字を見て「みんな投資で勝っている」と焦る必要がないのが分かります。勝ち負けというより、市場が動けば“家計全体の残高”も揺れる、というだけです。

それからもう1つ。名目残高が増えていても、物価上昇を加味した“実質ベース”では見え方が変わります。私は「投資のリターン」だけでなく「家計の支出管理」をセットで考えるようにしています。インフレは、現金が多い家計ほどジワジワ効いてくるからです。

増えた主役は「株式等」と「投資信託」

前回(6月末)の株式等は294兆円、投資信託は140兆円でした。最新(9月末)は株式等317兆円、投資信託153兆円。差分は、株式等+23兆円、投資信託+13兆円です。

私は新NISAでは「長期・分散・低コスト」を守って、オルカンやS&P500のような投信中心です。だから、投信残高が増える流れは肌感覚としても分かります。ただし、こういう局面ほど“上がったから買う、下がったら売る”をやりがちなので、淡々と積立を続ける方が結果的に楽です。

現金・預金は「横ばい」なのに比率が落ちる理由

前回(6月末)の現金・預金は1,126兆円、最新(9月末)は1,122兆円。数字だけ見ると「ほぼ横ばい~やや減少」です。

それでも比率が下がるのは、現預金が減ったというより、株式等・投信などリスク資産の残高が膨らんで、分母(総資産)が押し上がった影響が大きいから。統計の“差分”は、こう読む方が自然だと思います。

50代・平社員の私が、この差分から得た現実的な示唆

ここから先は、私のような「50代・役職なし・賃貸暮らし」で、教育費が重い世代の目線です。

1)“増えた”は嬉しいが、同じ速さで“減る”のも家計金融資産

家計金融資産はストック(残高)なので、相場の影響がダイレクトに出ます。上がれば増え、下がれば戻る。だから私は、資産額をドヤるより「暴落でも投げない仕組み(積立額・生活防衛資金)」を優先しています。

2)現預金比率が下がっても、家計はまだ“現金大国”

49.1%は低下とはいえ、依然として約半分。投信6.7%、株式等13.9%ですから、家計全体はまだ守りが強い構造です。
「みんな投資しているから、置いていかれる」という焦りは持たなくていい。むしろ、長期目線で少しずつ“投資に慣れる人が増えている”くらいの温度感だと思います。

3)新NISAは“枠を埋める競争”にしない

新NISAを始めると、どうしても“枠を埋める=正義”になりがちです。でも家計には季節変動があります。賞与のある4-6月と違い、7-9月は支出が増える家庭も多い。私も家計の都合で積立額を減らした時期があります。それでも長期で続けられれば勝ちです。

数字を自分の家計に落とすための「3つの見方」

最後に、統計の数字を“自分ごと”にするコツを3つだけ書いておきます。

見方1:残高より「比率」を見る

総額は相場で上下します。私は、現預金・投信・株式の“比率”がどう動いたかを見ます。比率が動くときは、世の中のムード(インフレ不安、金利、株高など)が透けて見えるからです。

見方2:「生活防衛資金」は別枠で死守する

現預金比率が下がっているニュースを見ると、投資を急ぎたくなります。でも、家族がいる50代は支出のブレが大きい。私は生活防衛資金だけは投資に回さず、相場が荒れても淡々と暮らせるラインを確保しています。

見方3:新NISAは“毎月の継続”を最優先

一括でドンと入れるより、毎月続く仕組みの方が強いです。相場が良い時期も悪い時期も、同じルールで積み上げる。私はこの「仕組み化」だけは裏切らないようにしています。

まとめ:前回と比べると「リスク資産の増加」がくっきり

2025年9月末の家計金融資産は2,286兆円。前回(6月末)から約+46~47兆円増えました。

差分の中心は、株式等(+23兆円)と投資信託(+13兆円)。一方で現金・預金はほぼ横ばいで、比率は49.1%と5割を割り込みました。

この動きは、個人が急に“攻めた”というより、株高・円安でリスク資産の評価額が膨らんだ側面が大きいはず。だからこそ、私たち個人投資家は「上げ相場で焦らない」「下げ相場で投げない」を徹底したい。結局、逃げ切り戦略は“続けた人”が強いです。

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