日本銀行が政策金利を引き上げました。2025年12月19日の金融政策決定会合では、無担保コールレート(オーバーナイト物)を「0.75%程度で推移するよう促す」方針が示されています。
ここ数年、日銀は段階的に“超低金利”から離れています。たとえば2024年3月には、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0〜0.1%程度へ誘導する枠組みに移行しました。さらに2025年1月には0.5%程度への誘導方針が公表されています。そして今回0.75%。金利環境が変わってきたのは事実です。
私は賃貸暮らしで住宅ローンはありません。でも、同世代の同僚や親戚はローンを抱えている人も多い。職場でも「次の返済額、上がるのかな…」という話が普通に出ます。預金金利・債券・株価にも波及するので、投資をしている人にも無関係ではありません。
今回は「利上げで得する人/損する人」を、生活者目線で整理します。結論から言うと、利上げは“善でも悪でもなく”、家計の立ち位置で勝ち負けが分かれます。
そもそも利上げで“何が”動くのか
日銀の利上げは、短期金利の基準を押し上げます。結果として、私たちの生活に近いところでは大きく3つが動きやすいです。
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預金金利(普通預金・定期預金など)
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借入金利(住宅ローン、事業性ローン、カードローン等)
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債券利回り(国債・社債)と、それに影響を受ける株価
つまり「金利が上がる=みんな損」ではありません。預金側にいる人は得、借金側にいる人は損。とてもシンプルです。
利上げで得する人
1) 預金を多めに持っている人(現金派・生活防衛資金が厚い人)
金利が上がると、預金利息が増えます。利上げを受けて、3メガバンクが普通預金金利を0.2%→0.3%に引き上げ(2026年2月から)と報じられました。
金利が0.1%違うと「たったそれだけ?」と思いがちですが、生活防衛資金(半年〜1年分)を置いている人ほど恩恵が見えます。50代は教育費や親のこともあり、現金比率が下げにくい。だからこの改善は地味に効きます。
預金は“守りの弾薬”。利上げは、その弾薬に少しだけ利息が付くようになる、と捉えれば十分です。
2) これから債券を買う人(新規投資家)
金利上昇局面では、新しく買う国債や社債の利回りが上がりやすいです。つまり「これから買う人」は条件が良くなる可能性があります。
一方で、債券には注意点もあります。金利が上がると既発債の価格は下がりやすい(利回り上昇=価格下落)ので、長期債中心の債券ファンドを持っていると評価損が出ることもある。債券は“買った瞬間に安全資産”ではなく、期間(満期までの長さ)で値動きが変わる資産です。
私は、債券で攻めるよりも、生活防衛資金の置き場(短期預金など)を整えるくらいが現実的だと思っています。
3) 年金生活者・退職金を現金で持つ期間がある人
利上げは、年金世代や退職金を一時的に現金で持つ人にとっても追い風になりやすいです。もちろんインフレが強いと実質目減りは続きますが、「現金がゼロ金利で寝ている」よりは、心理的負担が軽くなります。
4) 銀行など金利上昇が追い風になりやすい業種を持つ人
一般論として、金利が上がると銀行は利ざや改善が期待されやすいと言われます。ただ、市場全体は金利の上昇を嫌がる局面もあり、短期的には上がったり下がったりしがちです。
私は個別株の当てっこが得意ではないので、結局はインデックス中心です。恩恵を狙って“買い増しスイッチ”を入れるより、いつも通りの積立を優先しています。
利上げで損する人
1) 変動金利の住宅ローンを抱えている人
今回いちばん影響が出やすいのはここです。変動金利は基準金利が上がると、一定期間の後に返済額や利息負担が増える可能性があります。
よくある誤解が「明日から返済が急に跳ね上がる」ですが、実際の反映タイミングや見直しルールは金融機関・契約で異なります。だからこそ、まずは契約書や銀行の案内で“自分のルール”を確認するのが最優先です。
固定金利なら、基本的には契約時の金利が続くので、影響は新規借り入れや借り換えのタイミングに集中します。つまり「すでに固定で組んでいる人」は当面は平穏、「変動の人」は要注意、という整理が分かりやすいです。
(簡単な例)仮に残高3,000万円・残期間30年で金利が0.5%上がると、総返済額の差は小さくありません。実際の増減は返済方式(元利均等/元金均等)でも変わるので、ここは「試算して現実を直視する」がいちばん効きます。
2) 新規で大きな借入をする人(住宅・車・事業)
利上げ局面は、新規の借入条件が悪くなりやすいです。住宅購入の予算が同じでも、金利が上がると借入可能額が下がるため、物件選びの“目線”を変えざるを得ません。
実務的には「買える・買えない」より、買った後に教育費や老後資金を削ってしまう構図が怖い。購入判断は、金利の上昇を1段(0.5〜1.0%程度)織り込んだ家計でも回るか、でチェックすると現実的です。
3) 借金が生活に食い込んでいる人(リボ・カードローン等)
住宅ローンより怖いのが、金利の高い借入です。金利が高い借金は、利上げでさらに重くなりやすい。資産形成どころではなくなるので、ここは最優先で整理したいところです。
4) 長期債・長期債ファンドをすでに厚く持っている人
「これから債券を買う人」が得しやすい一方で、既に保有している人は評価損が出やすい局面があります。とくに期間が長い(満期が遠い)ほど価格変動の影響が大きくなります。
5) “金利ゼロ前提”で資金繰りを組んでいる人(企業・国・自治体)
家計だけでなく、企業や国の利払いも増えやすくなります。ニュースで「財政負担が…」と出るのは、この構造です。景気が強ければ吸収できますが、弱い局面で金利だけ上がると、雇用や賃上げにブレーキがかかる可能性もあります。
50代の家計で、私が現実的だと思う対策
私は住宅ローンがない分、金利上昇の“痛み”は直接はありません。とはいえ、家計は教育費・物価高で簡単ではない。だからこそ、対策は「派手に儲ける」より「守って逃げ切る」が基本です。
借り入れがある人向け(住宅ローン含む)
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自分の金利タイプ(変動/固定/固定期間選択)をまず確認
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返済額が上がっても耐えられる“家計の余白”を点検(教育費ピークを織り込む)
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余剰資金があるなら、繰上返済と運用の優先順位を比較(感情ではなく数字で)
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借り換えは「手数料込みの総額」で判断(目先の金利だけで決めない)
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家計を圧迫しそうなら、早めに固定費を整理して“詰み”を避ける
投資をしている人向け(新NISA中心)
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生活防衛資金は、金利の付く預金や短期商品も活用して“守り”を厚く
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投資は長期・分散・低コストを崩さない(利上げ局面でも慌てて売買しない)
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「金利が上がるから株は終わり」と決めつけない。株価は金利だけで動かない
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レバレッジや信用取引に逃げない。金利が上がる局面ほど破綻が早い
私自身も、家計支出が上がった影響で積立額を減らした時期があります。それでも「ゼロにしない」「市場から退場しない」を優先して、細く長く続けています。利上げ局面ほど、派手な一発逆転より、生活と投資を両立して続ける方が強いと思うからです。
ちなみに賃貸派にも無関係ではありません。金利上昇は大家側の借入コストに影響し、更新時の家賃交渉が厳しくなる可能性もあります。私も、更新のたびに「上がるなら引っ越すか?」を家族会議するようになりました。金利は、回り回って生活費に入ってきます。
まとめ:利上げは“家計の立ち位置”で勝ち負けが分かれる
日銀は2025年12月に短期金利の誘導目標を0.75%程度へ引き上げました。預金金利が上がる一方で、変動型の借入コストは上がりやすい。これが利上げの基本構図です。
得する人は「現金・預金が多い」「これから債券を買う」「金利上昇が追い風の立ち位置にいる」人。損する人は「変動金利の住宅ローン」「新規借入」「高金利借入」「長期債を厚く持つ」人です。
大事なのは、ニュースに反応して投資方針をコロコロ変えないこと。家計の固定費と借入条件を点検しつつ、長期投資は淡々と続ける。50代の私にとっては、それがいちばん再現性の高い“逃げ切り”だと思っています。
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