50代の投資って、つい「守り」に寄せたくなります。私自身も、賃貸暮らしで住宅ローンはなく、家計の大きな固定費は家賃。妻はパート勤務、子どもは高校3年と中学2年。教育費のピークを踏んでいる今、レバレッジ商品で一発逆転を狙う気持ちは…正直わかるけど、私はやりません。
そんな中、投資信託の買付金額ランキング(50代・月間)で「楽天日本株4.3倍ブル」が上位に入っているのを見て、私も驚きました。1位2位がオルカンやS&P500のような王道なのは納得。でも3位に“4.3倍”が来るのは、なかなか強いメッセージです。
この記事では、なぜ50代がレバ投信に惹かれるのか、そして「買うならどう扱うべきか/買わないなら何を代替にするか」を、同じ50代の目線で整理します。
そのランキング、どう読めばいい?(買付金額の“落とし穴”)
今回の画面は「全銘柄ランキング(買付金額)」です。ここは“人気投票”というより、“どこにお金が集まったか”の集計に近いんですよね。
例えば、毎月1万円積み立てる人が1万人いても、月1回100万円入れる人が100人いれば、買付金額では後者が強く出ます。
だから私は、この手のランキングを見るときは「多数派の投資行動」ではなく「その月に勝負したい人が多かったんだな」と解釈します。
それでも50代でレバが上位に来るのは、次のような背景もありそうです。
-
退職金やボーナスなど、まとまった資金が動くタイミングと重なる
-
相場のトレンドが明確なとき(上昇相場の“追い風”)に資金が集まりやすい
-
SNSや動画で「レバで稼いだ」話が拡散しやすい(生存者バイアス)
ここで注意したいのは、“勝った話”は見えるけど、“負けた話”は静かに消えること。50代の投資は、この見え方の偏りに引っ張られないのが大事だと思います。
50代のランキングに「4.3倍ブル」が入る理由
まず前提として、「50代=みんな守り」ではありません。むしろ50代は、資産形成の“終盤戦”に入るからこそ、焦りが強くなる世代だと思います。
理由1:日本株上昇のストーリーが分かりやすい
米国株インデックスは「世界経済の成長に乗る」という話ですが、日本株はもっと身近です。日経平均がニュースで毎日流れ、円安・企業改革・賃上げなど材料も多い。上がりそうに見える局面では「じゃあ倍率をかけたら最短で増える」と考えたくなる。
理由2:買付金額ランキングは“積立”より“勝負”が反映される
ランキングは、毎月コツコツ積立よりも、短期で大きく入れる“勝負資金”が目立ちます。つまり「50代の多くが長期で4.3倍を握っている」ではなく、「一部の人が大きな金額を突っ込んでいる」可能性も高い。体感としても、こういう商品は“投資”より“トレード”寄りです。
理由3:退職が近づくほど、損失より“機会損失”が怖くなる
相場が上がると、「乗れていない自分」が一番焦ります。私はここで何度も無理をして、結果的に遠回りした側なので言えるのですが、50代の最大の敵は“焦り”です。
「楽天日本株4.3倍ブル」は何が危ないのか
この商品は、先物取引を使って「日々の値動きが概ね4.3倍」になることを目指すファンドです。つまり“日次”がキモ。長期で指数の4.3倍になる商品ではありません。
1)手数料が高い(しかもNISA対象外)
運用管理費用(信託報酬)は年1.243%(税込)と高めです。さらに目論見書を見ると購入時手数料が最大3.3%(税込)と書かれており、売買の入り口でもコストがかかり得ます。
そして重要なのが、当ファンドはNISAの対象ではありません。50代こそ新NISAで非課税枠を大切にしたいのに、そこが使えない。
さらにNISA対象外なので、仮にうまく利益が出ても課税口座では税金がかかります。短期売買で回転させるほど税コストも積み上がるので、「当たればOK」で済まないのが現実です。
2)“逓減(減価)”が起きやすい(ボラがあるほど不利)
レバレッジ型は、上下を繰り返すだけで価値が目減りしやすい構造があります。金融庁が示した説明としても「2日以上の期間では、変動率が2倍とならず、中長期的に価値が逓減する可能性が高いので長期保有に不向き」という指摘があります。
大和アセットの解説でも、原指数が上下を繰り返すとレバ指数は基準値に戻りにくい(減価しやすい)点が図解されています。
具体例で一度だけ確認します(数字はイメージです)。
指数が「+10% → -10%」と動くと、元の指数は 100 → 110 → 99 で、結果は-1%です。
一方で2倍レバなら 100 → 120 → 96 となり、-4%になります。倍率が大きいほど、この“目減り”が加速します。
4.3倍ともなると、日々の上下が続いたときに「指数は横ばいなのに、レバだけ削れていく」展開が現実に起きます。
そして、こういう商品は値動きが荒いぶん「握っていればそのうち戻る」が通用しにくい。下げたときに追い証があるわけではありませんが(投信なので)、精神的には追い込まれます。結果として、最悪のタイミングで投げやすい。私はこの“行動のミス”が一番怖いです。
3)損失のスピードが速い(4.3倍は“取り返しにくい”)
例えば日経平均が-5%動けば、理屈上は-20%超の世界です(実際は日々の倍率調整や先物運用でズレますが、方向性として)。ここで怖いのは「下落の後の回復」が想像以上に大変なこと。
-20%の損失を取り戻すには+25%が必要です。-50%なら+100%。50代でこの振れに耐えるのは、精神的にも家計的にもきつい。
それでも「日本株は上がる」と思うなら、私ならこうする
私も日本株に強気な時期はあります。でも、だからといって4.3倍を買う必要はありません。50代の現実に合わせるなら、選択肢はもっとあります。
選択肢A:コアは低コストの世界株(オルカン等)で固定する
これは王道ですが強いです。値動きの主役を「低コスト・分散」に置く。私の基本姿勢はここで、コアが安定していると“攻めたい欲”が減ります。
選択肢B:日本株に張るなら「倍率を上げない」形で取る
日本株を取りたいなら、レバレッジではなく通常のTOPIX/日経平均インデックス、または広く分散された日本株ファンドで十分。手数料も一般に低く、NISA枠にも入れられます(商品によります)。
「当たればデカい」より「外れても致命傷にならない」を優先した方が、50代は結果的に生き残ります。
選択肢C:どうしても買うなら“ルール付きの遊び枠”にする
もし買うなら、私は次の条件がないと手を出しません。
-
生活防衛資金と教育費を別枠で確保した上で
-
資産のごく一部(例:1〜3%)だけ
-
期限を決める(例:数日〜数週間)
-
損切りラインを事前に決める(感情で握らない)
ここまで縛って、ようやく「投資」ではなく「娯楽としてのトレード」に近い位置づけになります。
50代の“守り方”チェック:新NISAの非課税枠を守れているか
最後に、私が自分にいつも言い聞かせているチェックです。これが崩れていると、レバ商品に限らず危険信号だと思っています。
-
新NISAの枠は「長期・分散・低コスト」の商品で埋めているか
-
相場が上がっても、家計(家賃・教育費・生活費)が破綻しない設計か
-
下落時に売らないための“現金クッション”があるか
-
「取り返したい」気持ちが運用判断を支配していないか
50代は、若い頃のように時間が味方をしてくれません。だからこそ、勝負を減らして、勝ち残る確率を上げる。私はこの方が、老後の安心に直結すると感じています。
日本株が上がるかどうかは、誰にも断言できません。でも「上がると思うからこそ、負け方を考える」。この姿勢だけは、50代の投資で裏切らないと思います。
にほんブログ村に参加してます。クリックして頂くと有り難いです。


