投資

なぜ投資しても資産1,000万円を超えられないのか

「投資を始めたのに、なかなかお金持ちになった実感がない」。50代の私のまわりでも、そんな声をよく聞きます。実際、日本全体で見ても、投資をしている人が増えている割には、資産1,000万円を超えられない世帯が多いのが現実です。

日本証券業協会の調査では、個人投資家のうち金融資産1,000万円未満が約6割とされています。金融資産の平均額は約1,500万円あるのに、多くの人はその「平均」に届いていません。

私自身、総資産は7,000万円台まで積み上がりましたが、賃貸暮らしの50代サラリーマンとして、決して「悠々自適のお金持ち」とは思っていません。むしろ、教育費や物価高を考えると、「気を抜けばすぐに逆戻りするな」と感じることの方が多いくらいです。

では、なぜ投資をしても、多くの人がお金持ちになれないのか。その背景には、個人の努力だけではどうにもならない「構造的な問題」と、私たちの行動パターンの両方があります。この記事では、50代サラリーマンの立場から、その理由と対策を整理してみます。

平均値だけ見ても現実は見えない

まず押さえておきたいのが、「平均値」と「中央値」の違いです。家計調査や世論調査のデータを見ると、金融資産の平均値は1,500万〜2,000万円前後とされていますが、同じ調査で示される中央値は700万〜1,100万円程度にとどまっています。

平均値は、一部の高資産世帯が数字を押し上げてしまうため、「みんな結構持っているように見える」数字です。一方、中央値は、真ん中の世帯の水準なので、こちらの方が多くの人の肌感覚に近い指標だと言えます。

実際、単身世帯の調査では、「金融資産の平均値は900万円台だが、8割弱の世帯はその平均より少ない」という結果も出ています。「平均=ふつうの家庭」ではない、ということをまず理解しておきたいところです。

つまり、「日本人の平均貯蓄は2,000万円だから、自分はまだまだだ」と落ち込む必要はありません。むしろ、多くの人は平均よりずっと少ない資産で暮らしているのが現実であり、そこにこそ構造的な問題が隠れています。

投資をしてもお金持ちになれない“構造的な”理由

① そもそもの手取りが伸びない

最も大きいのは、私たちサラリーマンの「手取りが増えにくい」構造です。物価や社会保険料がじわじわ上がる一方で、給料は思ったほど伸びない。50代で役職なしの私のような立場だと、残業規制の影響もあり、むしろ手取りが減ったという人もいるはずです。

手取りが伸びなければ、投資に回せるお金も増えません。毎月1万円の積立と、毎月5万円の積立では、20年後の差は「投資のセンス」ではなく「入金力」の差として、残酷なほどはっきり現れます。

② 教育費と生活費で“余力”が削られる

私のように高校生と中学生の子どもがいる世帯では、教育費の負担が家計を直撃します。塾代、模試代、受験費用に加えて、将来の大学進学を考えれば、毎月の貯金・投資に回せる額はどうしても限られてしまいます。

加えて、食費や光熱費の値上げ、スマホやサブスクなどの固定費もじわじわ増えています。「投資をしよう」と思っても、気がつけば生活費で消えてしまい、積立額を増やせない――その結果、資産1,000万円の壁を越えられない人が多くなるのは、ある意味当然です。

③ 投資額よりも“借金”が大きい世帯も多い

統計を見ると、二人以上世帯の2023年の貯蓄現在高(平均)は約1,900万円ですが、負債現在高(平均)は約650万円、負債保有世帯の中央値は1,400万円を超えています。総務省統計局

住宅ローンなどの負債を多く抱えていると、金融資産が1,000万円を超えていても、実質的な「純資産」はそれほど多くありません。投資で増えた分が、ローン返済や金利に吸い取られてしまう構図です。

私自身は賃貸暮らしなので住宅ローンはありませんが、その分、老後も家賃を払い続ける必要があります。どちらを選んでも、「完全にリスクゼロ」はありえず、投資だけで一気にお金持ちになるのが難しい理由がここにあります。

④ 投資が“ギャンブル化”してしまう

もうひとつの構造的な問題は、投資が「長期・分散」ではなく「短期売買」になりがちな点です。SNSでは、短期間で何十万円、何百万円と儲かった話がバズりやすく、それを見た人が高値掴み・狼狽売りを繰り返してしまう。

本来なら、インデックスファンドなどでコツコツ積み立てていけば、20年・30年というスパンで資産が増えていく可能性は高まります。しかし、途中で相場急落に耐えられず、安値で売ってしまえば、せっかくの複利効果も台無しです。

「投資をしているのに増えない」という人の中には、投資そのものよりも、「売買タイミングのミス」で成果を消してしまっているケースも少なくありません。

50代サラリーマンの現実:投資だけでは“逃げ切れない”

私も20年近く投資を続けてきて、総資産はなんとか7,000万円台に届きました。ただ、それでも「いつでも会社を辞められるお金持ち」とは到底言えません。

・子ども2人の教育費(大学まで考えると数千万円規模)
・老後の生活費(夫婦2人で月20〜25万円程度×30年と仮定すると7,000万円超)
・賃貸ならではの家賃負担(高齢になっても毎月支払いが続く)

こうした将来の支出を考えると、「投資で増えた分のかなりの部分は、すでに使い道が決まっている」という感覚に近いのです。ですから、投資を始めたからといって、急に生活レベルを上げてしまうのは危険です。

投資でお金持ちになれない最大の理由は、「構造的な制約がある中で、投資に回せるお金そのものが少ない」こと。そしてもうひとつは、「増えたお金のほとんどが、将来の必要支出として埋まっている」ことです。

それでも投資を続ける意味はどこにあるのか

ここまで読むと、「それなら投資なんてしても意味がないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、私はそれでも投資を続けるべきだと考えています。理由はシンプルで、「投資をしない場合の未来」は、もっと厳しいからです。

① 投資の目的は“お金持ち”ではなく“詰まない未来”

私が新NISAでインデックス投資を続けている理由は、「FIREをして豪華な生活をしたい」からではありません。「老後に詰まないようにするため」の保険のような意味合いが大きいのです。

公的年金だけでは、物価上昇や想定外の出費に対応しきれない可能性が高い。そのとき、月数万円でも配当や取り崩しで補える資産があるかどうかで、精神的な余裕はまったく違ってきます。

② “構造”は変えられなくても、自分の行動は変えられる

賃金水準や税・社会保険の仕組み、教育費の高さといった構造的な問題を、個人の力で変えることはできません。でも、自分の行動を変えることはできます。

・生活レベルをできるだけ上げない(昇給しても固定費を増やしすぎない)
・保険やサブスクなどの「なんとなく払っている」支出を見直す
・新NISAの枠内で、長期・分散・低コストの商品に淡々と積立する
・レバレッジや信用取引には手を出さない

このあたりは、私自身が50代になってから強く意識しているポイントです。華やかな一発逆転ではなく、「地味だけれど再現性の高い方法」を続けることが、結果的に一番の近道だと感じています。

③ “お金持ち”より“安心して暮らせるライン”を目指す

最後に、目標設定の話をしておきます。投資の世界では「1億円」という数字がよく出てきますが、50代・役職なしサラリーマンにとっては、かなりハードルの高いラインです。

私自身は、「総資産7,000万〜8,000万円台で、なんとか老後の生活を維持する」という現実的なゴールをイメージしています。そこまで到達できれば、贅沢はできなくても、「とりあえず生活が破綻することはなさそうだ」と思えるからです。

投資をしてもお金持ちになれない人が多いのは、個々人の努力不足ではなく、社会全体の構造やライフイベントの負担が重いから。それでも、その中で「自分なりの逃げ切りライン」を見つけ、コツコツと積み上げていくことこそ、50代からの現実的な戦い方ではないでしょうか。

投資で一気に人生を変えるのではなく、投資を味方につけて「詰まない人生」を目指す。その視点さえ持てれば、資産1,000万円未満の現状でも、今日からできることは必ず見つかります。

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