首都圏の平均貯蓄が3,000万円――。この数字を見たとき、50代サラリーマンの私も「みんなこんなに持っているのか」と不安になった瞬間があります。冷静に考えれば、私の総資産は7,000万円台ですから平均の倍以上です。それでも焦りを感じてしまったのは、“平均”という言葉が私たちの心理に強く作用するからです。平均値は一見わかりやすい指標ですが、資産分布のようにバラつきの大きい数字を語るときには、必ず誤解が生まれます。この記事では、平均貯蓄3,000万円という数字のカラクリを「中央値」と「階層差」という観点から解説し、私自身の家計の実感も交えながら、首都圏で生きる50代サラリーマンにとって本当に参考にすべき指標を整理します。
1|平均3,000万円の“罠”──一部の層が数字を押し上げる
平均貯蓄3,000万円という数字は、多くの人に「自分は全く足りないのでは」と焦りを生じさせます。しかしこの平均値は、ほんの一部の高資産層が押し上げている数字にすぎません。首都圏には1億円以上の金融資産を持つ家庭が一定数存在し、統計を引っ張る役割を果たしています。資産額はそもそも二極化しやすい領域であり、その性質上、平均値が“実態の真ん中”を表すことはほとんどありません。特に、東京・神奈川・千葉・埼玉のような都市圏では、高所得・高資産の人が自然と集中します。結果として、平均値だけを見ると「みんな相当持っている」という錯覚が起こります。私自身も、資産7,000万円台であっても「平均の水準がもっと上なのでは」と思い込んだ瞬間がありました。しかしこれは、数字の性質を理解していないがゆえの典型的な誤解でした。
2|本当の“真ん中”は1,000万円台──中央値を見ると景色が変わる
平均値が役に立たない理由は、中央値を見ると一目瞭然です。中央値とは「すべての世帯を並べたときのど真ん中の数値」。資産の現実を捉えるうえでは平均よりもはるかに重要です。首都圏の場合、金融資産の中央値は1,000万円台にとどまることが多く、平均3,000万円という数字とはまったく別の景色が見えてきます。つまり、3,000万円という平均は「一般家庭の実態」ではなく「上位層の存在を反映した数字」にすぎないのです。私の周りの50代サラリーマン家庭でも、子どもの教育費がピークを迎える時期は貯蓄の伸びが止まる家庭が多く、資産1,000万〜2,000万円程度という人も少なくありません。これが本当の“真ん中”の姿です。平均値を見て落ち込む必要がないどころか、そもそも比べる指標として適切ではないのです。
3|野村総研の階層分類でわかる“二極化”──準富裕層が平均を押し上げる
野村総研(NRI)の資産階層分類は、平均値の誤解を解くうえで非常に役立ちます。準富裕層(金融資産5,000万〜1億円)や富裕層(1億〜5億円)が都市部には一定数存在し、彼らが統計全体の数字を大きく引き上げています。この階層に属する家庭は、教育費や物価の上昇に対してある程度の余裕を持って対処できます。一方で、中央値付近の家庭は、給与の伸び悩み・教育費・物価高・税負担という“四重苦”に直面し、貯める余力がそもそも限られています。私自身の総資産は7,000万円台で、野村総研の分類では準富裕層に入ります。しかし首都圏で生活する実感としては、「余裕」という感覚よりも「いつ赤字に転落してもおかしくない」という緊張感が強いのが本音です。階層差によって見える景色はまったく異なり、同じ首都圏でも暮らしの実態は大きく分かれています。
4|首都圏で貯められないのは“努力不足”ではなく“構造”の問題
平均3,000万円という数字だけを見ると「自分は努力が足りないのでは」と思ってしまいがちです。しかし首都圏で貯蓄ペースが上がらない理由は、個人の努力の問題ではなく、構造的な要因が大きいのです。まず、住居費や食費といった基本的な生活コストが地方より高いこと。賃貸暮らしの我が家でも、物価高の影響で生活費は年々上がり続けています。さらに、50代は手取りが伸びない一方で、子どもの教育費は高校から大学へとピークに向かいます。実際、我が家も2024年からつみたてNISAの積立額を33,333円から13,000円へと減額せざるを得ませんでした。これは家計の余力が減ったからであり、決して怠けたわけではありません。加えて、社会保険料や税負担の増加が家計を圧迫します。こうした“構造”が、首都圏の家庭の貯蓄力を下げているのです。
5|比べるべきは“平均”ではなく“自分の支出構造”──老後不安を減らす視点
では、私たちが本当に見るべき指標は何か。私の結論は、「平均」でも「中央値」でもなく、家計の現実に基づく“必要支出額”です。老後資金の安心度は、資産額そのものよりも、生活費・住居費(我が家は賃貸前提)・税金・保険・教育費といった日々のキャッシュフローで決まります。新NISAを活用しながら「長期・分散・低コスト」に則った投資を続けるだけで、50代からでも老後の備えは十分可能です。無理なレバレッジを使わず、淡々と積み立てるスタイルは地味ですが、再現性が高く、心理的にも安定します。平均値に振り回されないこと。これが、長く安定した資産形成を続けるための最重要ポイントだと、私は17年間の投資経験から確信しています。
6|まとめ──数字の読み方を変えれば、老後不安の半分は消える
平均3,000万円という数字は、首都圏の一般家庭にとって現実的な指標ではありません。中央値が1,000万円台であることを踏まえれば、「自分は貯められていない」という不安の多くは誤解だとわかります。首都圏で貯まりにくいのは環境要因が大きく、個人の努力ではどうにもならない部分も多いのです。重要なのは、他人の数字ではなく、自分の家計構造と将来の支出を基準に「逃げ切れるかどうか」を判断すること。数字の読み方を少し変えるだけで、老後への不安は大きく軽減されます。これからも私自身の実体験をもとに、同じ50代の方々に向けて、現実的で続けられる資産形成のヒントを発信していきたいと思います。
にほんブログ村に参加してます。クリックして頂くと有り難いです。

