最近、ひそかに話題になっている制度改正の検討があります。
それは「金融所得にも社会保険料を課すべきではないか?」という議論。
この話、投資で資産形成している人にとっては他人事ではありません。
特に、真面目に働き、コツコツと投資してきた日本人投資家にとっては、不利になる可能性すらあります。
この記事では、この議論の背景や制度の中身、そしてなぜ「日本人だけが損をする構造」になってしまうのかを、できるだけ分かりやすく整理してみたいと思います。
金融所得に社会保険料?制度の中身とは
現在の社会保険制度では、社会保険料は主に「労働から得た収入(給与や賞与)」に対して課されます。
一方、株式の配当や売却益などの「金融所得」には社会保険料はかかりません。
しかし今後、この枠組みに「金融所得」も加えようという議論が出てきています。背景には次のような課題があります。
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少子高齢化によって社会保険制度が財政的に厳しい
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富裕層ほど労働よりも資産運用によって所得を得ている
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税負担の公平性(垂直的公平)を重視する声が高まっている
つまり、「働いてもらう人だけが保険料を払っているのは不公平だ。投資で儲けている人にも払ってもらおう」という論調なのです。
一見、もっともらしい主張にも思えますが、実はここに大きな落とし穴があります。
なぜ「日本人投資家だけが損をする」構造になるのか?
この制度改正がもし実現した場合、社会保険料の負担対象となるのは、基本的に日本に居住している人です。
ここで、重要なポイントがあります。
外国人投資家、特に海外在住の非居住者は、日本株でどれだけ利益を出しても、日本の社会保険制度の外にいるため保険料を負担する必要がありません。
つまり、制度が変わったとしても、海外の大口投資家やヘッジファンド、機関投資家は影響ゼロ。一方、日本で暮らし、投資を頑張ってきた個人投資家だけが、税金に加えて社会保険料まで課されることになります。
この構造、どう考えてもアンフェアですよね。
真面目に資産形成してきた人が割を食う
日本ではここ数年、NISAやiDeCoといった税制優遇制度が整備され、ようやく「貯蓄から投資へ」という流れが根づき始めました。
50代・60代の人の中にも、老後資金を見据えてNISAを活用し、積立投資を始めたという人は少なくないと思います。
しかし、そんな努力の果てに、「金融所得にも社会保険料を課します」と言われたら、どう感じるでしょうか?
しかも、社会保険料は定率(例:10%〜15%)でかかるうえ、控除枠が少なく、取りやすい税金です。ある意味、所得税や住民税よりも“重い”負担になる可能性があります。
結果として、働いて得た給与 → 課税
そのお金で投資 → 配当・売却益にも課税・保険料
さらに、将来の年金にも保険料
と、どこを通っても“取られる”構造に。
このままでは、「真面目に働き、コツコツ投資してきた人」ほど、損をする世の中になってしまうかもしれません。
今後に備えてできることはあるのか?
現時点では、金融所得への社会保険料導入は「検討段階」であり、すぐに実施されるわけではありません。
ただし、すでに一部の報告書では明記され始めており、今後の制度改正に向けた“地ならし”が進んでいるのは確かです。
では、私たちができることは何でしょうか。
制度の動向にアンテナを立てる
報道や政府の審議会資料に注意を払い、情報をキャッチアップすることが第一歩です。
税制優遇制度を有効に使う
NISA(特に成長投資枠)やiDeCoなど、現行制度で非課税になる制度はフル活用したいところです。今後、保険料対象外に残る可能性もゼロではありません。
可能な範囲で分散・防衛を考える
証券口座の分散や資産の種類・場所の分散も、長期的にはリスク管理の一環として考えておくとよいかもしれません。
まとめ:制度リスクにも備える時代に
かつて投資は「リスク資産」としてマーケットの上下に注意すればよかった時代がありました。
しかし今は、“制度リスク”こそが最大の敵になる時代に突入しつつあります。
社会保険料という視点で見れば、日本に住んで働き、納税し、投資で資産形成をしている人が、最も重い負担を背負う可能性があります。
これでは、努力する人ほど損をする仕組みです。
「制度はいつまでも同じではない」。
投資だけでなく、その“周辺”にも目を向けることが、これからの資産形成には求められているのかもしれません。
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