「今の億り人に価値はない?人が増え過ぎたから」——最近こういう声をよく見ます。結論から言うと、称号としての“レア感”は薄まった一方で、生活を守る力としての価値はまだ大きい。私は50代の平社員、家は賃貸。妻はパートで、子どもは高校3年と中学2年。FIREよりも「老後の安心」を優先して、長期・分散・低コスト、新NISA中心で淡々と積み上げてきました。資産が8,000万円台まで来ても不安が消えないのは、まさに「億=上がり」ではなくなったからです。
億り人は本当に増えたのか?まずは数字
「増えた気がする」はSNSの錯覚も混じりますが、統計ベースでも増えています。野村総研の推計では、純金融資産1億円以上5億円未満の富裕層と、5億円以上の超富裕層を合わせて2023年は165.3万世帯。さらに5,000万円以上1億円未満の準富裕層は403.9万世帯とされています。つまり“億の手前”まで含めると、周りにそれっぽい人がいても不思議ではない規模です。
もちろん、これは「投資で一発当てた人」だけの数字ではありません。相場の上昇、退職金、相続、共働き世帯の増加など、いくつもの要因が重なって“いつの間にか富裕層”が生まれた、と野村総研も指摘しています。
「億り人に価値がない」と感じる3つの理由
1) インフレで1億円の体感価値が目減りする
ここ数年、食料品も光熱費も上がり、家計の固定費にじわじわ効いています。総務省の消費者物価指数(CPI)は毎月公表されていて、ニュースでも「前年比プラス◯%」が当たり前になりました。物価が上がるほど、同じ1億円でも買えるものが減る。これが「昔ほどすごく見えない」最大の理由です。
2) SNSで“億り人”が可視化され過ぎた
昔は職場や近所で資産の話なんてしません。いまはSNSで資産推移が流れ、億に届いた報告も日常的に目に入ります。母数が増えたうえに、見える場所に集まっているから、「そこら中にいる」ように感じる。これは体感のバイアスです。
3) 投資環境が整い、再現性が上がった
新NISAの登場で、長期の積立・分散をやりやすい土台ができました。年間投資枠はつみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円で合計360万円、生涯の非課税保有限度額は1,800万円(簿価)という枠組みです。制度が整えば、真面目に続けた人が増えるのは自然です。
それでも「1億円」が効くのは、見栄じゃなく“耐久力”
「価値がない」と言い切ってしまうのは、少しもったいない。私が8,000万円台で感じるのは、派手さではなく“折れにくさ”が増えることです。
暴落時に「売らずに耐える」確率が上がる
投資で一番つらいのは、暴落そのものより「生活費が足りなくて売る」こと。1億円近い金融資産があると、現金や生活防衛費を厚めにでき、取り崩しのタイミングを先延ばししやすい。これは精神的にも大きいです。
教育費・車・家電など大きな出費で家計が崩れにくい
子どもがいる家庭は、まとまった支出が重なります。高校〜大学のタイミングは特に読めない。ここで投資資産を崩してしまうと、回復に時間がかかる。資産が厚いと「急所を守れる」感覚があります。
働き方の選択肢が増える
FIREを目指さなくても、残業を減らす、異動で無理をしない、転職を検討する、という選択が現実味を帯びます。役職なしの平社員でも、メンタルを削らずに働き続ける工夫ができる。これも立派な価値です。
そもそも「億り人」って何者?言葉のズレに注意
「億り人」は、きっちり法律で定義された区分ではなく、ネット発の俗称です。ざっくり言えば「金融資産が1億円に到達した人」を指して使われますが、含まれるものは人によってバラバラ。投資信託や株式の評価額だけを言う人もいれば、現金や退職金、相続分まで含めて“総資産”で語る人もいます。まずここが曖昧なので、「あの人は億り人らしい」と聞いても、実態はピンキリです。
私はこのズレが、モヤモヤの原因だと思っています。たとえば、相場が上がった年に評価額が増えると、まるで自分の実力で増やしたような錯覚が起きます。でも実際は、入金額(自分が積み上げた分)と、相場要因(運に近い分)が混ざっている。数字が大きくなるほど、この錯覚は強くなります。
億り人ブームの裏側:一発狙いがいちばん危ない
「増え過ぎたから価値がない」という言い方の裏には、もう一つの感情があります。SNSで見える“派手な勝ち方”への反発です。
レバレッジで増やした資産は、逆回転も速い
FXや暗号資産、個別株の集中投資で短期に跳ねた人は確かに目立ちます。ただ、短期で大きく増える方法は、短期で大きく減る方法でもあります。私は信用取引やレバレッジはしない派です。理由はシンプルで、家計が耐えられないから。増えた瞬間の快感より、減ったときのダメージの方が長く残ります。
50代は「増やす」より「減らさない」が優先になる
20代・30代なら失敗を取り返す時間があります。でも50代は、教育費や親の介護など“人生のイベント費”が同時多発しやすい。さらに、取り崩しが視野に入る年代です。ここで一発狙いをすると、取り返しのつかない傷になりやすい。だから私は、地味でも再現性の高い積立・分散に寄せています。金融庁の資料でも、積立・分散を長期で続ける意義が整理されています。
50代が「億」を目指す前にやるべき5つ(チェックリスト)
最後に、私が自分に言い聞かせている“現実的な順番”を置いておきます。億り人という言葉に振り回されないための、土台づくりです。
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生活防衛費を先に確保する
投資は余剰資金で。これが崩れると、暴落時に売ってしまいがちです。 -
固定費を点検して、積立を続けられる形にする
私は家計が重くなったタイミングで、積立額を月3万円台から1万円台に落としたことがあります。金額よりも「続く設計」が勝ちです。 -
新NISAの枠は“満額前提”にしない
年間360万円、生涯1,800万円という枠は立派ですが、無理をして生活が壊れたら本末転倒。自分のペースで十分です。 -
資産配分はシンプルにして、迷う回数を減らす
商品を増やすほど判断が増えます。私は低コストのインデックス中心で、追加の意思決定を減らしています。 -
「取り崩し」を早めに練習する
資産形成は“貯める”だけでは完結しません。定年前後は、順序リスクも含めて、いくら・どの順番で取り崩すかが勝負になります。毎年の支出を把握し、生活費倍率で見通しを立てる。これが、称号よりも役に立ちます。
まとめ:億の価値は「自慢」から「防衛」へ
億り人が増えたことで、称号としての価値(レア感)は確かに薄まりました。インフレで体感価値も目減りし、SNSで可視化されて「普通」に見える。けれど、1億円がもたらすのは見栄ではなく、暴落や大きな出費に耐える“家計の耐久力”です。
私自身、8,000万円台でも安心しきれません。でも、不安の正体を「数字」と「設計」で潰していけば、必要以上に焦らずに済みます。新NISAで長期・分散・低コストを続けつつ、生活費倍率・現金比率・固定費をKPIにして、静かに逃げ切りに近づいていきましょう。
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