住宅・不動産

不動産は購入すべきか、それとも賃貸でよいのか?|経済的合理性と人生設計から考える

「家は買うべきか、それとも賃貸でよいのか?」 この問いは、多くの人が人生のどこかで向き合うテーマです。

20代・30代で家を購入する人もいれば、賃貸を選び続ける人もいます。結婚・出産・子育て・転勤など、ライフイベントのたびに住まいの在り方を再考する機会は増えていきます。

本記事では、「どちらが得か?」という表面的な議論ではなく、経済合理性と人生の選択として「持ち家 vs 賃貸」を捉え直します。家族持ちの50代サラリーマンである筆者の視点から、実体験を交えて丁寧に検証していきます。

不動産を「自分に貸す」資産と考える

たとえば、あなたが3,000万円で不動産を購入し、年間150万円で他人に貸したとします。利回り5%の不動産投資です。

しかし、自分が別の場所に住んで年間150万円の家賃を払っていれば、それは単なる「家賃の横流し」に過ぎません。ならば、自分で購入した不動産に自分で住めば、その150万円の支出は消えます。言い換えると、「自分に不動産を貸す」ような形です。

ここで注目すべきは、家という資産に3,000万円を投下するか、それともその資金を株式など他の投資に回し、家賃はそこから得た運用益で払うか、という選択です。

どちらも資産の使い方であり、損得というより「資産を不動産に変えるのか、それとも流動性を確保するのか」の違いです。

「最後は自分のものになる」は本当か?

家を買うメリットとしてよく挙げられるのが「最終的には自分の資産になる」という点です。しかし、これは不動産会社の常套句でもあります。

35年ローンで購入した場合、35年後の建物は築古物件。資産価値は大きく下がっており、修繕やメンテナンスにコストもかかります。

仮に家を買って他人に貸し、自分は賃貸に住んでいたら? 確かに不動産は手元に残りますが、賃料を横流ししていれば差し引きの資産効果は限定的です。

つまり、「所有することの安心感」は確かにありますが、それが即ち“経済的得”であるとは限らないのです。

賃貸に住み続けるという選択

一方で、賃貸に住み続けるというのはどうでしょうか? 仮に3,000万円の資金を株式などで年利5%運用し、そこから生まれる150万円で家賃を払っていた場合、手元には3,000万円の資産が残ります。

この選択肢では、居住の自由度が高く、ライフスタイルに応じた住み替えも可能です。50代以降になると、子どもの独立や親の介護、転職や退職といった変化が多くなるため、柔軟な住まいは心理的にも経済的にも利点があります。

ただし、高齢になると賃貸物件の選択肢が狭まるという懸念もあります。この点は、以下の対策である程度カバーできます:

  • 賃貸契約時に資産証明や連帯保証人を用意する
  • 高齢者歓迎の物件(UR賃貸・サ高住など)を選ぶ
  • 老後に向けて家賃相当額を長期で確保する

ライフスタイルの固定と不動産購入の相性

転勤の可能性がなく、自分の好きな街に長く住み続ける意思があるなら、不動産購入も合理的な選択肢です。

家族構成や生活スタイルが固定化し、教育や介護の見通しも立っている状態なら、住宅購入によって生活の安定感が得られます。

ただし、気をつけたいのは以下のようなリスク:

  • 周辺環境の変化(嫌悪施設、治安悪化など)
  • ご近所トラブル
  • 不動産価格の下落リスク

これらの要素は、いざという時に「すぐに売って引っ越せない」住宅購入の弱点につながります。

不動産投資は「不労所得」ではない

最近では、サラリーマンが副業として不動産賃貸業を始めるケースも増えています。しかし、これは簡単な話ではありません。

まず、住宅ローンは「自分が住む家」に適用される制度であり、投資目的の不動産には使えません。居住用と偽って住宅ローンを使うと、銀行から一括返済を求められることがあります。

また、築年数とともに家賃相場は下がり、空室リスクも増します。退去時の原状回復費用、修繕、設備更新、入居者対応など、実際には「不労」とは程遠い業務が発生します。

不動産業界のプロと同じ土俵で戦うのは容易ではありません。特に、空室率が上がり続ける将来においては、なおさらです。

結論|「住まい」は手段、人生の目的が主役

家を買うべきか?賃貸でいいのか?その問いに絶対的な正解はありません。

本質的な問いは、

「自分はこれからどんな暮らしをしたいのか?」

という人生設計そのものです。

家を「資産」として捉えるのか、「安心の場」として捉えるのか。 どちらの視点も間違っていませんが、リスク・流動性・将来設計を総合的に考える必要があります。

筆者自身は、賃貸生活の中で資産運用を続け、流動性を保ちつつ家族との生活を柔軟に設計してきました。これは一つの選択肢に過ぎません。

重要なのは、誰かにとっての「正解」を鵜呑みにするのではなく、自分の人生にとっての「納得解」を見つけることです。

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