投資家の中央値は約308万円|平均1,048万とのギャップで分かる統計の罠
新NISAが始まってから、「投資している人って本当に増えたの?」「みんな何をどれくらい持ってるの?」が気になって、統計を眺める人が増えました。
でも、ここでつまずきやすいのが“同じ言葉なのに数字が違って見える問題”です。たとえば株式保有率。ある資料では14.1%、別の資料では72.8%。ぱっと見ると「どっちが正しいの?」となりますが、結論はシンプルです。
分母(母集団)が違うだけ。この一点を押さえると、数字がスッと整理できます。
14.1%と72.8%が両立する「分母」の話
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14.1%:全国の18歳以上(成人全体)のうち、株式を持っている人の割合
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72.8%:有価証券を持っている人“だけ”のうち、株式も持っている人の割合
前者は「日本の成人全体」を相手にした数字。後者は「投資している層(有価証券保有者)」を相手にした数字です。
分母が大きく変わるので、割合も大きく変わって当然。矛盾ではありません。
私も最初は平均値だけ見て焦りましたが、こういう“分母のズレ”を理解すると、統計の見え方がだいぶ楽になります。
成人全体で見た「有価証券保有率」と内訳(全国調査・2024年度)
日本証券業協会の「証券投資に関する全国調査(2024年度)」は、全国の18歳以上7,000人を対象にしています。ここでのポイントは「投資していない人も含む」こと。
公表されている主な数字は次の通りです。
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有価証券保有率:24.1%
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株式:14.1%
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投資信託:12.6%
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公社債:2.3%
ここで注意したいのは、株式14.1%と投信12.6%は重複ありという点です。
「株式も投信も持っている人」がいるので、単純に足しても24.1%にはなりません。
有価証券保有者の中身を見る(意識調査・2025年)
一方、日本証券業協会の「個人投資家の証券投資に関する意識調査(2025年)」は、有価証券保有者5,000人が対象です。つまり、最初から「投資している人だけ」を集めています。
その中での保有率(内訳)はこうなります。
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株式:72.8%
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投資信託:66.7%
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公社債:12.2%
この資料の72.8%を見て「投資家の大半は株を持っているんだな」と読むのは正しいですが、
「国民の7割が株を持っている」と読んでしまうと誤解になります。
平均値と中央値:家計の実感に近いのはどっち?
統計でもう一つ混乱しやすいのが「平均値」です。平均は便利ですが、高額保有者の影響を強く受けます。
結論だけ先に言うと、
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家計感覚(自分の現在地)に近いのは中央値
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市場規模(お金の総量感)を見るなら平均値
私は「焦りそうになったら中央値を見る」をルールにしています。
公表されている平均値(2025年調査)
意識調査(2025年)では、保有額の推計平均(ウエイト平均)が公表されています。
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有価証券合計:1,048.4万円
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株式:867.4万円
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投資信託:348.2万円
平均だけ見ると「みんな1,000万円も持ってるの?」となりがちですが、ここは一呼吸。平均は“上位の影響込み”です。
中央値がないときの現実的なやり方:階級データから概算する
概要版に中央値が載っていないこともあります。その場合、公開されている階級分布から、ざっくり中央値を推計できます(線形補間の考え方)。
推計の式はシンプルです。
推計中央値=階級の下限+(0.5-累積割合)÷(階級の割合)×階級幅
この考え方で、2025年調査の図表から概算すると、次の水準になります(概算)。
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有価証券合計の中央値(推計):約308万円
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300万円未満が49.5%、次の階級(300~500万円)が12.0%
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株式の中央値(推計):約238万円
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100万円未満が36.9%、次の階級(100~300万円)が19.0%
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投資信託の中央値(推計):約181万円
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100万円未満が41.1%、次の階級(100~300万円)が22.1%
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こうして見ると、平均と中央値の差がかなり大きいのが分かります。
たとえば有価証券合計は、平均1,048.4万円に対して中央値が約308万円。平均÷中央値で約3.4倍です。
統計を投資判断に使うコツ(新NISAで焦らないために)
最後に、私が“統計で迷子にならない”ために意識していることを3つだけ。
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まず分母を見る(成人全体か、投資家層か)
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現在地の確認は中央値、規模の確認は平均値
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「重複あり」の注意書きを読む(足し算しない)
新NISAは長期戦です。数字を見て焦るより、定義を押さえて落ち着いて読む。
この習慣だけで、統計との付き合い方がだいぶラクになります。
もう一段だけ整理:「保有率」と「保有額」は別の指標
統計を読むとき、私はまず「これは“人の割合”なのか、“金額”なのか」を分けます。言葉は似ていますが、見ているものがまったく違うからです。
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保有率:持っている人の割合(人数ベース)
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保有額:持っている金額(お金ベース)
たとえば「株式保有率14.1%」は、「株式を持つ人が少数派」という意味であって、「株式は資産の14.1%しかない」という意味ではありません(ここを取り違える人が意外と多い)。
逆に、平均保有額が1,000万円を超えているからといって「多くの人が1,000万円持っている」とは限りません。平均は“上位の影響込み”で、さらにこの調査の平均は、各階級の中心値(例:300~500万円なら400万円)×構成比で推計されています。数字は便利ですが、計算のクセも一緒に持っています。
よくある勘違い3つ(SNSで拡散しやすいポイント)
私が見かける「早とちり」は、だいたい次の3パターンです。
勘違い①:分母が違うのに「矛盾だ」と決めつける
14.1%と72.8%は、分母が違うだけで両立します。
同じ“保有率”でも、成人全体と保有者だけでは、数字が跳ね上がって見えるのが自然です。
勘違い②:商品別の保有率を足し算してしまう
全国調査の「株式14.1%+投信12.6%+公社債2.3%=29.0%」のような足し算は成立しません。
複数商品を持つ人がいる(重複)ためで、統計の注意書きにも「一致しない場合がある」と書かれています。
勘違い③:平均値だけ見て「自分は遅れている」と焦る
平均は“市場の規模感”には強いですが、“普通の実感”には弱い。
私は50代で家計イベント(教育費など)が重なる時期に、平均値を見て勝手に焦ったことがあります。でも中央値(もしくは中央値に近い推計値)を見ると、「思ったより現実は地に足がついている」と落ち着けました。
「母集団」と「重複」を図でイメージする
文章だけだと分かりにくいので、頭の中では次のように整理すると楽です。
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まず成人全体がいて、そのうち有価証券を持つ人が24.1%
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その“有価証券を持つ人の集団”の中で、株式を持つ人が多い(72.8%)
そして、有価証券の中身(株式・投信・公社債)は、きれいに分かれているのではなく、
「株式も投信も持つ」「投信だけ」「株式だけ」などが混在する“重なり合う集合”です。
だから、内訳の割合を見たら足し算ではなく、重なり(併有)を前提に読むのがコツです。
統計を読むときのチェックリスト(私はここだけ見ています)
最後に、私が記事や資料を見るときの“確認項目”を置いておきます。
全部やる必要はありません。最低限、上から2つだけでも効果があります。
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① 分母(成人全体/保有者のみ/金融商品保有者など)
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② 調査方法(全国調査/インターネット調査/対象年齢)
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③ 指標の種類(保有率=人数/保有額=金額)
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④ 重複の有無(複数回答か、単一回答か)
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⑤ 平均の出し方(単純平均か、推計か)
統計は「数字」よりも「定義」に価値があります。
新NISA時代は情報が多いぶん、定義を押さえた人が最後にラクをします。
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