投資

「損したくない」が失敗のもと|投資家が陥る“サンクスコストの罠”とは?

はじめに:投資判断で本当に重要なのは「いまこの瞬間」

株式投資をしていると、どうしても「過去の損得」に引きずられてしまいます。
「高値で買ってしまった…」
「この株、今売ると損するから塩漬けにしておこう…」
そんなふうに思ったこと、ありませんか?

ですが、プロの投資家や機関投資家はこうした思考を完全に排除しています。
理由は簡単。「過去の損得は、いまの意思決定には一切関係がない」からです。

この記事では、この投資判断をゆがめる心理的な罠「サンクスコスト(埋没費用)」について解説します。投資初心者こそ理解すべき内容です。

サンクスコスト(埋没費用)とは?|もう戻ってこないお金は判断材料にしない

📌 定義

サンクスコスト(Sunk Cost)とは、すでに支払っており、回収が不可能な費用のことです。たとえば映画のチケットを買って、内容がつまらなかったとしても、「せっかくお金を払ったから」と最後まで観てしまう。これもサンクスコストの罠です。

人間は「損をしたくない」と思うあまり、不合理な判断を正当化してしまうのです。

出張の航空券を紛失したらどうする?|具体的な事例で理解する

ある人が出張のため、東京から大阪への往復航空券(3万円分)を金券ショップで購入。
商談が成功すれば4万円の利益になる予定でした。

しかし空港で、航空券を紛失していたことに気づきます。商談の時間まで余裕がない…。そこで格安航空券(往復3万円)が売られていることを知ります。

ここで悩むのは、「もう3万円払ってるのに、さらに3万円?」という感情です。
ですが、冷静に考えれば:

  • 追加で3万円払って商談に行けば1万円の利益(4万円−3万円)

  • 行かなければ0円、もしくは商談破談

このとき、最初に払った3万円はもう戻りません。いま追加で3万円払う価値があるかどうかだけを考えるべきなのです。

投資でもよくある“間違った判断”の正体はこれ

💥 「損切りできない」=サンクスコストの罠

株式投資では「塩漬け株」という言葉があります。含み損を抱えたまま放置してしまう銘柄です。これも典型的なサンクスコストの罠です。

たとえば:

  • A株を1,000円で購入

  • 現在の株価は800円

  • 業績は悪化しており、今後の回復見込みは薄い

それでも「いつか戻るはず…」「売ると損が確定するから…」と手放せない。

しかし、ここで考えるべきは現在の800円で保有を続ける価値があるかです。1,000円で買った事実は、もはやどうでもいいのです。

買値にこだわると判断を誤る理由

人間の脳は「損失回避」に非常に敏感です。これをプロスペクト理論と呼びます。

  • 100円の利益を得る嬉しさより、100円の損失の悔しさの方が2倍以上強く感じる

  • だから損を確定したくない → 判断を先延ばし → 塩漬けに

投資で成功する人ほど、「自分の感情に流されない仕組み」を持っています。

サンクスコストから自由になる方法:感情を排除する「積立投資」

私が実践しているのは、インデックスファンドの毎月積立投資です。
このスタイルには、以下のメリットがあります:

  • 買うタイミングを一切考えない → 精神的に楽

  • 長期で続けることで、買値が平均化される

  • 市場が下落しても「安く仕入れられた」と考えられる

この積立スタイルを何年も続けていると、「買値がいくらだったか?」という意識自体が薄れます。
まさに“感情からの解放”です。

アクティブに考えない方が、むしろ成果が出る時代

過去の調査では、10年以上のスパンで見た場合、アクティブファンドの80%以上がインデックスに勝てていません

つまり、「必死に考えても大して成果が出ない」のであれば、「何も考えない仕組み」を作った方が合理的です。

💡コラム:お金を貸している場合でも冷静な判断を

投資以外でもサンクスコストの罠に陥るケースはあります。

あなたが知人に100万円を貸していたとしましょう。ある日、その人が「あと10万円貸してくれれば、前の100万円も返せる」と言ってきたとします。

このとき、「100万円が無駄になるくらいなら、10万円追加しようか」と思うかもしれません。
でも、それは冷静な判断ではありません。

いま貸す10万円にリスクはないのか?信用に足るのか?
それをゼロベースで判断する必要があります。過去に貸した100万円は、もう戻らない可能性を受け入れるべきなのです。

投資資産は「いざというときに迷わず使う」が正解

投資を続けていると、「今は売り時じゃない」「このまま持っていれば上がるかも」と思いがちです。

しかし、子供の学費や親の介護など、ライフイベントで現金が必要になるタイミングは突然訪れます。

そんなときは迷わず現金化すべきです。

  • 「損してるから売れない」

  • 「相場が良くなるまで待ちたい」

こう考えると、あとで必要以上のリスクを背負うことになります。
現時点での必要性が最優先。これもサンクスコストの考え方と通じるものです。

まとめ|過去にこだわると投資で失敗する

投資において最も重要なのは、「いまどうするのが合理的か?」です。
過去に買った価格や、すでに支払った費用にこだわると、冷静な判断ができなくなります。

 今日から実践できるポイント

  • 買値を判断材料にしない

  • 塩漬け株は「いま保有する意味があるか?」で見直す

  • 積立投資など、感情を排除できる仕組みをつくる

  • 急な出費時は迷わず売却。借金は避ける

投資の世界には「勝とうとしない人が最終的に勝つ」という皮肉な真実があります。
だからこそ、判断を誤らない「思考法」と「仕組み」を持つことが、長期的な資産形成の近道なのです。

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