2025年に入り、S&P500や全世界株が最高値圏を更新し、日経平均もバブル越えの水準で推移しています。これだけ株価が強ければ、投資をしている人の多くは資産が増えていますし、SNSを開けば「資産がまた最高値」といった投稿が毎日のように流れてきます。私自身も例外ではなく、11月時点の総資産は8,382万円という数字になりました。50代で役職なし、賃貸暮らしで、子どもは高校生と中学生。可処分所得が増えるような環境ではありません。それでも、長年続けてきた「長期・分散・低コスト」を積み重ねてきたことで、ここまで来たのだと思っています。
ところが、です。画面に表示された数字を見て、素直に「増えたな」と思えない自分がいました。むしろ「少ないのでは?」と感じてしまったのです。以前なら考えられない感覚でしたが、株高が続く2025年の今は、どうしても周りがすごい人ばかりに見えてしまう。私と同じように「増えているのに満足できない」「資産があるのに不安が残る」そんな違和感を抱えている方もいるかもしれません。この記事では、その“違和感の正体”を、50代サラリーマンの立場から整理し、落ち着いて考え直すきっかけになればと思っています。
株高のときは「みんな増えている」と錯覚しやすい
まず前提として、2023〜2025年の株式市場は異例なほど強い状況が続いています。特に米国株は、インデックスを積み立てていれば自然と評価額が伸びるような環境でした。SNSに投稿されるのは、多くが“資産が増えた人”の報告です。新NISA満額投資、入金力の高い人、あるいは20代から投資を続けてきた人たちの数字は、非常に華やかです。すると、不思議なことに「みんな増えているのだから、自分ももっと増えて当然」という気持ちになってしまいます。これは人間の感覚として自然なものですが、じつは大きな偏りがあります。
私自身、長く積み立ててきたとはいえ、給料が伸びるような時期でもなく、教育費の支出がピークに近い今の家計状況を考えると、そもそも「周りと同じスピードで資産が増える」わけがないのです。しかし、SNSという情報環境は、どうしても成功者の数字ばかりを集めてしまうため、自分のペースが遅いように感じてしまう。これは典型的な“バイアス”です。
そもそも「投資していない世帯」が半数を超えている
金融広報中央委員会の調査では、2023年時点で投資信託を保有している世帯は約30%、株式を保有している世帯は約25%で、両方持っていない世帯は50%以上に達します。つまり、株高の恩恵を受けているのは、日本全体から見れば半数以下なのです。私たちが普段見ている世界は、投資をしている人の意見ばかりで、一般世帯とはまったく違う景色です。投資クラスタの中にいると「みんなが増えている」ように感じますが、社会全体を平均すると、その景色は非常に限定的です。だからこそ、今の資産額を“少ない”と感じてしまう必要は、本来どこにもありません。
50代の中央値は800万円台。数字の見え方は簡単にゆがむ
次に、年齢別金融資産額を見てみます。50代・二人以上世帯の金融資産中央値は約800万円。平均でも1,587万円ほどです。数字だけ比べれば、私の8,382万円は、中央値から見れば距離があります。しかし、正直なところ、自分が特別に裕福だという実感はありません。長く積み立てを続けてきただけで、収入が高いわけでもなく、投資で大勝ちしたわけでもないからです。中央値との差をそのまま書くと、どうしても「上位」といった表現になってしまい、読んでいて不快になる方もいるかと思います。ですので、ここではあくまで「実際の数字と、自分の感覚には大きなズレがある」ということを伝えるのみに留めます。
平均値や中央値は、自分の現状を見るための“ひとつの指標”にすぎません。そして50代は、教育費・住宅費・介護リスク・医療費など、家計負担が大きい時期です。この環境下で資産が思うように増えないのは当然であり、増えているならむしろよくやれていると言えるのかもしれません。
50代は「貯まりにくい時期」。それでも積み上がった理由
私は賃貸暮らしで、子どもは高校生と中学生。家計の負担は決して軽くありません。役職なしのサラリーマンですから、収入も20代・30代のころのように伸びません。そんな状況のなかで、積み立てを続けて、評価額がここまで伸びたのは、ただただ「やめなかった」ことが大きいと感じています。投資歴20年の結論は、派手な取引よりも、淡々と積み立てを続けるほうがずっと確実だということです。株価が上がっている今は、自分の資産の伸びが物足りなく見えてしまいますが、家計環境を冷静に振り返ると、むしろ十分すぎるほど成長しています。
SNSは成功者が目に入りやすい構造。比較すると苦しくなる
SNSで見かけるのは、どうしても成功者の数字です。資産1億円、年間300万円の入金力、20代から投資を続けてきた人…。こういった投稿がタイムラインを埋め尽くすため、自分も同じ土俵に立っているかのような錯覚が生まれてしまいます。しかし、多くの人はSNSに「資産が増えていない」「積み上げられなかった」という投稿をしません。つまり、成功した一部の人だけが大量に見えてしまい、その中で比較してしまうのです。これが「資産が少なく感じる」最大の理由です。
結論:私は“十分やれている”。数字に振り回されず、これからも積み重ねる
整理してみると、「少ない」と感じていた理由はすべて錯覚でした。株高で成功者の数字ばかりが目に入ること、投資をしていない世帯が多いという現実を忘れがちになること、そして50代という“貯まりにくい”時期の家計事情。これらを踏まえれば、今の資産額に悲観する必要はまったくありません。むしろ、これまで続けてきた積み重ねを、もっと評価してもいいのだと思います。これからも、無理のないペースで長期・分散・低コストを続け、過度なリスクは取らず、焦らずに積み上げていくつもりです。
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