最近、「40〜50代の会社員が持株会や確定拠出年金、NISAで、気づいたら資産1億円(富裕層)に届いていた」という話をよく見かけます。私も50代の役職なしサラリーマンで、総資産は8,000万円台。昔は“1億円なんて別世界”と思っていましたが、いまは「届く人が増える構造」そのものが変わってきたと感じます。
ただし、ここで一度だけ整理しておきたいのが「何をもって“1億円超”と呼ぶのか」です。金融資産だけで語るのか、不動産も含めた“総資産”で語るのかで、見える景色がまったく変わります。この記事では、NRI(野村総合研究所)が言う「いつの間にか富裕層」の中身と、「不動産を含めたら億り人が増える」理由、そして50代が数字に振り回されないための考え方を、噛み砕いてまとめます。
「いつの間にか富裕層」が増えた背景
NRIは2025年2月の発表で、近年の株式相場の上昇を受けて運用資産が急増し、富裕層に“昇格”した層を「いつの間にか富裕層」と定義しています。年齢は40代後半〜50代、職業は主に一般の会社員で、従業員持株会・確定拠出年金・NISA枠の活用を通じて、運用資産が1億円を超えたケースが多いという説明です。
「自分で増やした」というより「制度で積み上がった」
この話が刺さるのは、派手な成功談というより「積み上げたら増えていた」というところ。給与から天引きで積立が続く仕組みは、良くも悪くも“意思”が弱くても継続できます。相場が上向いた時期が長いほど、本人の実感と資産額がズレやすい。これが「いつの間にか」の正体です。
もう少し現実的に言うと、準富裕層(後述しますが、純金融資産5,000万円〜1億円未満)まで来ている人は、運用比率が高いほど「相場の追い風」で境界線を超えます。たとえば金融資産7,000万円のうち、株式や投信が5,000万円入っている人がいたとして、市場が2〜3割上がれば、それだけで1,000万円以上の増加が起こり得ます。そこに積立が乗れば、いつの間にか“1億円”に手が届く。これなら、会社員でもイメージできますよね。
ただし“持株会”は諸刃の剣
一方で、持株会は会社から奨励金が出るなど魅力もありますが、自社株に偏る危険も大きいです。会社員の最大の資産は、毎月の給料という「入金力」。ここに自社株の値下がりが重なると、メンタルも家計もダメージを受けやすい。やるなら“上限を決める”“売却ルールを決める”“インデックスと併用して分散する”など、集中投資にならない工夫は必須だと私は思います。
NRIの「富裕層」は“純金融資産”で決まる
大事なのは、NRIが使う富裕層の基準が「純金融資産」であることです。純金融資産とは、預貯金・株式・債券・投資信託・保険などの金融資産の合計から、負債を差し引いた金額。ここでいう富裕層は「純金融資産1億円以上5億円未満」、超富裕層は「5億円以上」です。
NRIの推計(2023年時点)では、富裕層は153.5万世帯、超富裕層は11.8万世帯で、合計165.3万世帯。彼らが保有する純金融資産の合計は469兆円とされています。数字だけ見ると圧倒されますが、世帯数で見ると日本全体の“数%”という規模感です。つまり、統計上は「社会の大多数が1億円超」というより、「増えてきたが、まだ少数派」です。
富裕層ピラミッドの全体像(2023年の推計)
NRIの階層は、ざっくり次の5段階です(いずれも純金融資産ベース)。
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マス層:3,000万円未満
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アッパーマス層:3,000万〜5,000万円未満
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準富裕層:5,000万〜1億円未満
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富裕層:1億〜5億円未満
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超富裕層:5億円以上
2023年の推計では、マス層が約4,424.7万世帯、アッパーマス層が約576.5万世帯、準富裕層が約403.9万世帯。準富裕層だけでも“400万世帯超”いるので、ここから相場の追い風で富裕層に移る人が一定数出てくるのは、構造として自然です。
“純金融資産”に不動産は原則入らない
ここが今回の肝です。家や土地などの不動産は、一般に“実物資産”として扱われ、純金融資産の枠からは外れます。だから、投信はそこまででも、不動産の評価額が大きい人は「総資産で見たら億り人」ということが起こります。
不動産を含めると“億り人”が増える理由
では、「不動産を入れたら、世の中の多くの人が1億円を超えている可能性がある」のは本当なのか。私は“可能性は上がるが、過大評価もしやすい”と見ています。ポイントは「評価」と「現金化」と「負債差し引き」です。
理由1:相続で“家+土地”を引き継ぐ
親世代の資産が不動産中心だった場合、相続で一気に総資産が跳ねるケースがあります。現金は少なくても、家や土地の評価が大きければ「総資産1億円超」になることは珍しくありません。とくに地方でも、土地が広いケースは“見た目の総資産”が大きくなりがちです。
理由2:都市部の不動産は評価額が大きく見える
土地価格が高いエリアほど、帳簿上の評価が膨らみます。ただし、売らなければ現金化できないし、売るなら引っ越しや税金など“現実のコスト”も伴います。数字だけ見て「億り人だ」と喜びすぎるのは危険です。資産形成で大事なのは、“いざという時に使える形”かどうかです。
理由3:負債を差し引くと見え方が変わる
不動産は資産の顔をしつつ、借入があると“純資産”は下がります。金融資産と同じで、「評価額−負債」で見ないと、家計の体力は測れません。ここを曖昧にすると「実はカツカツ億り人」になりがちです。
なぜ“周りに億り人が多い”と感じるのか
ここまで読むと、「でも体感として、1億円ってもっと身近じゃない?」と思うかもしれません。私が感じる理由は3つです。
1)SNSやネット記事は“上振れ”が目に入りやすい
資産形成は、うまくいった人ほど発信します。結果として「増えた話」ばかりがタイムラインに流れ、実態より多く見えます。
2)50代は収入のピークと運用の複利が重なる
積立期間が20年を超える人も増え、相場が上向いた年は資産の増え方が一段上がります。給与の手取りが大きい時期と重なると、余裕のある人が一気に伸びます。
3)相続・退職金など“一発”で資産が跳ねる人がいる
コツコツ型だけでなく、相続やまとまったお金で一気に準富裕層〜富裕層に入る人もいます。身近な数人の事例が、全体像以上に強く印象に残るんですよね。
50代会社員が“数字に振り回されない”ための確認ポイント
私が意識しているのは、資産額のラベルより「老後を安心して暮らせるか」です。賃貸暮らしの私には、不動産という大きな実物資産がありません。だからこそ、金融資産の設計と、現金のクッションが重要になります。
1)まずは“純金融資産”を把握する
投資口座、現金、保険、年金資産などを棚卸しして、負債があれば差し引く。これが、投資の出口戦略や生活防衛費の設計に直結します。「総資産が1億あるか」より、「純金融資産で、いつでも使えるお金がどれだけあるか」を先に確認するのが現実的です。
2)不動産は“保守的”に見積もる
不動産を持つ人は、売却や賃貸の前提が崩れると一気に見積りが外れます。評価額は控えめに、維持費や税金も含めて考えるとブレにくいです。相続した土地などは特に、感情を入れず「いくらで売れるか」を冷静に見るのがコツです。
3)1億円より先に「3か月分の現金」を守る
私は生活費の3か月分以上を現金で持つようにしています。相場が荒れても投資を続けるには、現金というクッションが効きます。1億円を狙うほど、逆に“守り”が大事になります。
4)投資は「長期・分散・低コスト」に寄せる
「いつの間にか富裕層」になれた人の背景には、相場の追い風があります。ということは、逆風の局面も必ず来ます。短期で当てにいくより、低コストのインデックスをコツコツ積み上げる。レバレッジや信用取引で加速させない。結局これが、50代でも再現性が高いと私は思います。
まとめ:1億円は「現実になりやすい」でも「多い」とは限らない
NRIが言う「いつの間にか富裕層」は、制度を使って長期で積み上げ、相場環境の追い風で“気づけば1億円”に届いた会社員層の存在を示しています。一方で、NRIの富裕層は純金融資産ベースなので、不動産を含めると“億り人”は増える可能性があります。
ただ、数字の見え方は資産の種類で大きく変わり、評価や負債、現金化のしやすさまで含めないと「安心」には直結しません。1億円という言葉に踊らされず、自分の家計の“逃げ切りライン”を淡々と作る。50代の私がいま大事にしているのは、結局そこです。
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