節約・家計管理

ボーナスは多いのに年収が低い?日本の“二重構造”をシンプル解説

日本人のボーナスは多いのに、なぜ平均年収は低いのか?“二重構造”をわかりやすく解説

「ニュースでは『夏のボーナス過去最高!』と騒いでいるのに、自分の年収は全然増えた気がしない……。日本の平均年収も世界と比べると低いと言われるし、これって矛盾してない?」

そんなモヤモヤを感じている人は多いと思います。

実はこれ、数字が間違っているわけではなく、見ている対象(母集団)がまったく違うから起きている現象です。この記事では、

  • 日本人の平均年収とボーナスの「本当の数字」

  • 「ボーナスは多いのに年収は低い」が同時に起こる理由

  • ボーナス頼みの働き方が危ないと言えるワケ

  • 個人としてどう備えるべきか

を、できるだけやさしく解説していきます。

日本人の平均年収とボーナス、数字をざっくり整理しよう

まずは「感覚」ではなく「数字」で日本の年収とボーナスを確認しておきます。

平均年収は約460万円

国税庁の「民間給与実態統計調査(令和5年分)」によると、1年を通じて勤務した人の平均年収は460万円です。男女別で見ると、

  • 男性:569万円

  • 女性:316万円

と、かなり差があります。国税庁

この「460万円」という数字は、給料+ボーナスを合計したものです。つまり、ここに後から別枠でボーナスが足されるわけではありません。

ボーナスは年収のうち約70万円前後

同じ統計や銀行などのまとめをもとにすると、平均年収460万円の内訳はおおよそ、

  • 給料・手当:388万円

  • 賞与(ボーナス):71万円前後

というイメージになります。MUFG銀行

つまり、日本人全体で見ると、ボーナスは年収のうち約15%前後を占めている計算です。

「大企業ボーナス」のニュースは別世界

一方でニュースになるのは、

  • 「大企業の夏ボーナス平均99万円」

  • 「平均5%超の賃上げ、ボーナスも過去最高水準」

といった派手な見出しばかりです。2025年の連合や経団連の集計でも、大企業の夏季ボーナス平均は約99万円、前年比4%超の増加というデータが出ています。

ここで大事なのは、

ニュースで出てくる「ボーナス平均」は、
大企業+正社員+ボーナスを出している会社の話

だということです。

一方で、さきほどの平均年収460万円は、

  • 中小企業

  • 非正規雇用(パート・アルバイト・契約社員・派遣)

  • ボーナスがほとんどない人

  • 年の途中で転職・退職した人

などを全部ひっくるめた数字です。

つまり、全体の平均と「一部の恵まれた層」の平均を見比べて、「矛盾しているように見える」だけなんです。

なぜ「ボーナス多いのに平均年収が低い」が同時に起こるのか

ここからは、もう少し構造的に見ていきます。

ポイントは次の3つです。

  1. 非正規・パートが多く、ここが平均年収を押し下げている

  2. ボーナスを厚くして、基本給を抑える賃金構造になっている

  3. 賃金が長年ほとんど増えず、円安で世界と比べて見劣りする

順番に見ていきましょう。

① 非正規・パートが多い国だから

日本は、非正規雇用がとても多い国です。

厚生労働省の資料によると、役員を除く雇用者のうち非正規雇用の割合は約36.8%。およそ3人に1人以上が非正規という計算です。

さらに、民間の調査では、

  • 男性の約2割強が非正規

  • 女性では約半数が非正規

というデータもあります。

非正規の場合、

  • 時給・日給が低め

  • ボーナスが出ない、またはごく少額

  • 昇給も限定的

というケースが多く、この層が平均年収を大きく押し下げているのが現実です。

一方、ニュースで取り上げられる「ボーナス平均」は、

  • 正社員

  • フルタイム

  • ボーナスあり企業(しかも大企業中心)

がメイン。そもそも土俵が違う数字と考えた方が自然です。

② 日本は「ボーナス厚め・基本給は抑えめ」の賃金文化

日本企業の多くは、

  • 基本給はあまり上げず

  • 業績が良いときにボーナスで調整する

という賃金の設計をしてきました。

その結果、

  • 「ボーナスが2〜3ヶ月分出た!」という年はインパクトが大きい

  • しかし、月々の給料自体はあまり増えていない

  • 不景気になると真っ先にカットされるのはボーナス

という構造になっています。

国税庁の統計で見ても、平均年収460万円のうちボーナスは70万円前後で、比率としてはかなり大きいです。

会社側からすると、

「基本給を上げると下げにくい。
だからボーナスで調整したい」

という思惑があります。
しかし、働く側からすると、

  • 将来の年金や退職金、昇給テーブルにつながるのは基本給

  • ボーナスはあくまで「おまけ」であり、毎年保証されたものではない

というギャップが生まれてしまいます。

③ 30年ほぼ賃金が伸びず、円安で世界と比べて一気に見劣り

OECDなどの統計で各国の賃金を比べると、日本の平均年収は主要国の中では下位グループに沈んでいます。

理由はシンプルで、

  • 1990年代以降、日本の賃金はほぼ横ばい

  • 一方で、アメリカやヨーロッパはインフレとともに名目賃金が伸び続けた

  • 近年の円安で、日本円に換算したときの差がさらに開いた

という流れがあるからです。

最近は、春闘で「5%賃上げ」などのニュースも増えてきましたが、
それでも30年近い賃金の停滞を一気に取り戻すには、不十分な水準です。

「ボーナスが多い=豊か」とは限らない理由

ここまでを見ると、

「大企業のボーナスはそこそこ多いし、日本もまだまだ悪くないのでは?」

と思いたくなるかもしれません。

しかし、個人の家計目線で見ると、ボーナス頼みの生活にはかなりのリスクがあります。

ボーナス前提の支出は家計を不安定にする

日本では昔から、

  • 住宅ローンのボーナス払い

  • 車の購入費をボーナスで一括

  • 旅行や高額家電は「ボーナスでご褒美」

という文化が根強くあります。

景気が良いときはこれでも回りますが、
一度景気が冷え込んでボーナスが減ると、

  • ローンの返済がきつくなる

  • ボーナスで払う予定だった出費がまかなえない

  • カードのリボ払いや分割払いが増える

といった形で、家計のストレスが一気に高まります

特に、リーマンショックやコロナ禍のような不況局面では、

「ボーナスゼロ」「大幅カット」

が普通に起こり得ます。
そのとき、ボーナス前提の生活をしていた世帯ほどダメージが大きいのは想像に難くありません。

豊かさは「ボーナス額」より「手取りの安定+資産」で決まる

本当に大事なのは、

  • 毎月の手取り収入がどれくらい安定しているか

  • 支出をコントロールして、どれくらい余剰を資産に回せているか

  • その資産が、将来の不安(老後・病気・失業など)をどれだけ和らげてくれるか

という視点です。

いくらボーナスが多くても、

  • 月々の手取りが少ない

  • 生活レベルがボーナス頼み

  • 貯蓄や投資がほとんど増えていない

のであれば、「見かけ上の年収は高いけれど、実態は不安定」という状態になってしまいます。

私たちができる「年収の見方」とこれからの対策

最後に、ボーナスと年収の二重構造をふまえたうえで、
私たちができる実践的なポイントをまとめます。

1. 「年収」よりも「月の手取り」と「貯蓄率」を重視する

転職サイトや会社の採用情報を見るとき、どうしても「年収◯◯万円」に目が行きます。

しかし、

  • ボーナス比率が高い会社

  • 基本給は低く、業績によって上下が激しい会社

も少なくありません。

そこでおすすめなのは、

  • 月々の額面給与(基本給+各種手当)

  • 社会保険料・税金を引いた月の手取り

  • 手取りのうち、何%を貯蓄・投資に回せているか(貯蓄率)

に注目することです。

ボーナスは「入ったらラッキー」くらいに考え、
生活設計は月給ベースで組み立てるのが安全です。

2. ボーナスは「固定費」ではなく「将来の安心」に回す

ボーナスについては、

  • 住宅ローンや車のローンなど、固定費の前提にしない

  • できるだけ一時的な出費(旅行・家電など)か、将来への投資に回す

  • できれば半分以上は貯蓄・投資に回すつもりで使い道を決める

といった意識づけが大切です。

たとえば、

  • ボーナスの50%を老後資金用のインデックス投資

  • 30%を生活防衛資金(現金預金)

  • 20%を自分や家族の「ご褒美消費」

のように、あらかじめ配分ルールを決めておけば、
使いすぎを防ぎながら、長期的な資産形成も進みます。

3. 「平均年収」に振り回されず、自分の軸で比べる

ニュースやSNSで、

  • 「日本の平均年収は世界から見て低い」

  • 「同年代の平均年収は◯◯万円」

といった情報を目にすると、どうしても落ち込んだり、焦ったりしがちです。

ただし、その平均には、

  • 非正規・パート・短時間勤務

  • 高所得の一部の層

  • 住んでいる地域や業界の違い

など、さまざまな条件の人たちがごちゃ混ぜになっています。

大事なのは、

  • 自分と近い条件の人と比較する(年齢・業界・地域など)

  • それを踏まえて、今の会社でどこまで伸びそうか

  • 必要なら、転職・副業・スキルアップで中長期的に年収レンジを上げられないか

を冷静に考えることです。

4. 「労働収入+資産収入」で長期戦略を立てる

賃金が伸び悩んでいる日本では、

  • 給料だけで何とかしようとするより

  • 投資や副業をくみ合わせて「総合点」を上げていく」

という発想がますます重要になっています。

具体的には、

  • 生活防衛資金(生活費半年〜1年分)を現金で確保

  • それ以上の余剰資金を、新NISAなどでインデックス投資に回す

  • 本業のスキルを生かした副業・フリーランス的な仕事にもアンテナを張る

といった組み合わせです。

ボーナスが出た年は、
将来の自分を少しラクにするための「加速ボタン」として使っていくイメージを持つと、
モヤモヤよりも前向きな感覚が強くなってきます。

まとめ:二重構造を知れば、「矛盾」はスッキリする

最後に、この記事のポイントを整理します。

  • 日本人の平均年収は460万円前後で、そのうちボーナスは約70万円

  • ニュースで流れる「ボーナス平均」は、大企業の正社員など一部の層の数字で、土俵が違う

  • 一方、平均年収の統計は、非正規・パート・ボーナスほぼゼロの人も全部込みなので、どうしても低く見える

  • 日本は非正規比率が高く、ボーナス厚め・基本給抑えめの賃金構造になっており、ここが平均年収の伸び悩みにつながっている

  • ボーナス頼みの生活は家計を不安定にするので、月々の手取り+貯蓄率を重視し、ボーナスは将来の安心に回すのが安全

「ボーナスは多いのに、なぜ平均年収は低いのか?」

この疑問は、
誰を対象にした数字なのかを意識すればスッキリ整理できます。

そして、私たち一人ひとりにできることは、

  • ニュースの数字に一喜一憂しすぎず

  • 自分の手取り・支出・貯蓄率を見える化し

  • 労働収入+資産収入の両方で、じわじわと将来の不安を減らしていくこと

です。

ボーナスの金額に振り回されるのではなく、
「お金との付き合い方」全体を少しずつアップデートしていく
その積み重ねが、長い目で見ればいちばん確実な“防衛策”になるはずです。

にほんブログ村 株ブログ サラリーマン投資家へにほんブログ村に参加してます。クリックして頂くと有り難いです。

50代からの新NISA戦略|つみたて減額と家計調整のリアルな実践記録はじめに 2024年から始まった新NISAは、投資をする人にとって非常に魅力的な制度です。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が一体化し...
資産7,000万円台でも老後は安心?50代サラリーマンの現実「資産が7,000万円あれば老後は安心だろう」と思う方は少なくないでしょう。野村総合研究所の定義によれば、総資産5,000万円以上1億円...