ここ数年、株価の上昇を背景に、X(旧Twitter)やYouTubeなどのSNS上では「1億円達成!」「FIREしました!」といった投稿が目立っています。
たとえば、
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20代からの積立投資でFIRE達成
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少額から始めたインデックス投資で資産1億円突破
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配当金生活で会社を辞めた話
など、華々しい体験談が日々発信され、多くの人に共有されています。
確かに、こうした投稿には夢がありますし、努力の結果であることは間違いありません。
しかし、それが誰にでも起こる“普通の話”なのかというと、決してそうではないと私は考えています。
この記事では、投資歴17年の視点から、SNSに溢れる成功体験とどう向き合うべきか、そして1億円の資産形成がいかに現実的に難しいか、自分のペースで投資を続けることの大切さについてお話しします。
SNSにあふれる「再現性のない成功談」
SNSの世界では、日々さまざまな投資系アカウントが資産状況やポートフォリオを公開しています。
その中でも特に注目を集めるのは、以下のような投稿です。
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「元手100万円→10年で1億円」
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「今月の配当金は20万円です」
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「資産額は公開していませんが、FIREしました」
これらの投稿は、どれもインパクトがありますし、バズりやすい要素を持っています。
しかし、注意すべきなのは、それが“ごく一部の例外”であり、再現性が低いケースがほとんどであるという点です。
SNSは成功体験が拡散されやすい構造になっており、途中で投資をやめた人や損を出している人の声はあまり表に出てきません。
また、副業や事業所得がベースにあるにもかかわらず「投資だけでFIREした」と見えるような発信もあり、情報の受け取り方には注意が必要です。
「資産が増えれば加速する」は本当か?
SNSではよく「資産が1,000万円を超えると、複利の力で一気に資産が増える」といった表現が使われます。
これは一見、正しそうに見えますが、実際にはもっと重要な前提があります。
それは「相場が好調であること」です。
たとえば、2020年〜2021年の米国株式のように強い上昇トレンドに乗れた場合は、資産が一気に増えることがあります。
しかし、2022年〜2024年のように横ばいまたは下落基調の相場が続いている期間では、いくら積み立てても評価額は増えないどころか、減ることさえあります。
私自身も、毎月積立をしながら投資を続けていますが、資産が大きくなった今でも相場の影響で数百万円単位の増減があるのが現実です。
つまり、「ある程度資産が貯まれば勝手に加速する」というわけではありません。
私の実感としては、“相場が良くなる前に、どれだけ資産を積み上げておけたか”が、その後の伸び方を大きく左右するということです。
資産が加速的に増える局面というのは、あくまで“結果”にすぎません。
その裏には、相場が停滞していた時期や下落していた時期に、コツコツと積み上げ続けていたかどうかという“見えない努力”があります。
つまり、資産形成の本当の勝負所は「増えない時期をどれだけ我慢して積み上げられるか」なのです。
投資歴17年でも1億円に届かないリアル
私は約17年前から、主にインデックスファンドを中心に投資を続けてきました。
リーマンショック、東日本大震災、コロナショックなど、大小さまざまな下落相場を経験しながら、地道に積み立てを続けてきました。
その結果、ある程度の資産は築くことができましたが、いまだに1億円には届いていません。
この17年間には、以下のようなことがありました:
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子どもの進学や親の介護によって入金力が下がる
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住宅購入はせず賃貸生活を続けながら、現金比率は常に10%未満に
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平社員としての収入には限界があり、副業もしていない
特別なスキルがあるわけでもなく、高収入でもない普通の会社員にとって、1億円の資産形成は本当に険しい道のりです。
長期投資は安全ではない。むしろリスクは拡大する
「長期投資はリスクが小さくなる」といった表現を見かけることがありますが、これは誤解を生みやすい表現です。
確かに、長期的には株式市場全体が上昇してきたという事実はあります。
しかし、投資期間が長くなるほど、リスク資産に資金を晒している時間が延びるため、絶対的なリスク(ブレ幅・損失幅)はむしろ拡大します。
これは、金融工学的にも「時間とともに分散の標準偏差は√Tで増える」という考え方に基づいており、長く持てば持つほど“リターンもブレ幅も大きくなる”のが本来の理解です。
つまり、長期保有は“安全”なのではなく、より大きなリスクに耐える覚悟が求められる戦略なのです。
SNSに振り回されず、自分のペースを守ることが何より大切
SNSで「資産1億円達成!」「配当生活!」といった投稿を見ると、つい自分と比べてしまうこともあるかもしれません。
しかし、投資は他人との競争ではありません。
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自分に合った投資スタイル
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無理のない入金額
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長く続けるための生活設計
こうしたことを守ることの方が、SNSでバズっている情報よりも、何倍も大事な投資スキルです。
他人の成果はあくまでその人の人生の結果であり、真似をしてもうまくいくとは限りません。
投資は、自分の未来を守るための“長距離走”。他人と比較する必要はないのです。
まとめ|1億円を目指さなくても、着実な資産形成こそ本当の価値
SNSで見かけるような「1億円達成」や「FIRE」は、確かに魅力的です。
ですが、それが当たり前のように語られる風潮には、注意が必要です。
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相場が悪ければ、資産は思ったように伸びない
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人生には投資以外にもお金が必要なイベントが多い
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長期投資=安全ではない。むしろリスクは拡大する
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他人と比較すると、無理なリスクや焦りを生む
資産が1億円に届かなくても、家族と安心して暮らせる資産が築けたなら、それは大きな成功です。
これからも、自分のペースを大切にしながら、地道に資産形成を続けていきましょう。
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