雑記

平均1,900万円に騙されるな|50代家計の現実

日銀の資金循環統計は、家計全体のお金の流れや残高を“国全体の俯瞰図”として見せてくれる便利な統計です。ただ、私みたいな50代の平社員が本当に知りたいのは「じゃあ、うちの家計は大丈夫なのか?」という答えだったりします。

わが家は賃貸暮らしで、妻はパート勤務。子どもは高校3年と中学2年。教育費がいちばん重い時期で、資産が増えても安心できない。ここが、マクロ統計だけだと埋まらない“体感のズレ”です。

そこで次に読むべきなのが、世帯の実態に寄ったミクロ統計。今回は、(1)J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」と、(2)総務省「家計調査(貯蓄・負債編)」の2本立てで、50代がモヤモヤしやすいポイントを整理します。

J-FLEC世論調査(2025年)で分かる“体感”の正体

J-FLECは2025年12月18日に「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」を公表しました。調査時期は2025年6月20日〜7月2日で、二人以上世帯は5,000世帯が対象です。

「金融資産」の定義が、意外と現実的

まず大事なのが、“金融資産”の定義。預貯金は、普通預金に入っているお金でも「日常的な出し入れ・引落しに備えている部分」は含めず、「運用のため、将来に備えて蓄えている部分」を計上します。
つまり、生活防衛のための手元資金は、最初から除外されやすい。ここを知らずに平均額だけ見ると「みんなそんなに持ってるの?」とズレが生まれます。

たとえば私の感覚だと、家計口座には「今月〜来月に消えるお金(家賃、光熱費、学費など)」が必ず入っています。でも、それは“運用資産”ではない。統計の見方が分かるだけで、SNSで流れてくる「平均〇〇万円」という言葉に、無駄に心を揺らされにくくなります。

平均だけだと“強い世帯”に引っ張られる

ポイント資料では、金融資産の保有額(平均)が、二人以上世帯で1,940万円、単身世帯で919万円と示されています。
ただ、平均は一部の高額保有層の影響を受けやすい。私がブログでよく書く「中央値も見るべき」は、ここで効いてきます(中央値は“真ん中”なので、現実感に近い)。

今回のポイント資料だけだと中央値の数値までは追いにくいのですが、だからこそ読者にはこう伝えたい。
・平均は“ニュース向き”
・中央値は“生活向き”
この2つをセットで見るだけで、不安の質が変わります。

「増えた理由」が評価益中心だと、不安が残るのは当然

資産が増えているのに不安が消えない人は多いと思います。私もそうです。その“理由の中身”を、J-FLECのポイント資料はちゃんと触れています。

金融資産残高の増加理由として上位に挙がっているのは、「株式・債券評価額の増加」「配当や金利収入」「定例的な収入の増加」です。
ここで注目したいのは、最初の「評価額の増加」。これは、市場が良かったから増えた、という意味でもあります。つまり、逆回転もあり得る。

50代は“取り返す時間”が短いぶん、評価益で増えた局面ほど「次に落ちても生活が崩れない形」へ整えるのが大事。私の場合は、(1)生活防衛資金を厚めに確保、(2)積立はムリのない額で継続、(3)一発逆転商品に手を出さない——この3点をルールにしています。

50代が引っかかるのは「元本割れ」と「老後不安」

2025年のポイント資料では、「元本割れの可能性があるが収益性が高いと見込まれる金融商品」を“積極的または一部保有しようと思っている”比率が、二人以上世帯で53.9%、単身世帯で40.9%とされています。
この数字、地味に重いです。新NISAで投資を始める人が増えた一方で、「値動きのある商品を持つのが普通」になりつつある。だからこそ、50代は“増やす”より先に“折れない設計”が必要だと私は思います。

また、ポイント資料には「老後の生活への心配」の設問もあり、全体として大きな変化はないと整理されています。
変化がない、というのは裏返すと「ずっと不安が続いている」ということ。資産が増えても不安が消えないのは、あなたのメンタルが弱いからではなく、統計的にも自然な反応だと受け止めていいと思います。

総務省「家計調査(貯蓄・負債編)」が教えてくれる現実

次は総務省の家計調査(貯蓄・負債編)。こちらの強みは、貯蓄と負債を“セット”で見られることです。資産形成の話は、つい貯蓄額だけで勝負しがちですが、実態は「貯蓄−負債=純資産」のほうが家計の耐久力を表します。

2024年平均:貯蓄は増えたが、平均との差は大きい

直近の年次データ(2024年平均)では、二人以上世帯の1世帯当たり貯蓄現在高(平均値)は1,984万円で、貯蓄保有世帯の中央値は1,189万円です。
さらに資料では、貯蓄現在高が平均値(1,984万円)を下回る世帯が67.0%で「約3分の2を占める」とされています。
平均は“普通の基準”ではなく、あくまで“上を含めた結果”だと、ここでハッキリします。

加えて、勤労者世帯(会社員など)の貯蓄現在高(平均値)は1,579万円、貯蓄保有世帯の中央値は947万円と、全体よりも小さくなります。
私たち読者層(現役で働く世帯)は、ここに近い人が多いはず。だからこそ、家計を見直すときは「二人以上世帯の平均」だけではなく、「勤労者世帯の水準」も横目に置いたほうが現実的です。

負債もセットで見ると、安心の条件が見えてくる

一方で負債も無視できません。年次の要約資料では、二人以上の世帯の負債現在高(平均値)は663万円、負債保有世帯の中央値は1,480万円とされています。
ここから分かるのは、「貯蓄がある=安心」ではなく、「負債の形と、返済計画次第で安心度は変わる」ということです。

私は住宅ローンがない賃貸ですが、それでも教育費や車、家電の買い替えなどで“負債化しやすい支出”はあります。読者の家計でも、同じことが起きます。「毎月の返済が増えたら積立を止めるしかない」という状態になっていないか。ここを点検するだけで、長期投資の継続率は上がります。

四半期データも出ているが、使いどころは“傾向確認”

貯蓄・負債編は、2025年4〜6月期(第2四半期平均)も2025年10月24日に公表されています。
ただし四半期は、世帯の入れ替わりや季節要因も混ざるので、私は「年次で土台を確認→四半期で傾向をチェック」くらいの使い方がちょうどいいと感じています。

50代の不安を“数値に落とす”3つのチェック

ここからは、統計を読んで終わりにしないための、50代向けチェックリストです。私自身が意識している「逃げ切り戦略」寄りの考え方でまとめます。

1)平均に振り回されず、家計の“中央値”を作る

統計の中央値が大事なのは分かっていても、結局は「自分の家計の中央値(ぶれない基準)」がないと迷います。
・生活防衛資金(3か月分)
・教育費のピーク用バッファ
・老後用の長期資産(新NISA中心)
この3つを“口座や目的”で分けるだけで、相場の上下にメンタルが持っていかれにくくなります。

2)「負債」を悪者にしない。固定費化する前に止める

家計調査が示す通り、負債は多くの世帯にとって現実です。
問題は、負債そのものより「返済が固定費として家計を圧迫し、投資の継続を止める」こと。クレカ分割やリボのように、気づいたら毎月の自由度が削られるタイプは、50代では特に危険です(回復期間が短いので)。

3)新NISAは“増やす道具”であり、“守る仕組み”でもある

私は投資方針を「長期・分散・低コスト」に寄せています。積立額は家計都合で変わってもいい。大事なのは、続けられる設計にすること。
J-FLECの調査でも、値動き商品を保有する意向が一定割合あります。
だからこそ、50代は「攻めすぎない」ことが最大のリスク管理。私なら、コアはインデックス、サテライトは少額で。レバレッジ商品には近づかない。これで十分“逃げ切り”は狙えます。

まとめ:統計は不安を増やす道具ではなく、安心を作る地図

資金循環のようなマクロ統計は、世の中の流れを知るには最適。でも家計の不安を解くには、J-FLECや家計調査のようなミクロ統計が効きます。
・J-FLECで「平均と体感のズレ」「増えた理由の中身」「値動き商品との距離感」をつかむ
・家計調査で「中央値」「平均との差」「貯蓄と負債をセットで見る」習慣を作る

資産が増えても不安が残るのは、自然です。大事なのは、不安を“正体のある数字”に落として、やることを絞ること。私はこれを、50代の現実的な最適解だと思っています。

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