投資

年収×年齢÷10=蓄財優等生?日本とアメリカで本当に通用するのか徹底検証

はじめに

投資や家計管理の本やネット記事で時折見かけるのが、
「年収×年齢÷10」くらいの資産を持っていれば蓄財優等生
という言葉です。

一見すると分かりやすい基準ですが、これは本当に妥当なのでしょうか?
この記事では、この考え方の出どころ、実際の日本の年収・資産データとの比較、さらにアメリカと日本の違いまで踏み込んで検証します。

この基準のルーツ:「となりの億万長者」

もともとの出典は、アメリカのベストセラー書籍『となりの億万長者(The Millionaire Next Door)』です。
著者トマス・スタンリーらは、富裕層の調査を通じて次のような式を紹介しました。

  • 推定資産額 = 年収 × 年齢 ÷ 10

  • 実際の資産がこれ以上なら「優秀な蓄財家(PAW)」

  • 下回れば「蓄財劣等生(UAW)」

つまり、年収と年齢から見て「これくらいは持っていて当然」という期待値を示す基準です。
アメリカの高い年収水準や退職口座制度を前提にしているため、日本でそのまま当てはめると違和感が出る可能性があります。

日本で当てはめてみると?

国税庁の「民間給与実態統計調査(2023年分)」によれば、日本の年収は:

  • 平均:約458万円

  • 中央値:約370万円前後

総務省「家計調査報告(2024年)」によると、金融資産の中央値は:

  • 30代:約300万円

  • 40代:約650万円

  • 50代:約1,100万円

  • 60代:約1,600万円

たとえば「40歳・年収500万円」の人を例に計算すると、
500万 × 40 ÷ 10=2,000万円 が期待資産額。

しかし、実際の40代中央値は 650万円 にすぎず、大きく乖離しています。
つまり、日本人の大多数はこの「÷10基準」を満たしていないのです。

アメリカの場合はどうか?

アメリカの労働統計局によれば、2023年の世帯年収中央値は約 80,610ドル(約1,200万円)
FRBの調査では、45〜54歳世帯の純資産中央値は 約246,700ドル(約3,700万円) です。

この年齢層での期待資産は:
80,610ドル × 45 ÷ 10 ≈ 362,745ドル(約5,500万円)

中央値はこれを下回っていますが、日本と比べると“目安との差”は小さく、達成している層も一定数存在します。

日本とアメリカの違い

  • 収入水準の差:アメリカの世帯年収は日本の約2倍。

  • 投資文化の違い:アメリカでは株式保有率が約6割、日本は2割強。

  • 制度面:401kやIRAといった退職口座が普及しており、資産形成が仕組み化されている。

  • 生活費構造:日本は教育費や住宅ローン負担が重く、可処分所得が少ない。

結果的に、日本で「÷10」をクリアできる人はごく少数ですが、アメリカでは一定の現実味があります。

この基準、日本では厳しすぎる?

結論を言えば、日本では÷10基準は現実的ではないです。
ただし、この基準が全く役に立たないわけではありません。
以下の観点では参考になります。

  1. 年収に応じた資産形成を意識する指標になる
    高収入でも資産が少なければ浪費型。逆に中所得でも堅実に積み立てていれば評価できる。

  2. 年齢とともに資産の積み上がりを確認できる
    30代で届かなくても、40代以降でどこまで近づけるかを見られる。

  3. 老後資金の備えを早めに考えるきっかけになる
    50代以降で大きく下回るなら、生活費や老後資金に対して危険信号。

日本流に調整するなら

日本では 「÷15〜20」程度 に緩めるのが現実的です。

例:年収500万円・40歳の場合

  • ÷15 → 約1,333万円

  • ÷20 → 約1,000万円

これは総務省データに近く、多くの家庭にとって達成可能な水準といえます。

シミュレーション:世代別に「÷10基準」と実際の資産を比べる

具体的に、日本とアメリカの世代別で比較してみましょう。

日本のケース

  • 30歳・年収400万円 → 期待資産 = 1,200万円 → 実際中央値は約300万円。大きく未達。

  • 40歳・年収500万円 → 期待資産 = 2,000万円 → 実際中央値は約650万円。依然として乖離大。

  • 50歳・年収600万円 → 期待資産 = 3,000万円 → 実際中央値は約1,100万円。半分以下。

  • 60歳・年収500万円 → 期待資産 = 3,000万円 → 実際中央値は約1,600万円。差は縮まるが未達。

アメリカのケース

  • 30歳・年収65,000ドル → 期待資産 = 195,000ドル → 実際中央値は約50,000〜70,000ドル程度。未達だが差は日本より小さい。

  • 45歳・年収80,000ドル → 期待資産 = 360,000ドル → 実際中央値は246,700ドル。約7割に迫る。

  • 55歳・年収90,000ドル → 期待資産 = 495,000ドル → 実際中央値は364,000ドル程度。差はあるが、到達者も一定数。

早見表で確認する「÷10基準」達成度

年齢 日本:年収×年齢÷10 日本:中央値 アメリカ:年収×年齢÷10 アメリカ:中央値
30歳 約1,200万円 約300万円 約195,000ドル 約60,000ドル
40歳 約2,000万円 約650万円 約320,000ドル 約200,000ドル
50歳 約3,000万円 約1,100万円 約450,000ドル 約360,000ドル
60歳 約3,000万円 約1,600万円 約500,000ドル 約500,000ドル

※ドル円換算は概算(1ドル=150円)。

→ この表からも、日本はほぼ全世代で未達ですが、アメリカは50代・60代で目安に近づく世帯が多いと分かります。

ケーススタディ:二人の40代を比較

  • Aさん(日本):40歳、年収500万円、貯蓄700万円。期待資産2,000万円に対して未達。教育費と住宅ローンで可処分所得が圧迫され、積立が進まない。

  • Bさん(アメリカ):40歳、世帯年収80,000ドル、退職口座に積立済み20万ドル+株式5万ドル。期待資産360,000ドルに対して25万ドル。未達ではあるが、制度的に毎月自動積立され、50代で追いつく可能性大。

→ この差は「文化」と「制度」の違いによるものが大きいです。

実践で大切なこと

数字遊びよりも重要なのは、日々の家計管理と投資習慣です。

  • 毎月の黒字を確保すること(支出>収入では蓄財できない)

  • 新NISA・iDeCoなどで自動積立を続けること

  • ライフプランに合わせた資産配分を考えること

こうした積み重ねこそが、真の「蓄財優等生」につながります。

まとめ

  • 「年収×年齢÷10=蓄財優等生」はアメリカ発の基準。

  • 日本の年収・資産データに当てはめると大多数が未達。

  • アメリカでは年収水準や投資文化の違いから、達成層が一定数存在。

  • 日本で参考にするなら「÷15〜20」に緩和した方が妥当。

  • 数字に一喜一憂するのではなく、積立投資・支出管理・ライフプランに基づいた安定した資産形成を意識することが最も重要。

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